ダンジョンマスターのハシバシさん
タカハシあん
第01話 ダンジョンマスターになってもらいます
「みなさんにはダンジョンマスターになってもらいます」
そんなことを突然言われたら大抵の者は「はぁ?」となるでしょう。
ここに集められた者たちの何十人かはそんな反応を見せてます。
わたしの場合は「ダンジョンマスターとはなんぞや?」でした。
えーと。ここはどこでしょうか? なにやらすり鉢状の闘技場のようなところで、たくさんの人はいるとわかるのに、はっきりと認識できない場所なんです。
それに、意識や肉体が希薄で、ここにいるのにいない感じがします。いったいなんなんでしょう?
「戸惑うのも当然。説明を求めるのも当然。あなた方には非はない。すべてはわたしの独断。わたしの勝手。罵られて当然のことをしています」
どうやらあの方が元凶さんのようです。
見た目、イギリス紳士のような格好をした年配の男性ですね。
と言うか、しゃがんでもいいだろうか。わたしは、話は座って聞きたい派なんで。
うん? お、しゃがめるじゃないか。では、どっこらしょっと。
ふ~。しかし、なぜわたしはここにいるんでしょう? 確か風呂につかりながら晩酌してたはずなんですが……。
「みなさんには世界の、いや、君たちにしたら異世界ですね。名はありませんので便宜上α世界と呼びましょう。君たちにはα世界の礎となってもらいます。ですが、それは生け贄になれと言うことではありません。役目を果たすための力を持っていただきます」
ん? おっ、なんか出た!?
目の前にタブレットらしきものが現れました。
「所謂ダンジョンマスターの手引き書であり説明書です。使い方は簡単。念じれば必要な項目や説明が出ます。よくお読みください」
念じる、ですか。出ろ。お、出た!
なになに。あなたも今日からダンジョンマスター。勇気と知恵で生き残ろう……ですか。胡散臭いですね……。
ダンジョンマスターとは迷宮の
ん~。あれですか? 所謂陣取り合戦ですかね。余りそう言うの得意じゃないんですが……。
「みなさんたちにはボーナスとして1000ポイントを与えます。それで自分が必要と思うスキル、魔法、武具、道具、防衛用魔獣、食糧を選んでください。ちなみにそれらは早いもの勝ちですよ」
早いもの勝ちですか。えげつないですね。お、スキルポイント取得倍増スキルですか。これはあった……あれ? 消えてしまいましたよ?
「取得したスキルは一覧から消えます。ゆっくりしていると重要なものは他人に取られてしまいますのでお早めに」
早押しとかも苦手なんですが、まあ、残り物には福があるがわたしの信条。ゆっくり選びますかね。
しかし、いったいいくつあるんですか。百、いや、軽く万はある感じです。
一日一回金貨を生み出せるスキル、取得ポイント2。毒耐性スキル、取得ポイント1。火魔法レベル1、取得ポイント3。 鉄の剣、取得ポイント2。回復薬10セット、取得ポイント2。まな板×10、取得ポイント1。トマトMサイズ一箱、取得ポイント1。ゴブリン一匹、取得ポイント1。グリフォン一匹、取得ポイント600。光の鎧、取得ポイント10000。天空城、取得……一億、ですか。
もう頭が痛くなってきました……。
ダンジョンマスターのことをまだ少ししか理解してない自分には、なにを取得すればいいかさっぱりわかりません。どうしろと言うんでしょうね?
「そうそう。言い忘れてましたが、ダンジョンの立地もポイントで得られますのでしっかり選んでください」
今度は立地ですか。良いとか悪いとかあるんですか?
どんな場所? と思ったらタブレットのようなものの画面に地球儀──いや、α義か? まあ、地球儀の方が語呂がよいので地球儀でいいでしょう。
異世界も球形をしてるんですね。陸が六に海が三。残りは浮遊大陸でしょうな。いくつか浮いてます。まさに異世界ですね。
地球儀に何百と言う光点があるところを見ると、そこにダンジョンを造れと言うことでしょう。ん? 消えた。誰かが選んだのでしょうか?
なに気に消えた光点を指で突っつくと、少し拡大されました。
……グーグ〇アース……?
愛用しているタブレットを操るように拡大していくと、そこは広大な森の中だった。
森の中にダンジョンですか。そんなところに造って拡大とかできるのでしょうか? 獣とか狩ってもポイントが集まる、か?
まるでその疑問に答えるかのように画面に可能と言う文字が出た。ただし、ダンジョン外で、ダンジョンマスター本人が狩らないとポイントは入らないようだ。
それに、ダンジョン外で狩ってもポイントは少なく、ゴブリンは1ポイント。狼は2ポイント。飛竜でも200ポイントらしい。
ダンジョン内だとゴブリンは10ポイント。狼は40ポイント。飛竜は10000ポイントでした。
……どう言う基準なんでしょうか。謎です……?
まあ、ポイント取得はあとで考えるとして、ダンジョンを造る例とか過去の資料、出来ればイメージビデオ的なものはないんでしょうか?
と思ったらありました。説明ビデオ。変な方向に優秀ですね、これ。
ま、まあ、なんでもいいです。ダンジョンなるものがどんなものか学びましょう。
何本か観てなんとなくダンジョンがどう言ったものかわかりました。
結論を言うと、自分には無理。地下三階もいかない間には侵入者に殺されます。
なるほど。それでわかりました。森の中を選んだ方は、ダンジョンの成長を優先したのですね。ダンジョンの場所を決めてから一年の準備期間が与えられるようで、その間にダンジョンの拡張や罠の設置と言った戦略。魔物を用意して配置する戦術。なかなか頭のよい方のようです。
選ぶ場所の重要性を理解し、地球儀を拡大して探そうとしたら、光点が少なくなっていることに気がついた。
え? もう選んでいった人がいるんですか!?
と言うか、周りにいた人が減ってます。はっきりとはわかりませんが何百人といた感じだったのですが……。
意識を集中して、周りに目を向ける。
なんと言うことでしょう。すり鉢状の闘技場にはまばらにしか人が……人じゃないものもいますね。なんですかいったい!?
狼人間やら鬼やら悪魔やら天使、小さい人や大きい人、耳の尖った人、ぶよぶよしたなにか、黒い霧のようななにか、自分と同じ人は数えるほどしかいません。
夢。これは夢ですね。アハハ。我ながら変な夢を見るもんです。
「残念ながら夢ではありません。現実です。なので、よく自覚し、よく考えてポイントを使い、自分に適した場所を選んでください。拒否は死。まあ、α世界にいっても死は避けられませんので真剣に取り組んだ方がよろしいですよ」
どうやらマジのようです。マジでやらないとマジで死んでしまうようです。マジかっ!?
とは言え、わたしに生き残れる自信なんてありません。ありませんが、死ぬのは嫌です。マジ嫌です。
ここはまず落ち着きましょう。焦りは禁物です。あの方がなんであるかはわかりませんが、よく考えていいそうなので納得がいくまで考えましょう。時間指定はしてないのですから。
「フフ。ええ、その通りです。ここは時間と言う概念はありません。ですが、拒否したら即、死です。考えることを止めない方が賢いですよ。止めた方が三十六名がお亡くなりになりましたから」
それが少ないのか多いのかはわかりませんが、わたしたちの選択は一択だけ。ダンジョンマスターになるしかないようです。
ならば、考えましょう。死なないために……。
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