向日葵とりんご飴
硯 羽未 様作
───タイトルの意味を知った時、愛の深さを再確認する
【飛んでもない奴だなという印象は】
物語は、冒頭部分から吹き出すやり取りに、一体どんな話なんだろうか?と興味が湧く所から始まる。主人公であるギターボーカルの彼は、一見チャラそうで、軽そう。しかし、誰とでも気軽に話せるような、屈託のない人物に見える。そんな彼が好きになった相手は、自分とは正反対ともいえる性格の相手だった。どんなに求愛しても手に入らない相手。本気なのに信じて貰えない理由は、なかなかわからないまま。しかし、諦められない主人公は、彼と祭りにいく約束を取り付けるのだった。
【酔いから始まる二人の行く末】
この物語は、一見軽そうな主人公を、好きだけれど信じられないから拒むという印象で始まる。そのため、初めのうちはベースの彼が不憫に見える。しかし、何故主人公がこんな振る舞いであるのかに気づいた時、ベースの彼同様、主人公に対する見方は180度かわる。自分から見た自分と、他人から見た自分が合致しないことが、いまいち理解できない主人公。彼は、単に自分に素直なだけで、チャラいというわけではないのだ。見た目がどれほど印象を決めてしまうのかという事を、読者に気づかせてくれる物語でもある。そのため、読者は自分の日常を思い浮かべ、似た体験を思い浮かべることとなるため、主人公の境遇を理解しやすい。
【好きだと気づくと同時に知る、彼の闇】
いつも明るく振舞っている主人公だが、本当は底なし沼のような寂しさを抱えていた。今まで、同性を好きになること、恋愛として興味を持つことのなかった主人公の心の扉を開けたのが、まさしく彼が想いを寄せる、ベースの彼だったのだ。主人公は、彼ならば自分を救ってくれると、本能的に感じたのかもしれない。この物語は、主人公の抱えるものを知った時、純愛であることに気づく。
【分かたれる道】
主人公の目指したかったモノ。この物語は、恋愛と夢という二本柱で構築されている。しっかりとどちらにもスポットが当たっている上、現実的な厳しさも備えている。簡単にめでたしとしないからこそ、リアリティを感じ、主人公の周りの人物の考え方が浮き彫りになり、応援したいという気持ちになる。そして、物語に厚みをだしているのだ。人生には簡単に思い通りにならないことがあり、それでも諦めずに頑張っていれば、いつかは叶うのだというメッセージも読み取れるのだ。
一見、純愛に見えないのに、気づけば「やだ純愛じゃないの!」ときゅんきゅんしてしまう物語です。
自分でもこういうことあるよな、わかると共感できる部分も多い作品です。
是非お手に取られてみてはいかがでしょうか?
おススメです。
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