第8話:神頼み
俺とターニャが帰領してから一カ月、フレビオ王国は滅亡の危機に瀕している。
宣戦布告したザリフト皇国軍が怒涛の勢いで国境を突破し、王都を完全に包囲してしまっているのだ。
俺との戦いで戦力を損耗した貴族は、ザリフト皇国軍を恐れで背後をつくことができず、むしろ恭順して生き残ろうとしていた。
「父上は、我が家はどうするのですか?」
俺は神頼みの合間に父に質問してみた。
俺にはフレビオ王国もザリフト皇国も関係ない。
フレッドとルドバルとダネルレに復讐できればそれでいい。
だが、ターニャのためには、我が家、サザン辺境伯家がどうなるのかは気になる。
ザリフト皇国がフレビオ王国を滅亡させて併合した場合、サザン辺境伯家がどう扱われるのか、それによっては今からでも戦う必要がある。
「サザン辺境伯家はフレビオ王家に許し難い恨みがある。
だからザリフト皇国に味方して軍を出すと申し出た」
軍勢を出して王都を攻撃できるのなら、フレッドとルドバルをこの手で殺せるだろうが、問題は皇帝のダネルレをどうやって殺すかだ。
人知れず暗殺できるのならいいのだが、俺にそんな器用な真似はできない。
腕力に任せて殺していいのなら、皇国軍二十万が相手でも蹴散らして見せる。
しかたがない、これも神様に頼もう。
「だが、ダネルレ皇帝陛下から今まで通り魔獣に備えてくれと言われた。
恐らくだが、お前に手柄を立てさせたくないのだろう。
お前が活躍すれば、サザン辺境伯家を侯爵や公爵に陞爵させなければいかなくなるから、それは避けたいのだろう。
この戦いが終われば、お前は皇国に人質を兼ねた騎士として出仕することになる。
今から覚悟しておくのだ」
「父上、それではターニャはどうなるのですか?!
父上と母上は私に生涯ターニャを護れと申されたではありませんか?!」
「お前が皇国に出仕して、サザン辺境伯家を守る事がターニャを護る事になる。
ターニャは私とエルゼで護るから、お前はできるだけ活躍して、皇国に必要不可欠な人間になるのだ」
父上の言われることは、なんとなくわかるが、納得できない、嫌だ。
ターニャを見殺しにしたダネルレに仕えるのは絶対に嫌だ。
ターニャを連れて遠くに逃げる方法もあるのだが、俺がターニャを連れて逃げたら、父上と母上が困ることになる。
父上と母上を説得して一緒に逃げたら、家臣領民が困ることになる。
これも、神様に頼りしかないな。
(神様、どうか御願いしたします。
生きている間はターニャを護らせてください。
その代わり、死した後には神様の戦士として戦います。
神様、どうか御願いしたします。
恨み重なるフレッドとルドバルとダネルレに復讐させてください。
その代わり、死した後には神様の戦士として戦います……」
(ええい、いい加減にしろ、うるさくてゆっくりできんわ!)
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