さよならなんて言わせないで



朝比ゆいら 様作


───いろんな工夫と発想で描かれる、主人公の心理動きが見どころな作品


【意外な展開に面白さがある】


まず、目がいくのは章タイトル。

まるで爆弾を抱えているかのようなカウントダウン方式なのが面白い。


恐らく、わたしのように章タイトルを眺めながら、まずどんな話なのだろうかと想像する方は少なくないだろう。カップリングから想像する図式としては、いくら浮気をするなと言っても治らない相手に、最終的にはブチ切れるといった展開が予想され、確かにそれを思わせるような冒頭が見受けられる。


しかし、ここからが作者の腕の見せ所と言ったろころか。

予想を遥かに裏切る展開が待っている。


【仮にどんなに変わったとしても、人の芯は変わらない】


狙ってそうしているのだろうか?

主人公の相手(恋人)は、あくまでも個人的な印象であるが”かなりのダメ男”。

こんなの一緒に居たところで幸せにはなれそうにないと思ってしまう。

浮気症は基本的に治りません。専門家も、病気といってたので、そうなんだろうなと思う。


ただ”浮気症”と”浮気をしてしまう”というのは、これも個人的な見解でしかないが似ているようで違う。

浮気症というのは、根本的に理性が効かない状態の人で、浮気をしてしまうというのは、理性と本能の狭間で揺れ動く気持ちがある。


その理性にも様々なパターンがあり、仕返しとしてやる。押しに弱く、嫌なのに流されてしまうなど状況によるものもあるだろう。簡単に言えば、罪の意識がないのが浮気症、罪の意識があるのが浮気をしてしまうということだと思われる。


前置きが長くなったが、この浮気の心理がこの作品には関わってくる。

する方、される方が一方的な立場ではないところが、この作品の最大の魅力だと思う。


【一視点だからこその、心の揺れ動きに注目】


相手の気持ちは言動により想像できる範疇にある。それほど丁寧に描かれているといえる。

いい加減にしろ!と言いたくなる場面もあることから、かなり主人公に感情移入できる作品である。その中で、主人公が相反する感情に振り回され、自分が自分で分からなくなるという場面もあり、人の心理としてリアリティを感じる。


かなり読み手が、喜怒哀楽を感じる物語です。

是非お手に取られてみてはいかがでしょうか?

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