第190話反乱者捕縛作戦2

265日目


朝、パルン王国の王城に行くと、ワンダムさんが出迎えてくれ、謁見の間に案内されます。


謁見の間には国王と兵士長と思われる人、そしてワンダムさんの3人しかいません。

情報漏洩が怖いからって3人にしかこの作戦を伝えていないって流石に内通者を疑い過ぎでしょ。


そう思いながらも、現状を確認すると、昨日のうちに兵士招集を初め、出陣の準備を始めているので、早くて夕方には出発が可能との事です。


「それで、総兵力はどの程度になるんですか?」

そう質問をすると兵士長らしき人が、現状を話し出します。


「うむ、1つの拠点に大体兵士300程を予定して集めた兵は余裕を持って8000程です」

そう言って胸を張りすぐにでも出陣をしたそうな兵士長に、強襲する拠点を集まった兵士達に伝達だけして、とりあえずなんだかんだ理由を付けて出陣は3日後にするように伝えます。


最初は難色を示していましたが、内通者から首謀者や幹部に情報が伝わる前に強襲しても意味がないので、情報が伝わる時間を考慮する旨を伝えると、納得した表情で、兵士達と指揮官クラスに強襲先を伝えに行きました。


なんだろう、体育会系で動きは機敏だけど、このまま任していたら絶対に失敗しそうな感覚…。

これって自分が小まめに指示を出さないと駄目なの?


そう思いながらも、謁見の間に残った国王とワンダムさんに、再度今後の方針を伝えます。

最終的に、追加で2000程兵を集め、本命の拠点には1000人の兵士を差し向ける方向に決まりました。


大丈夫かなこの作戦。


268日目


兵士を招集し終えてから3日後、いよいよ反乱の首謀者の野田課長含めた幹部たちの捕縛に出発します。


まあ3日間の間に自分は、月山部長に依頼した報告書を日本政府の鈴木さんに渡したり、捕縛作戦の説明をしたりと、なんだかんだで色々と動き回ってましたが、気質なのでしょうか、パルン王国の国王をはじめ、ワンダムさんや兵士達は出発が伸びていることに不満を口にするどころか、毎晩酒盛りをしていたようです。


ほんと緊張感ないよな~。

一応ワンダムさんいわく、やる時はやるとの事だから本番ではキビキビと動いてくれるとは思うけど。


そんな事を思いながらも、港湾都市のブテナを出発した部隊は、所々で本陣とは逆方向にある各拠点制圧部隊を分離しつつ、本陣とする町に向かいます。

本陣とする村には夕方には到着しましたが、一旦今日の所は、ここで夜を過ごし明日の朝残りの拠点制圧部隊を出発させる流れになります。


まあ3日、今日、明日を含めると5日間時間があったから恐らく野田課長や幹部達は今回制圧すると兵士達に伝えた拠点以外に避難してるでしょう。

見事に網にかかってくれるといいんだけどな。


269日目


この日は朝から、割り当ての拠点を制圧する部隊が本陣としている村を続々と出発していきます。

早ければ、今晩、遅くても明日の夕方までに各部隊は拠点を制圧できるでしょう。


とは言え本命の拠点を制圧予定の部隊は移動を開始せず待機をします。

もちろんこの待機している部隊には拠点制圧を行うとは一切伝えられていませんので、本陣となった村は穏やかな雰囲気に包まれています。


270日目


昼頃になり、昨日出発した制圧部隊からの伝令が届きはじめますが予想通り反乱者の拠点はもぬけの殻だったとの報告ばかりです。


ワンダムさんも兵士長さんも予想はしていたのでしょうが、若干焦りが見えだしてきます。


「マサト殿、情報が洩れているからもぬけの殻だと言うのは分かるんだが、本命の拠点ももぬけの殻という事は無いだろうな?」

「それは分かりません、判明してない拠点があってそこに潜伏してれば、もぬけの殻でしょうし、制圧してみない事には」


そういう自分に分かってはいるけど納得いかないと言った表情の兵士長さんですが、夜に本命拠点制圧部隊を出発させ機動力を生かして明日の朝に強襲をかけるとの事で、一応は納得してくれます。


