第9話 届かぬ想い!アストVSカナヴィ!!
オレ達は順調に本戦を突破して、ついに準決勝まで勝ち上がってきた。流石に本戦準決勝までくると観客も多くなるもので、オレは参加者だから関係者席を貰えたけど一般なら現地の席を取るのも難しいだろう。人でごった返す会場は周りに屋台も出ていて、さながらお祭りだ。
オレが今日ここに来ているのには理由がある。今日の準決勝は兄貴とカナヴィにいちゃんの対決だからだ。オレは既に勝ち上がりが決定してるから、二人のうち勝った方がオレと戦うことになる。
オレも早めに
今回は
青地に白い蔓草模様のサーコートを着た黒髪の騎士と、赤い振袖を羽織った金髪の貴婦人の
開始とほぼ同時、真っ白な
対するカナヴィ兄ちゃんは『妙なる調べ、戦場に響く凱歌』で盾を手にして受け止める。流石に兄貴の代名詞になるような
「はは、焦ってるのか? カナヴィ。カワイイな」
「はっ、お前が遅漏なだけだろ、アスト。お前にも弟くんにも勝つのは俺だ」
二人の会話は客席には聞こえていない。オレは盗聴用の魔道をあらかじめ二人にしこんどいたから聞こえてるけど。兄貴はどちらかといえば早めなんだけど、そんなことカナヴィ兄ちゃんは知らないから、オレはちょっとだけ優越感。というか、兄貴は今モロに精神攻撃を受けているはずなのに態度が変わらな過ぎて怖い。足元の花を踏み躙りながらカナヴィにいちゃんに近づき、
「あっぶねえ。容赦ないなぁ、アスト。お前の手の内は誰より一番俺がよく知ってるとはいえ、これはちょっとひやっとしたよ」
「当然だろ、カナヴィ。お前が相手だからこそ本気でぶつかれるんだから」
二人の間の睦言めいたやりとりは正直、ちょっと妬ける。兄貴のことを一番よく知ってるのはオレだ……なんて、オレの憤懣は二人には届かず兄貴は二つ目の
「アスト、てめっ……市民の模範になるような
「お綺麗なお題目より、観客が湧く試合運びの方が重要じゃないかなぁ。だからお前はいつまで経っても俺に勝てないんだよ、カナヴィ」
兄貴の
「だめだぜカナヴィ。冷静さを失った奴から負けていくってずっと言われてるだろ」
兄貴は不敵に笑って指を鳴らす。あの感じじゃ
「……ふ、ははっ。あははははははっ! さっきからおかしいと思ってたんだ。なあ、アスト。お前、本当に精神攻撃は効いてるか?」
「おかしなことを言うなぁ、カナヴィ。俺がダメージを受けてないように見えるのか?」
兄貴の言葉に、カナヴィにいちゃんは心の底からおかしいというように顔を覆って笑い始める。観客席からでもわかる、異様な空気が辺りに漂っていた。カナヴィにいちゃんはひとしきり笑うと、悲し気に顔を歪め、残念だ。と呟く。それから、兄貴を指さして一言。
「アスト……お前さぁ、目が合ったんじゃないか?
続く言葉が紡がれるより前に、勝負は決した。兄貴の『爆ぜよ影、咎追え刃』が決まったから。兄貴は観客の方に手を振って応えている。たまたま聞いてしまったオレ以外の観客は何も知らずに兄貴に声援を送る。
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