第162話報告
228日目
昨晩から今朝にかけてオダ帝国の衛兵が宿に来るかと思って構えていましたが、どうやらセロスは自分の情報をオダ帝国に売らず、自分の依頼をこなす方を選んだようです。
う~ん、怪しい男だけど一応は信用できるのかな。
それになかなか役に立つ感じだし、信用できるなら今後も情報収集を依頼するのもいいかな。
そんな事を思いながら、宿の一階にある酒場で朝食を摂り、その後ラルに荷馬車を牽かせてアズチの町を出てしばらくしたら転移魔法でゲートを作りバイルエ王国に戻ります。
バイルエ王国に戻りロ二ストさんに、セロスと言う男に情報収集をさせて情報が集まったらロ二ストさんを訪ねるよう伝えた事を話、セロスが来たら通信魔道具で連絡をお願いした後、バイルエ王国を後にしてドグレニム領のプレモーネに戻ります。
プレモーネにある自宅に移動をすると補助魔道具を用意して日本へのゲートを開きます。
既に12時を回っている時間なので日本の対策本部には多くの人が居て、ゲートを開き声をかけると、内閣府の鈴木さんがすぐに反応してきます。
「武内さん、オダ帝国って国を調べに行ったと聞きましたが、何かわかったのですか? 誰がマスコミと接触しているか判明しましたか?」
凄い剣幕で色々聞いてくる鈴木さんに若干引きなが、調べて来た情報を伝えます。
「まさか…、その話が本当だとしたら織田信長が異世界に転移していて、オダ帝国を築いたって事ですか?」
「そうですね、調べた限りではそんな感じっぽいです。 アズチの町も明らかに他の国の王都と違って城を中心にした
「そうですか、まあその辺は歴史学者の人が喜びそうな内容ではありますが、今私達が必要としている情報ではありませんので、日本人について教えて頂けますか?」
どうやら鈴木さんはオダ帝国を興したのが誰かなど興味が無いようで、日本人の情報について聞きたいようです。
「日本人については詳細情報は調査中ですね、今の所分かっているのはオダ帝国には日本人が大体100人以上居ると言ったところです。 とは言えもっと居るかもしれませんけど」
そう日本政府が聞きたがっていた日本人の情報を伝えると明らかに鈴木さんが落胆したような感じです。
「いやいや、鈴木さん、そんな国の機密扱いされているような情報をすぐに仕入れられる訳ないでしょ」
「まあ確かにそうではありますが、もっと具体的な情報…。 例えば誰がマスコミと接触をしてるのかや、どのような方法で接触をしてるかなんかをですね…」
「無理ですね、それこそ相手だってそんなに簡単に手の内は見せないでしょうし、そもそも日本のマスコミと接触してる事を知ってる別の日本人の存在が居るって分かったらそれこそどうなるか分かりませんよ?」
「確かにそうですが、出来れば方法を突き止めて、マスコミとの接触を辞めさせてもらいたいんです」
鈴木さん達も上からの圧力があるのでしょうか?
