第02話 自分次第
説明書(的なもの)を読んでわかったことが二つ。
一つ目は、ダンジョンマスターなるものがフリーダムってこと。
二つ目は、ポイントが全てっこと。
まあ、他にもありますが、ポイントさえあればなんでも出来るってことですね。
例えば、手のひらの創造と言うスキル。
これは、一日十回、一度触ったもので、手のひらに乗せられるものなら生み出せるものです。
習得ポイントは300。缶ジュースなら魔力1消費で生み出せ、コンビニ弁当なら魔力3。回復薬中なら魔力5。発電機なら魔力10。拳銃なら魔力50。ミサイルなら魔力200と、作りが複雑なものや希少なものほど魔力はたくさん消費します。
タブレットで自分の魔力を調べたら100と出た。
習得ポイントから鑑みて、100はかなり低いと言わざるを得ないでしょう。ですが、フリーダムと言ったように、スキルも自由に設定変更が可能なのです。
一日十回を一日三回にすると、習得ポイントは300から90ポイントまで下がり、一日三回で魔力消費を下げて150ポイントまですると、魔力消費は三分の二までは押さえられます。
まあ、それはあくまでも一例で、そんな都合よくはならないんですがね。
ですが、考え方を変えれば90ポイントで習得し、後に魔力消費を押さえれば優秀なスキルとなるでしょう。
問題は、どうやってポイントを増やすですが、これは時間をかければそう難しいことではありません。
説明書を読んでわかったのですが、フリーダムなだけあって裏技が使えるのです。
スキルポイントの実や種が1ポイントで得られる。
一見、1ポイント消費して1ポイント得るなどバカですが、これを実らせる植木鉢を50ポイントで作ると、一月で50粒ほど実らせることができるのです。
それを手のひらに乗せられる瓶に入れて創造すると魔力50を消費して作ることができたりします。
まあ、ダメなときは違う方法を使うまで。要は創意工夫です。
「……生け贄にはしない。抵抗する力は授ける。ですが、生き残れるかは自分次第ってことですか……」
なんと言いましょうか、悪辣非道です。こんなのよく読まないとわからないでしょうが。読まずにいった人はお気の毒としか言えません。
良いスキル。良い場所を真っ先に選んだのはダンジョンがなんなのかを理解し、頭の回転が早い方が何人かいるようですが、中途半端な情報しか持たない方々は早々に詰むか相当苦労はするでしょうね。
「……食べなければ死ぬ。深い傷を負えば死ぬ。暑さ寒さがあり、なにより外には敵がいる。それらに対応してスキルや魔法を習得しなければならない。死ぬ要素しかないですね……」
ダンジョン核に命を移せば、空腹もないし暑さ寒さも関係ありませんが、それは防衛をしっかりさせないとすぐに詰みです。
そのための肉体強化のスキルや暑さ寒さの耐性スキルがありますし、後でも習得は可能です。ポイントを残していればですが。
1000ポイント、全てを使うことは危険です。不測の事態のために少なくとも100は残しておくのがベストでしょう。
「悩みますね」
シミュレーションしながら読んでましたが、やり直しはできません。ポイント返還は可能のようですが、七割しか戻って来ません。それはあまりにもアホです。慎重に選ばないとです。
「……あ、あの……」
シミュレーションにシミュレーションを重ねていると、横から誰かに声をかけられました。と言うか、かけることが出来たんですね。全然思いつきませんでした。
「あ、はい。なんでしょうか?」
そこにいたのは見事な金髪のモデルさんかと思われる二十歳半の女性でした。
「レオトニー・エバーソンと言います」
どうやら握手をする文化の方のようで右手を出して来ました。
お辞儀の国の者としてはちょっと恥ずかしいですが、挨拶をされたら返すのが礼儀。右手を握りました。
「初めまして。わたし、ハシバシと申します。お見知り置きを」
と言うか、外国の方と普通に会話してますね。あ、α世界で会話できるスキルも習得しておかないと不味いです。言葉の壁は結構高いですからね。
「それで、なにかご用でしょうか?」
「お願いします! わたしにアドレスください!」
は? アドレス?
「あ、いえ、間違いました。アドバイスです! わたし、ダンジョンのことなにもわからないし、なにを取ればいいかわからないし、周りはどんどんいなくなるし、もう──」
と、感情を爆発させたと思ったら両手で顔を覆い、泣き出してしまいました。
適当に慰めることはできますが、慰めたところでなにも解決はしません。わたしたちは、引き返せない場所にいて、進む一択しかありません。ここでなにもしないのならα世界にいって早々に死ぬだけです。
そんな方のために費やす時間はありません。それこそアドバイスしてくれる方がいるのなら、わたしは足をなめてでも教えを乞いますよ。
とは言え、別の視点から見ればこれはチャンス。将来の布石になるかもしれません。
「……わたしもダンジョンマスターなど知ったのは今日です。なにが正しくてなにが間違っているかなどわかりません。全てが憶測。勘です。それでも構わないと言うなら顔を上げてください。顔を上げられないのならそのままでいてください。わたしも自分の未来を考えなければならないのですから」
この方にやる気がないのならチャンスにも布石にもならない。時間の無駄。さようなら~です。
「──すみません! 見捨てないでください!」
すがりついてくるレオトニー嬢。そう言うの止めてください。まるでわたしがクズ野郎ではないですか……。
「レオトニー嬢。勘違いしないでもらいたい。わたしにできることはアドバイスだけです。仮に助けることができるならまず自分を助けてますよ。これが夢でなければ我々はα世界で殺し合いをするんです。α世界に住む者やここにいたダンジョンマスターともね」
説明書には敵のダンジョンを滅ぼすと、それまで貯めていたポイントやスキルを奪えることが出来ると書いてありました。
それはもう自分以外全て敵状態。孤立無援で孤軍奮闘です。詰んでる光景しか想像出来ません。
「……ごめんなさい……」
「よろしいです。まあ、座りなさい」
わたしは座って説明したい派なんです。
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