第13話 武器屋にて
広い町ではあるが、存外早く武器屋を見つけることができた。
二人は中に入って行く。
「へい! らっしゃい! 今日はなにようで?」
いかつい体つきをした強面の男性店主に、ユグルスが少しビビる。それを見てシャインは、ため息を吐くと、
「ユグルス。いちいちビビるな」
「は、はい! すみません!」
慌てて謝るユグルスに、相変わらず愛想のないシャインは、
「……店主。コイツのモーニングスターのメンテナンスを頼む。それから、この武器を知っているか?」
そう言ってシャインは武器屋の店主に拳銃を見せる。店主は少し困惑しながら、
「銃器の類いかい? だが、あいにくウチで扱ったことはないな!」
「……そうか。なら、工房の一部でいい、借りたい。自分でメンテナンスと銃弾を作りたいのでな」
「じゅうだん? よくわからねぇですが、工房はお貸し致しますよ! どうぞあちらを! あ、モーニングスターの子、オタクさんはこっち! そいつをメンテナンスしよう!」
強面の容姿とは裏腹にフレンドリーで親切な店主に、ユグルスはホッとしかけるが、シャインの言葉を思い出し、気を引き締めつつ、モーニングスターを店主に渡す。
「ほうほう。坊ちゃん、さては新米さんかい? 手入れの仕方が素人だ。コイツぁいけねぇ。お代はいいから、コイツの扱い方を教えてやろう」
「え……ええと?」
優しい店主の言葉とシャインの言葉で混乱するユグルスに、シャインは、
「……教えてもらえ」
面倒くさそうにそう言うと、そそくさと銃のメンテナンスと銃弾作りに取り掛かってしまった。
「さてと、坊ちゃん! オタクにはコイツの扱い方からメンテナンスの仕方まで教えるから、しっかり聞くんだぞ?」
強面の店主にやはり少しビビるユグルスだが、気合いを入れ直し、
「はい! よろしくお願いいたします‼︎」
そう答え店主の後に続いた。
****
「あ、ありがとうございました!」
モーニングスターの手入れ方法とちゃんとした扱い方を教わったユグルスは、店主に律儀に頭を下げる。
「いやいや、冒険者ってのは大変だからね! 少しでも生き延びてほしいっつーあっしの願望ですわ。だから気にせんでいいですよ!」
優しい店主の言葉にユグルスははにかんだ笑顔を見せる。そして、周囲を見渡し、
「えっと、シャインさんはまだ……ですかね?」
一緒に来たシャインを気にするユグルスに、
「ああ、あの姐さんならまだ工房らしい。ほれ、見てみ?」
そう言われ、指差された方に目を向けると、閉ざされた工房のドアに、
『入っても覗いても殺す』
物騒な文言が書かれた紙が貼られていた。
「あの姐さんの武器、珍しいからな。時間がかかるんだろうよ」
工房一つを占領されているというのに、どこまでも人のいい店主に、ユグルスはなんだか申し訳なさすら感じてくる。
「すみません……」
「いやいや、いいのいいの! ウチは冒険者ギルドと連携しているから、こういうことはよくあるのさ。まぁ、こんだけ殺気立っている冒険者は、はじめてだがな! わははは!!」
「な、なるほど……」
納得したユグルスに、店主が声をかける。
「そうだ坊ちゃん。仲間を待っている間、ウチのカミさんの茶に付き合ってくれねぇか? 依頼として出すからよ!」
「そ、そんな! 依頼だなんて、とんでもないですよ! むしろこちらの方こそお代を!」
慌てるユグルスに、店主は、
「なぁに、ウチのカミさんの話は長くてな? それなのに茶会が好きと来た! 相手がほしいのよ! 頼みますわ!」
そう言われてしまえばユグルスの性格上、断れない。了承すると、リビングに通された。そこには、これまた人の良さそうな綺麗な奥さんが、嬉しそうに出迎えてくれた。
「ああ! なんて可愛らしい坊やなの! お茶に付き合ってくれるなんて優しいのね! ありがとう! それじゃ早速だけど……」
それから、店主の奥さんの長話が始まったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます