第7話:帰領

 俺は血みどろの屍の山を築きながら、父母のいる領地に戻った。

 王家が追手に放った騎士団も、行く手を遮る領主軍も、情け容赦せず皆殺しにして、修羅の道を進んだ。

 

「父上、母上、ただいま戻りました。

 ターニャをこのようにしてしまった事、ただただ私の失態です」


 俺は正直に全てを話し、詫びた。

 俺を信じてターニャを王都に送った両親には、詫びるしかできない。

 腐れ外道の王太子に騙された俺が愚かだった。

 それ以外の何物でもない、俺の責任だからだ。


「そうだな、全てお前の失態だ、だから責任をとらねばならない。

 お前は人生の全てをかけて、ターニャを護らねばならん。

 もう簡単に死ぬ事は許されない、その事を肝に銘じるのだ」


「はい、父上、どのような恥をかくことになろうと、生き延びてターニャを護る事、今ここに父上と母上に誓います」


 俺の言葉を聞いて、両親が深く頷かれる。

 だが、それはそれとして、復讐は果たさなければいけない。

 少なくともフレッドとルドバルは殺さなければいけない。

 こんな事なら、王城内にいるうちに殺しておけばよかった。


「まずは今回の件を諸外国に知らせ、フレッド王太子とルドバル国王の非道を糾弾し、独立を認めてもらわなければならん。

 まあ、ダネルレ皇帝陛下は認めてくれだろう。

 ダネルレ皇帝陛下が認めてくれて、ザリフト皇国が正式にフレビオ王国に宣戦布告すれば、もうフレビオ王国に我が領地を攻撃する余裕はない。

 それでなくてもお前に戦力の半数を壊滅させられてるのだ。

 もうフレビオ王国にザリフト皇国を撃退する力はない。

 いや、お前を敵に回した時点で、フレビオ王国の滅亡は決まっていた」


 俺は頭を使うのが苦手なので、最初は父上が何を言っているのか何も分からなかったのだが、ダネルレ皇帝は最初から全てを知っていたという。

 父上の推測では、ザリフト皇国の密偵が、フレッドとルドバルの悪巧みを報告し、俺がフレビオ王国と敵対すると予測していたというのだ。

 フレッドが秘宝の力で俺を騙し、ターニャを弄んだいたのを知っていたという!


 俺の中で、ダネルレ皇帝とザリフト皇国に対する怒りが沸々と湧いてきた。

 父上と母上が、それが為政者のなすべき事で、ダネルレ皇帝が悪事を企んだわけでも、実行したわけでもないと言われても、知っていて見て見ぬフリは敵と同じだ。

 父上と母上に約束したから、自分が死ぬような危険な行為はできなくなってしまったが、フレッドとルドバルとダネルレは殺したい。

 殺さなければ、ターニャが可哀想すぎる。

 なにか、なにかいい方法はないだろうか?

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