日が沈み、兵士達が夕食を食べ終えた頃、本陣としていた村が慌ただしくなります。


機動力を重視した騎馬部隊を中心に1000人1部隊が4つ編成され、それぞれ指揮官に率いられ本陣を出発していきます。


ワンダムさんは本陣に残るようですが、兵士長さんは1部隊を率いて、本陣から一番遠い町を目指すとの事なので、自分も兵士長さんが率いる部隊に加わり街道を走り抜けます。


驚いたのは、普段は酒を飲んでワイワイ騒いている兵士達が、いざ本番となると顔つきが変わり、寡黙に命令を遵守する兵士に様変わりした事です。


そんな兵士達の一団と共に馬を走らせ拠点のある町を目指しますが、これなら今から情報が洩れても、伝わる前に拠点を強襲できるので拠点に居てくれさえすれば捕縛は可能でしょう。


270日目


途中、川の畔で休止を取りましたが、兵士達は自分が休むより先に馬の世話をし、その後、車座座になって各々が携帯食などを口にするだけで、再度進軍を再開します。


流石パルン王国が誇る精兵と行った所でしょうか、疲れた顔も見せずに進軍し空が白みだす頃には、目標の町に到着しまし、門を通過すると、馬を門の警備兵に預けると目標の建物に向かって走っていきます。


この町にある反乱者の拠点は、以前の有力者が隠居所として生活をしていた屋敷で、登記上は最近パルン王国で商売を始めた商家の屋敷という事になっているとの事です。


静まり返った屋敷を手際よく包囲したパルン王国兵は、兵士長の指示で屋敷に突入を開始します。


突入直後は多少の喧噪がありましたが、護衛が少ないのか、すぐに静かになり、そして伝令の兵士が制圧完了の報告をしに来ました。


報告によるとどうやら屋敷の中には30名ほどが居たようで、突入直後に抵抗した者を除き、全員を無傷で拘束し、抵抗した者も命には別状ないとの事です。


兵士長さんに促され拘束された者達の所に向かうと、広いリビングに一塊に集められた集団の中から聞きなれた声が聞こえて来ます。


「なんだ! お前たちは! 私はこの国で商売を始めた商人で、このような仕打ちを受ける筋合いは無いんだぞ!! 責任者を呼べ!」


そう口から唾を飛ばしながら喚き散らしている野田課長は自分の顔を見ると、一瞬表情が固まり、その怒気を押さえることなく自分に罵声を浴びせてきます。


「武内~!! これはどういう事だ!! 今すぐ私の拘束を解け!! さもなければ訴えるぞ!」

そう言い、自分に対し罵声を浴びせ喚き知らした後、疲れたのか静かになったので野田課長に話しかけます。


「訴えて頂いても良いですけど、その前に、自分のした事を裁かれるんですよ、分かっているでしょ? なんで拘束されたのか?」

「分かる訳ないだろう、私は税金も納めてる優良な商家の主だ!」


「そうですか、本当に商家の主だったら拘束はされなかったんですけどね、ここに居る皆さんはパルン王国に反乱の芽を撒きパルン王国に害をなした罪で、この国で一番残酷な刑で処刑されるんですよ。 もちろん野田課長も含めてです」

「貴様! なんの証拠があるって言うんだ! 私を裁くと言うなら証拠を見せてみろ! 確たる証拠がないなら今すぐ解放しろ、そうすれば訴えるのを考えてやらん事も無いんだぞ!」


そう言って強気に喚き散らす野田課長ですが、どうやら他の幹部達は、一番残酷な刑で処刑されると聞いて顔を青くしています。


「はぁ~、内偵をしたうえでの拘束なんで証拠を出せとか無駄でしょ、まあ首謀者の日本人以外の幹部は素直に罪を認めて残りの拠点や幹部の情報を自供して拘束の手伝いをすれば命だけは助かるかもしれませんけど…」

そう自分が言い終わらないうちに拘束されていた異世界人が口を開きます。


「それは本当か! 喋る、何でも喋るから命だけは助けてくれ!」


うん、もっとゴネて自分達は無実だと騒ぐと思っていたのに、速攻で落ちたな…。


どんだけ忠誠心低いんだよ。


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