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そのまま川沿いをくだっていって、新聞社の戸を押した。さえない眼鏡男とすれちがった。
私は男を呼びとめ、「松永君を知らないか」
「はあ、知っておりますが」男はこたえた。間の抜けた声だった。「あの、どういったご用で」
「ちょっと用事があってね」私はいった。「それで、いるのかい」
「はあ、三階におりますよ」眼鏡をなおし、鼻をすする。「もういいですか」
「ああ、ありがとう。邪魔したね」
エレベーターで三階に上がった。チャイムが鳴り、ドアが開くと、松永と出くわした。
松永は驚いたような笑顔を浮かべ、「ああ、どうも」
「下かい? 上かい」私は歯を見せた。
「下です」エレベーターに乗って、「私になにか用でも」
「仕事に協力してもらおうと思ってね」一階のボタンを押す。ドアが閉まり、ガクンと動きだす。「いまから取材か」
「ええ。例の食堂で働いていた人間のところを周ろうと思いましてね」
金玉が浮くような感覚になって、チャイムが鳴った。
「ちょうどいい。ついて行っていいか」開くのボタンを押し、松永を先に出した。
「かまいませんよ」歩きながらきざに帽子をかぶる。「取材の邪魔はしないでくださいね」
「ありがとう、もちろんだ」
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