潮風のアルペジオ
水那田ねこ 様作
───人間関係がゆっくりと丁寧に描かれていく作品
【登場人物が多いが、読み進めていくうちに意味が分かってくる】
登場人物の役割が後々分かってくるスタイルの物語だと感じた。
主人公の一視点な為、感情移入がし易く、場面によっては誰もが一度は体験したことのある”なんで余計なことを”というハラハラする展開もある。
一視点であるということがとても効果的に物語に作用しており、片側だけでは分かり得ない相手の気持ちについて想像したり、悶々としたり、傷ついたりと恋愛物語では必須となる心情についてとても丁寧に描かれている。
【主人公を取り巻く環境】
現代にありがちな(本来あってはいけない)生活環境は、ニュースなどから想像し想いを馳せることもあるだろう。子供というだけで、理不尽に振り回され、自分ではどうにもならない運命に翻弄される。
主人公もまた、自分ではどうにもならない大人たちの身勝手な行動により、まだ学生でありながら過酷な生活環境を強いられる。ただ、彼には救いがあった。
恐らく、その救いこそがこれから辿るであろう運命の一端でもあるように感じる。
この生活環境は、主人公の心理に深く作用しており、周りから不幸に見えること。
だがそれに対し、必死で生きている主人公が周りから憐みの目で見られることを良しとはせず、対等でありたいと願う気持ちに凄く共感が持てる。
【恋愛とは対等であるからこそできるもの】
この物語では、先輩と後輩。
境遇の違いによる価値観。
不平等であるがための溝というものにも、スポットがあてられているように感じた。
それは、裏を返せば対等であり、同じ目線であって初めて自分の気持ちを相手に伝えることが出来るという事のように思う。負い目があれば本音では接することが難しいからだ。
主人公の境遇や恋愛を通し、いろんなことを考えさせられる作品である。
とてもメッセージ性が高いと感じた。
苦境の中でも健気に生きる。
一生懸命自分と向き合って、周りに振り回されながらも、しっかりと自分を持っている主人公にはとても好感が持てます。この先どんな風に展開されていくのかとても楽しみです。
あなたも是非、お手に取られてみてはいかがでしょうか?
おススメです。
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