「今日も上手くいったんだね」

「運が良かったのさ。あのご夫婦も良い人だったしね」

 あのご夫婦、お父さんのお菓子を気に入ってくれたらしく、出したのと同じお菓子と他に干菓子などたくさん買って帰ってくれた。

 老舗といえば聞こえがいいが、少しお高いうちの店は、なかなか経営が厳しいらしい。おばあちゃんのお客さんが常連になってくれて、随分助かっているんじゃないかと、私は密かに思っている。

「いつも思うんだけどさー、なんでおばあちゃん、霊能者やめたの?」

「もともと霊能者なんかじゃないよ」

 そう言って、私が入れたお茶を啜る。


 おばあちゃんには、霊能力がある。死んだ人を呼び出して、その人と話しをする能力。

 おばあちゃんの所には、突然親しい人を亡くして困っている人が来る場合が多い。権利書や大事な書類が見付からない、金庫の番号が分からず開けられないとか。後は、亡くなった人とどうしても話がしたいという人。

 今日のご夫婦は、後者だと一目で分かった。女性の隣には、小さい男の子がいた。憔悴した女性を心配するように、寄り添うように立っていた男の子。どうして亡くなったのかは分からないけど、その子も、お母さんに伝えたいことがあるように見えた。


「ちゃんとお金貰って、商売にしてもいいと思うんだけどなー」

 霊能者じゃないと言いながら、年に数回、こうしたお客さんが来る。でもそのお客さんは知人か、知人からの紹介のみ。だからか、お金は一切もらってない。

「私から見ても、おばあちゃんってすごいと思うよー」

 私にも霊能力がある。小さい時から他の人に見えないものが見えた。おばあちゃんのように声を聞くのは得意じゃないけど、姿ははっきりと見える。時々、生きている人と間違えるほどに。

「今日の人だってさ、すごく喜んでたじゃん。人助けでお金もらっても、バチは当たらないと思うなー」


 おばあちゃんがお金をもらわないことに、お母さんは少し不満なようだ。その代わり、おばあちゃんには、毎年お中元とお歳暮がたくさん届くし、うちの和菓子もよく買ってくれているから、損しているとは思わない。だけど、少しくらいお金をもらってもいいんじゃないかなーと、私も思ってる。そして、いずれは私もこの見える力を使って商ば……もとい、人助けが出来ればと、密かに思っている。

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