おばあちゃんは呆れたような目で私を一瞥すると、小さく息を吐く。

「私もね、若い時はこの能力がたくさんの人のためになればと思っていたさ……」

「だよね! 死んだ人の声が聞けるって、すごい力じゃん!」

「まあね。突然大事な人を亡くして戸惑ってる人達に、亡くなった人の伝えられなかった言葉を伝えるとさ、亡くなった人も残された人も、みんな喜んでくれてさ」

「だよね! だよね! すごいよね!」

「それが評判になって、田舎じゃちょっと有名な霊能者と呼ばれるようになって」

「すごいじゃん! ……って、あれ? じゃあなんでやめたの?」

「あれは、まだ20歳を過ぎたばかりの頃だ……」

 おばあちゃんは、遠い目をして語り出した。

「隣町で有名な成金の社長が、突然亡くなってね」

「あらあら」

「確か50過ぎだったと思うよ。若かったから遺言書も何もなくてさ。後継ぎを誰にするかとか、財産分与をどうしたらいいかとか、聞いて欲しいってことでね……わざわざその家にまで出向いてやったさ」

「財産持ってる人って、そういうのちゃんとしてないと揉めるって、テレビで見たことあるけど、本当にあるんだー」

「はあ……」

 おばあちゃんは大きなため息をつくと、お茶を一口啜り、真剣な顔で私を見た。

「後学のために教えといてやるけど、他人の金絡みに首を突っ込むもんじゃないよ」

「な……何があったの?」

 おばあちゃんの真剣な物言いに、ごくりと唾を飲み込む。

「その亡くなった社長ってのが20も年下の女と再婚しててな、しかも離婚した前妻との間には成人した子供が2人いた。そんな中、遺言書もないまま亡くなってみな、会社を後妻が継ぐか、子供が継ぐかでかなり揉めていてね……それで、私のところに相談に来たって訳だけど……」

「うわっ! ドラマの世界だ!」

「…………ドラマの方が、マシかもしれん」

 おばあちゃんは再び大きく息を吐くと、しみじみとして言った。ごくりと唾を飲んで、話の続きを待つ。おばあちゃんはお茶を啜って一息つくと、話を続けた。

「あのおっさん『誰にもやらん』て言いよったんよ」

「?」

 あのおっさんって、誰のこと? 誰にもやらんって、どういうこと?

 私は意味が分からず小首を傾げて続く言葉を待つ。

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