どうしてもオダ帝国に居る日本人がマスコミと接触している事を辞めさせたい様子です。
「とはいえ武内さんが調べて来た情報については報告をしておきます。 それと日本政府の今後の方針ですが、今回の件の公表を決めました」
「あ~、ついに公表するって決めたんですね。 それで自分に何かさせようと? それとも何か欲しい物があるとか?」
「いえ、今の所、政府と接触があるのは1名だけでそれも限定的な接触との事で公表をする予定との事です。」
「ふぅ~ん、まあその辺は日本政府が決める事ですから自分が口をはさむ事じゃないですし、それで何を根拠に異世界転移って言うんですか?」
「それについては、武内さん達が撮影してくれた動画や、頂いた魔物の死骸の映像を公開する予定です」
そう言って鈴木さんが公表予定の内容などを説明してくれましたが、恐らく情報不足とマスコミの推測での報道などで確実に騒ぎになって政府批判になるでしょう。
まあその辺は自分には関係ないので気にしないで、前回預けた地図をコピーしたものを受け取ります。
「それと武内さん、先程は政府として欲しい物は無いと言いましたが、出来れば異世界にしかない物とかはありませんか? 前回お預かりした槍を分析したら鉄で出来ているようでしたので…。」
「異世界にしか無い物ね…。 魔石とかは異世界にしかなさそうですけど、手持ちであげられるようなサイズの魔石は無いんですよね。 あとは金属ぐらいですが」
「金属ですか? それはなんという金属ですか!!」
金属と聞いて身を乗り出すように食いついて来た鈴木さんに少し驚きながらも、ネレースに以前聞いた魔鉄・黒色魔鉄・ミスリル・アダマンタイト・オリハルコン・パシュパトラがあると伝えます。
「武内さん、その金属のサンプルを分けて頂けますか?」
「まあ少しなら良いですけど、提供ばかりしていて自分が欲しい物は全然いただけないのが不満ですよね」
「そ、それは、確かに武内さんの希望する物をご用意出来ないのは心苦しいですけど、要望する物が物なので…。」
そう鈴木さんは歯切れの悪い感じで答えますが、さしずめ上からは出来る限りのサンプルや情報を聞き出すように、だけどこちらの要望は上が却下するのである意味板挟み状態なのでしょう。
とは言え自分としては特に自衛隊装備以外は欲しい物も無いですし、そんな事を思いましたが、移動が馬などで速度が遅いのでバイクなんかがあると楽なんじゃないかなんて思います。
「鈴木さん、オフロードバイク20台ぐらいに、ガソリン携行缶に入れた状態で200リットルぐらいと交換でどうですか?」
「オフロードバイクとガソリンですか? それなら上もダメとは言わないですけど、バイクなんてどうされるんですか?」
「ただ単に移動手段の多くが馬なんでバイクがあれば楽だと思っただけですね。 あとタダでサンプルを渡すと今後もタダで要求されそうですし、今のうちから対価を要求しておこうと思って」
「わかりました、では早速用意をさせますんで、今から手配するとして、明日の昼頃までには用意させます」
そう言って鈴木さんはバイクとガソリンの手配を指示しだしたので、自分も魔鉄・黒色魔鉄・ミスリルをサンプルとして各1キロ分づつ渡します。
「武内さん、先程言われていたパシュパトラって金属は無いのですか?」
「無いですね、どうやら合金のようですが、今の所作れてませんし、発見も出来てません」
その言葉を聞き、鈴木さんも納得したのか、渡されたサンプルの金属をケースに入れてどこかに運ぶように指示を出しています。
「じゃあ自分はこれでゲート閉じますんで、明日またバイクとガソリンを受け取りに伺います」
「分かりました、では準備をしておきますので」
そう言ってお辞儀をする鈴木さんに軽く挨拶をしてゲートを閉じます。
それにしても日本で異世界転移を公表したらどこまで騒ぎになるんだか…。
そんな事を思いながらも、領主館に向かい、グランバルさんに一応オダ帝国の話をし、その後、月山部長の相談所に行き、オダ帝国の話を伝えます。
歴史好きなのでしょうか、月山部長は話を聞くと目を輝かせて聞き入り、色々と質問をしてきましたが、日本人らしき人が銃を使っていたとの話をすると一気に表情が曇り考え込んでしまいました。
月山部長には、オダ帝国の首都アズチで出会ったセロスと言う男が現在詳細な情報を収集している旨と、また情報が入ったら報告すると伝え相談所を後にします。
さて、魔石不足だから補充もしないとだし、銃対策もしないとだし。
とりあえず明日バイクとガソリンを受け取ったら採石場に行って魔物狩りをして魔石集めでもして、その後以前作った魔道具の銃を量産でもしよう。
ほんと、何で異世界に転移するとこんなにも忙しくなるんだろう。
まったくいつになったら異世界定番のハーレムを楽しめるのやら…。
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