第9話:先祖返り

 神様が返事をしてくださった!

 今のうちにできる限りお願いしないと!


(あああああ、もういい、もういい、うるさいから聞いてやる。

 これ以上四六時中心話で訴えられ、たらたまったもんじゃない。

 これだから先祖返りは始末におえん!)


 先祖返り、とはなんだ、俺の事のようだが。


(お前は全然分かっていないようだが、普通の人間が蹴りで城門を壊せるはずもなければ、数万の軍勢を撃退できるはずもない。

 それができるという事は、人間ではないとう事だ。

 お前は神々と人間が普通に愛し合っていた古の時代に、神々の子を宿した人間の子孫で、その血が色濃く表れた先祖返りなのだ)


 先祖返り、俺が、嘘でしょ。


(信じようと信じまいと構わないが、もう祈りのは止めろ、うるさくてかなわん)


 しかし神様、私には願いがあって……


(そんなモノ、我に願わなくても、お前の力で簡単にできる。

 怒りで解放されたお前の力なら、王国軍であろうと皇国軍だろうと、一人で皆殺しにできるから、遠慮せず殺してしまえばいい。

 もうお前も神の一柱なのだから、人間などに遠慮する必要はない)


 神、俺が神、まあ、復讐できるのなら、俺が神でも人間でも構わないが、ターニャだ、ターニャを幸せにできなければ、神であろうと役立たずだ。

 ターニャを助けてもらわないと……


(ああ、うるさいといっているだろうが、我に願うのは止めろ!

 ターニャか、しかたがないな、だが我にできる事は限られておる。

 幸いというか、腹の子は既に死んでいるから、直ぐに水に流してやろう。

 記憶は……そうだな、このままの方が幸せだろう。

 お前が王国軍と皇国軍をぶちのめせば、お前を恐れて、ターニャに余計な事を教える者などおらんさ)


 俺は頭が悪いから、未来の事など全く分からん。

 だが、神様が王国軍と皇国軍をぶちのめしたら、ターニャの悪口を言う者がいなくなるというのなら、それを信じるだけだ。

 神様が嘘をついていたら、神様をぶちのめせばいい。

 俺は止める両親を振り切り、ターニャの事を頼んで、戦場に向かった。


 最初に皇国軍の大将幹部をぶち殺し、皇国軍を潰走させた。

 王都の城門を蹴り破り、邪魔する騎士や兵士をぶち殺し、ターニャを騙し苦しめたフレッドと、それを黙認、いや加担しルドバルをぶちのめした。

 王太子であろうと王であろうと関係ない

 そう簡単に殺しはしない、恐怖に狂うまで、繰り返し繰り返しぶちのめす。

 魔法薬を使ったのか、それとも秘術の使ったのか、フレッドは五体満足な身体に戻っていた。


「くっくっくっく、また一から痛めつけられるとは、ありがたい。

 今度は父子一緒に痛めつけてやるよ」

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