4 , 5 & 6 or 7
Nina 様作
───お洒落な作風と、裏社会ではあるが、
明るく活き活きとした登場人物が魅力
【全ての始まりは】
物語は、主人公が初めて日本に降りたったところから始まり、その経緯が語られる。あるマフィアの幹部がファミリーを抜けようし、殺害された一年後、主人公の元へさる宛先不明な一通の手紙が届く。中には謎の暗号と思えるものが記載されていたのだった。主人公を突き動かした、人物とは一体…?彼を待ち受けているものとは?
謎が散りばめられており、詳しく説明されている部分と謎の部分があるため、読み手は”一体何が起きるのだろう?”と、ハラハラドキドキする。というのも、冒頭の”産まれたばかり”の謎について、今後明かされていくと考えられるからだ。
【お洒落な作風】
お洒落さを感じるのは、区切り方が独特だからだろうと思われる。(ページの切り方)余韻を残したまま、次のページへ行く。この区切り方は、誰にでも出来るものではない。大抵の人が、文字数で区切るか、章で区切るためこのような余韻を持たせることはとても難しい。仮に真似をしようとしても、感性のなせる業なので、真似することは出来ないであろう。
【彼に待ち受けるもの】
不思議なバランスの世界観。一般人にとっては非現実世界を主体として物語は構築されているのだが、主人公は現実主義。ちょっと変わった仕事をさせられることになるのだが、その内容が”ええッ!”と思うようなことである。しかしながら”金を稼がなければ生きてはいけない”という彼の現実的な言葉から、物語はリアリティを帯び始める。彼らにとって、そこは確実に、今生きている現実世界なのだ。
【リアリティの在り方】
彼が日本人と似ているが、日本は初めてであるという事に対して、どうリアリティを持たせていくのか。そこは、物語の上で、大切なところでもある。これについてはとてもユニークだ。日本人が日本を舞台に物語を書くとき、文化の違いを常に念頭にいれて書くというのは難しい。言われてみれば、日本独特だ、と気づかされれることの方が多いのではないだろうか?
靴をいつ脱ぐのか?
という主人公と登場人物とのやり取りは、かなり面白い。それはいくら何でも脱ぐだろう?
と思えることが訊かれており、その感覚が日本人であると気づかされる。通常当たり前だと思いながら暮らしていることは、外から見れば質問に値すること、という事だ。
【分岐の仕方が面白い】
物語は、一定方向に時間が進むか、回想へ向かうかど一人の人物を追い、複数視点の場合は章が変わるなど区切りをつけるものが多い中
この作品は、物語の中で、別人物のルートへと切り替わる。
それはまるで、迷路をいったん戻り、別の道に向かうような滑らかさがある。
区切る場合の効果とは、完全に頭を切り替えることが出来るが、区切らない場合は同じ温度で読み進めることができる。
お洒落さと滑らかさが、非常にフィットしている。
登場人物それぞれも、かなり個性的。主人公は信頼を大切にする現実主義の印象が強いが、その周りには、強引で相手のことなどお構いなしな者もいれば
流されて、仕方なく従うといった印象のものもいる。この物語は、読む前に”群像劇である”ということを窺っているが、たくさんの登場人物がいるにもかかわらず、
これだけ、それぞれを個性的にかき分けが出来るのが凄い。
タイトルにある通り、裏社会で繰り広げられている物語だ。
イメージでは血なまぐさい、ちょっと怖いお話なのかと思っていたが、そんなことは全くない。
それどころか、個々がとても活き活きとし、まるでそこにいるかのような錯覚すら覚える。
裏社会と言っても、職の内容であって、一応一般市民となるようだが。
まだ読了前ではあるが、語りつくすことが出来ない物語である。
コミカルな部分もあり、あなたも読み始めてしまえば、きっと虜になるであろう。
主人公が日本でどんな暮らしや、体験をしているのか。
どんな人たちに出逢い、何を思うのか。
あなたも、彼らの生活を覗いて見ませんか?
ぜひ、お手に取られてみてくださいね。おススメです。
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