第3話 その三 マップス  長谷川裕一

 え? 知らないよ? とか言わないでくださいね。まあ最近の若い者は知らないのが普通なんでしょうが。

 作者は長谷川裕一さんです。クロスボーンガンダムの作者と言えば、分かる人も多いと思いますが。

 クロスボーンも名作でしたね。ニュータイプという存在が「単に宇宙に適応した人間」という捉え方や、最後の決戦に向けての主人公トビアの言葉など……。

 まあ続編が続きすぎてせっかくの名作が蛇足になったとは……処女作の世界設定を使いまわし続けている私にはあまり言えませんが。


 さてこのマップス。私の中での位置づけはどうかというと「少年漫画の最高傑作」になります。

 ドラゴンボール、スラムダンク、うしおととら、名作は数あれど、伏線の張り方、回収、意外性、などから私はこの作品を挙げることになるのですよ。

 ジャンルはスペオペで、第一話でいきなり地球が真っ二つになる。第一巻でいきなり惑星規模の敵が出てくるなど、スケールのでかさはとんでもありません。

 多少のネタバレは含みますが、惑星規模の肉体を持つ伝承族。こいつらがメインの敵なのですが、もう強いの。めちゃ強いの。念動力でバリアを張って、自分自身の持つ重力だけで相手を倒すとか、ちょっとスケールが違います。

 伝承族の首領である存在なんぞ……もう想像を絶する存在で、しかもその存在理由がまた意外性を持っているというか……。

 銀河系全体をバリアで覆い、他の銀河には行けないようにしてるとか、ね。こんなのに勝つにはどれだけ主人公もインフレバトルしなければいけないのか、と考えるのが普通ですが、主人公が使うのはあくまで、知恵と勇気なのです。

 勝率が10%ぐらいと聞いても「それはいつもより高いな」とか言って平然と戦力差を根性と知恵と、納得出来る戦法で勝つわけですよ。

 今はなきノーラで看板を張っていた最長作品なのですが、全17巻で愛蔵版も出ています。続編は割と最近完結しましたね。

 リプミラの名前とミュズの名前は言うまでもなくこの作品からいただいています。もっとも私はリープシリーズの中ではリムが一番好きなのですが。


 過去の名作を挙げる人は、だいたいこの作品も知ってるんじゃないですかね? 絵柄がキャッチーではないので、手を出す人は少ないのかもしれませんが。

 とにかくこの作品に共通するのは、チートで勝つという戦いは一切ないことです。むしろ敵はいつも、こちらよりも強い。それをどうやって倒すのか、想像を絶する熱い戦いが繰り返されるのです。

 そしてこの作品、メインは伝承族との戦いなのですが、そのための味方を得るために銀河系を冒険します。

 その中にはとんでもなく強いやつがやっぱりいて、戦いではなく戦争というレベルにまで発展したりもします。

 ライバルとも言えるダード・ライ・ダグンなんかもう、戦士の誇りと戦闘本能に満たされた、サイヤ人みたいな人です。しかもこいつの存在も重大な伏線になっていて、最終決戦での盛り上がりはとんでもないものになります。


 そして全ての戦いが終わった時……そこにあるのは静寂と記憶、そして新たな旅へと誘う風。

 もうね、風呂敷の畳み方が圧倒的です。絵柄で敬遠してる人は、本当に人生を存していると思いますよ。

 とうか私の小説がインスパイアされた作品の中でも、大きな要素を含むのがこの作品なのですよ。

 それまでの宇宙船とは一線を画した個性的なデザイン。七つの軍団に十の獣。中二ワードも満載されているのですが、それを変に茶化したりすることなく、真正面から受け止める。そんな懐の深さがあります。

 この方の作品では他にダイ・ソードも発想が大胆で好きなのですが、まずはこの作品。


 マップス。まずはお読みあれ。

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