トリック叔母トリート

麻婆生姜焼き

叔母ァは叔母でもロリな叔母ァ!!


 俺の名は6時58分に目を覚まし、シャワーで寝汗を流し、朝食にタケダベーカリーのロールパンを摂取し、電動歯ブラシで10分歯を磨きし者・楠原くすはら 悠斗ゆうと

 この二つ名みたいなのはモーニングルーティンだ、超絶大事なので先に紹介させてもらった。どれくらい大事かというと、これらのうちどれか一つでも欠かせば、その日のポテンシャルが六割も減少してしまうのだ。顔面小麦で作られた脳みそ餡子野郎が水に濡れた時くらい力が出なくなる。プリーズギブミーニューフェイス状態だ。


「はぁぁぁああ……」


 深々と溜息をつく今日の俺のポテンシャルは四割弱。しかし朝のルーティンは欠かしていない、なのに脅威の四割弱、それは何故か?

 答えは簡単、まずは6時58分に目を覚ますシーンから振り返ろうか。


 *


 目覚まし時計が鳴る数秒前に意識が覚醒し、すぐに身体の違和感に気が付いた俺は確かめるように掛布団を剥ぐ。するとそこには一人の少女が俺の上に馬乗りになって幸せそうな顔でこちらを見つめていた。

 寝込み襲う系幽霊でももう少し控えめな位置にポジショニングすると思う、本当お願いだから幽霊見習え。


「おはようユート! 今日もかっこいいね付き合って♡」

「おはよう紫苑。嫌だよ今日も邪魔だねどっかいって♡」


 俺のP・Tぽてんしゃるが四割弱の理由。それはこのはた迷惑な変態。楠原くすはら 紫苑しおんが毎回毎回邪魔をしてくるからだ。

 クリーム色のふわふわしたボブヘアーが俺の胸部の辺りでゆさゆさと揺れる。自分の匂いをつける猫みたいにすりすりすりすりすりすりと顔をこすりつけてくるこの女はうちの父親の再婚相手の妹――すなわち叔母にあたる存在だ。

 歳は22歳。姉は28歳。親父は48歳。親父がどうして20歳差の美人な女性を捕まえたのかはまたの機会に話すとしよう。


「寝顔かわいかったよ♡」


 22歳。高校二年生の俺よりも4つも年上なのにも関わらず、その容姿は完全に中学生か小学生に見えて、最初は母の娘かと勘違いしたくらいだ。


おぞましいことを言うな。はぁ……親父に頼んで鍵でもつけてもらうか……?」

「えー!? じゃあ私もお父さんに頼んで鍵穴と合鍵つくってもーらお」

「それじゃ意味がない。なあ、そろそろどいてくれないか? シャワーを浴びたいんだが……」


 馬乗り状態でいつまでも離れない紫苑。小柄で華奢な体系なので、力尽くでどかそうと思えばどかせるのだが。俺は彼女には極力触れない様にしている。


「はーい」


 おっと、今日は珍しく素直だ。明日は酸の雨でも降るのかな? 

 キャー大変、この雨溶けるよ! アシッドいあっしんどい!!


 ……気を取り直して。

 酷い日はこいつをカンガルーの赤ん坊みたいに腹にくっつけたまま無理矢理にでも移動するハメになる。勿論風呂場に入る前に引き剥がし、母に預けるまでがセットだ。


 この叔母――見た目の若さからして妹と呼称するほうがしっくりくるのだが。ここはしっかりと叔母と呼称しよう――はどうしてこんなにも俺にベッタリなのか? その理由は

 ……よくわからないんだ、本当だ。再婚相手と紫苑がうちに来て、ものの数日でこのありさまなのだ。両親は「仲が良くて睦まじい、いいことじゃないか」とか言っている始末。睦まじいって言葉使う対象間違ってない……?


 無駄な労力を消費せず、紫苑の呪縛から脱した俺は必要な荷物を持っていそいそと風呂場に向かう。


『ガチャ』


 ジャパニーズシノビが如く身のこなしで滑り込むように脱衣所に入り、素早くドアの鍵をかける。

 風呂場はプライベートな空間、当然ドアには鍵が設置されている。うんうんやっぱり現代社会に鍵は必要、戸締り大事だよね。と俺は齢17歳にして施錠の重要性を身をもって理解した。


「ふうう……ってリラックスしている場合じゃない。さっさと入らねば、二分のロスタイムだ」


 これ以上のロスを許せばルーティンはルーティンではなくなってしまう。良い一日は規則正しい習慣から、俺はいそいそと脱衣しプライベートルームへとGO。

 俺のヌードシーンは誰も得しないので割愛して朝食へ移行。

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