第8話 その八 惑星のさみだれ  水上悟志 少年画報社

 いい加減にもうちょっとメジャーな作品を紹介しろと言われそうですが、メジャーな作品に私の好きな作品が少ないのでしょうがないのです。

 ちはやふるなんかも好きなのですが、まだ完結していないので。まだまだ蔵書の種類は多いので、しばらくはやや古い作品が主になるでしょう。

 さて、今回の作品『惑星のさみだれ』読み方は『ほしのさみだれ』です。


 ある朝目覚めたら、青年の目の前には喋るトカゲがいた。どこかクールで影のある、ただし美形ではないメガネ主人公は、地球を破壊せんとする悪の魔法使いと、その使い魔である12体の泥人形を相手に、他の11人の獣の騎士と共に、姫を守り戦うこととなる。


 まず第一話の冒頭、なんでトカゲ? となる。

 普通こういうのは、愛くるしい猫だとか妖精だとか、正体不明の生物が王道のはずなのだが…。

 そしてこの異常事態に対して、青年「雨宮夕日」は、斜め下の方向に対応するのである。

 一話でいきなり姫登場! そして守られるはずの姫様、トカゲの騎士よりはるかに強い。

 なんだこれは、なんなんだこれは、と序盤の展開は読者の頭を混乱させるだろう。


 そして姫「朝比奈さみだれ」の目的。これも斜め上というか、虚数方向に向かっている。

 無気力系主人公に、破壊魔王系ヒロインという二人の出会いから、物語は始まるのである。


 とにかくこの作品、ツッコミが多い。

 粗が多いのではなく、突っ込みどころが多いのだ。

 犬の騎士や馬の騎士といった王道な動物もいるのだが、どうせなら狼とか虎とか、そういう強い存在にならなかったのだろうか。個人的にはカジキマグロの騎士が一番笑ったが。しかもカジキマグロの騎士、最強である。


 色物か? ととらえる人は多いだろう。確かに色物と言われては否定出来ない。特に序盤はそうである。

 しかし徐々に明らかになる敵の秘密。そして主人公の過去。唯一願いを叶えるという騎士の代償。

 マップスが序盤から無茶な展開になるのに比べて、こちらは序盤の違和感を、どんどんと高めていくという形で物語りは展開します。

 やがてそれはSF的な側面の説明を加えられ、仲間たちもそろい、魔法使いの泥人形との戦いは熾烈を極めるものとなります。


 そして最後の泥人形との戦い。ここからはクライマックスの連続。

 ラスボスのその先へ。さらにその先へ。そして最後に残るのは……秘密です。

 全10巻という中にこれだけ話を詰め込んで、無駄な部分を削って面白さでまとめているあたり、昨今の長寿作品に見習ってもらいたい。

 まあこの人の作品、戦国妖弧の方はそれなりに長いんですけど。


 一応ヤングキングOURSに連載されていたので、これは青年マンガとなります。

 そして青年マンガで一番面白かったのは、この作品なのです。

 青年マンガとしての色があまりないので、首を傾げる人も多いかもしれませんが、これが私にとっての最高峰作品であることには変わりありません。

 地球を破壊する悪の魔法使いと、選ばれた姫に仕える12人の獣の騎士。これだけで燃える中二展開ではありませんか。


 もちろん展開は斜め上や斜め下を繰り返し、最後には王道を行くのですが。

 パラレルワールドの話とかも少し加わって、大変微妙な感じに面白い作品に出来上がっております。

 全10巻。とても手に取りやすい巻数です。本当にもう、最近の50巻とか60巻とか出してる作品には見習ってほしい……。

 あ、ちはやふるとベイビーステップとベルセルクは除いてください。超人ロックは殿堂入りなのでこれも除外です。パタリロももはや様式美なので除外でいいかと。

 とか言ってたらベイビーステップ完結しちゃったけどね!


 惑星のさみだれ、狂った少女と狂わされた青年の物語。ぜひお読みください。

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