第11話 決戦!VSアスト!!
目を覚ます。静かな朝だった。兄貴はもう出発したのか、いつものぱたぱたと軽快な足音も聞こえない。オレは布団からのそのそと這い出てサイドテーブルの上の
「よしっ」
小さな声で気合を入れて、オレは荷物の用意を始める。とはいえ、持っていくものはそんなに多くない。用意はすぐに終わって、いつも通り朝食のトーストを頬張る。
会場に向かう道はやたら混んでいて、オレはフードを目深に被って進む。選手室につく頃にはすっかり人混みに揉まれて疲れ切っていた。持ってきた水筒の中のお茶で喉を潤し、部屋に備え付けの
「嬉しいよ。ヘンルーダ。お前がここまで来たことを俺も誇りに思う」
兄貴の
「オレを見ろよ、兄貴。オレは兄貴のこと、大好きだから――だから本気で潰すよ」
「ああ、おいで。徹底的に叩き潰して立場をわからせてやるよ……
兄貴の最初に選んだ
「
時すらも止まっているかのような銀色の箱庭に夕陽が射し込み、銀の花に反射して長い影が伸びる。『桜花絶唱』はまだ切らない。
「
兄貴が
「
初撃をかいくぐり、近くなった距離を詰めるようにぞぐぞぐと刃が伸びる。浅い。まだ届かない。
「
届かない距離は、詰めるまでだ。この距離で刃を爆発させればオレはもちろん、兄貴も無傷では避けられないと踏む。兄貴は呆れたように息をついて一歩、オレの方へと距離を詰めた。
「
振るわれた腕は攻撃ではなく、防御のため。振るわれた剣圧による颶風が爆発を押し返す。頬を掠める僅かな刃の他は勢いを殺してオレの方に向かう。『残影の疾風、首断ちの颶風』を防御に使うなんてあんまりだ。聞いたことがない。なんでもありかよクソ兄貴。位置取りが悪い。このままじゃ頭から
「
腕の代わりに伸ばした茨が兄貴の腕を絡めとり、ギリギリで体を引き寄せる。本気の兄貴と戦うのがこんなにキツいとは思わなかった。たまに付き合ってくれていた練習は本当にじゃれていただけなのだと思い知らされて、オレは舌打ちする。舐めやがって。
「ヘンルーダ、鬱陶しいからこれ、離してくれないか」
腕に巻き付いた茨を持ち上げて兄貴が苦笑いする。せっかく掴まえたチャンスを逃すわけにはいかない。
「絶対に嫌だね」
「まったく、聞き分けのない奴だな。いつもはあんなにいい子なのに。
茨を伝って炎がオレに迫る。なんなら茨そのものがオレの
「ガキ扱いすんじゃねえ!
オレは二つ目の
「オレは兄貴を超える!もう比較されるのはうんざりなんだよ!
星の光が、刃桜の花びらが、足元の銀の花畑が、刃へと姿を変えて兄貴へと殺到する。
「ヘンルーダ、前に教えただろう。その
同じ
「っ、
準決勝のおかげで兄貴に精神攻撃系の
「
兄貴がにやりと悪辣に笑う。銀の箱庭から一転して水晶の煌く宮殿へと世界が塗り替わる。影が射し、兄貴を捉えているというのに。平然と兄貴は微笑んでオレを指さした。
「馬鹿だな、ルー。お前が俺を越えられるわけもないのに――
影がオレを喰らうように伸びる。累積したダメージからして、多分、これをまともに喰らったらおしまいだ。敗けたくない、少なくともこんな……一矢報いることもできない敗け方は御免だ。
「
反射物が多い水晶宮で通常の数倍にも増幅された吸精が発動する。崩れかけていた
「
兄貴の
――そのとき、ふと
「ルー。お前、まさか。それはダメだ。戻ってきなさい、ヘンルーダ!」
兄貴が叫ぶのにも構わず、オレは。
「――
それがどんな意味を持つ
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