第九話 ギルド登録とパーティ
慌ててギルド証を呈示する。
「それではさっそく登録します。
クラスはまだ決まっていませんよね?」
「あ、はい」
「では、クラスチェンジを終えたらまた改めて来てください。
今回はギルド証を身分証として登録いたします」
首輪の時にも行ったのと同じような感じで、
ギルド証の小さなプレート部分に指を添える。
何かが吸い取られたような感触があったあとに、
では預かります、と受付さんがギルド証を手に取った。
何かの装置?のようなものにギルド証を設置し、
「お名前を言って下さい」
「セーラです」
名前を伝えると、
装置、というかギルド証がじわっと光った。
私の声で何かを設定なり入力なりしたのかな?
「・・・はい、登録完了しました」
とギルド証を手渡される。
はじめに渡された時と何も変わってない・・・
と思ったら、裏側に名前が記載されていた。
「これで、このギルド証を提示すれば
セーラさんの身分の証明になります」
「ありがとうございます。
なんか登録するのが妙に長かったなぁ・・・」
登録しようとしたらミュゼのなでなで事件が勃発して
なんか並びはじめまでするし。
変な貴族には目を付けられるし。
「えっとその、ほんとうにごめんなさい」
ぺこりと受付さんが頭を下げる。
慌てて手を振りながら頭を起こさせる。
「いいんです!」
「あぁ、そうだついでだ。
この嬢ちゃんたちはちょいとワケありでな。
どうせなら専属として受付してもらえたほうがいいだろうから
お前、頼んだ」
「え。ええええ!?わ、私がですか!?」
どこからともなくひょっこり現れたギルドマスターさんが唐突になんか言い始める。
驚きながらさらに内容にも驚く。いや普通にびっくりする。
・・・で、えーと、つまり?
何かあった時はこの人経由にすればいいってことかな?
セツナ・・・ステラが勇者の器アリな以上、
そういう人が居てくれると色々助かるのは確かだけど。
「えっとその、無理にというわけにも・・・」
「いえ、あの、うー・・・」
明らかにテンパっている。
まぁ、私たちが一流のハンターとか冒険者とかならともかく、
召喚されたばかりのぺーぺーだから、やる気にもなれないだろうし。
「お、お断りしていいんですよ!?」
ワケありと聞かれて喜んで受付する人はいないだろうし。
・・・私はわけあり物件か!
「わ、わかりました。
私はシーナと申しますので、どうぞ宜しくお願い致します」
ぺこりと女性が頭を下げる。
え。いいの???
こちらとしてもありがたい事だと思うので思わず深くお礼をぺこり。
しかし、このままだと厄介事を引き受けただけになって、
この人が可哀想だし・・・、よし。
こっそり私はミュゼに合図を送ると、
ミュゼがぴょいんと受付の机に飛び降り、
机の上にあるシーナさんの手元に体を摺り寄せた。
「ひゃ、わ・・・」
突然のミュゼの行為に驚いたものの、
「え、えっと・・・」
「また今度撫でてあげてください。
ミュゼもシーナさんなら大丈夫みたいなので」
「あ、ありがとうございます!!」
あ。凄くうれしそう・・・だけど、
さっきみたいな強烈な迫力はもう感じない。
さっきのそれを見てドン引きした私とミュゼに気付いていたのか、
或いは先ほどの出来事で自分もこうなっていたのか、
と気付いて自らを律しているのか。
「それじゃあ、私の登録もお願いします」
ステラがギルド証をシーナさんに手渡す。
「では・・・」
と、先ほどと同じ方法で、登録を完了する。
もちろん登録した名前は偽名であるステラのほうだ。
ごたごたが終わったことを確認したギルドマスターさんは、
いつのまにか居なくなっていた。
「さて、ここまでで何かご質問はありますか?」
「えーと・・・」
まずはこれからどうするべきか。
それを相談してみた。
「そうですね・・・、
ひとまず各ギルドを巡ってみてはいかがでしょう?」
と説明されながら、この城下の簡単な地図と受け取った。
ギルドの所在地や主な施設が書かれている。
「それと、ハンター稼業や冒険者稼業を行なうのでしたら、
パーティ登録をお勧めいたしますよ」
「パーティ?」
そういえば、勇者もパーティを組ませるようなことを言ってたような。
「はい。パーティにはランク付けが成されます。
こなした依頼や業績に応じてランクが上がっていきますので、
上位ランカーのパーティほど 難易度は高くとも
報酬のいい依頼を受けることが出来るようになります」
説明によると、
パーティを組んだ場合、パーティ単位でランク付けが成される。
とうぜん初めはランク外。いわゆる無級。
そのあと、10級から1級までのランクがあり、
8級にまでなればいっぱし、5級にもなれば上位クラスだそうだ。
ちなみに、3級以上は現在存在していないそうで、
過去にはギルドマスターさんの所属していたパーティが3級だったそうだ。
既に全員引退して解散しているようだけど。
ちなみに、パーティは最大5人で組むというのが基本らしい。
別にそれ以上で組むこと自体は可能なのだけど、
この世界にはダンジョンが存在し、
そこのボスに挑める最大人数が5人までというものがあるそうだ。
ダンジョンと言われて、はじめてこの世界に来た時の
人工ダンジョンを思い出したけど、
ああいうのではなく、自然発生?したダンジョンはそういうものらしい。
その為、自然と最大5人でパーティを組むのが常識となったそうだ。
そういえば勇者パーティもステラ入れたら5人になるんだっけ。
偶然かな?
「どうしますか?」
「と言われても・・・」
私とステラで二人。
パーティ組むこと自体は何の問題もないけど。
「組もうか?」
「セーラがいいなら私は組みたいかな」
「わかった。
じゃあ、お願いできますか?」
「はい、ではパーティ名を登録するので、
パーティ名を決めてもらってもいいですか?」
・・・
「・・・パーティ名?」
「はい」
「・・・」
パーティ名・・・
ちらっとステラを見る。
あからさまにステラが目をそらす。
うん、私もなんにも思いつかない。
「・・・あの、パーティ名ないとダメですか?」
「そうですね。無いと登録ができないので。
一応仮の名前を付けた後に、あとで名称変更自体は可能ですが」
「そ、それじゃあ、
ステラとセーラを仮のパーティ名にしておいてください」
「えっ。セーラとステラじゃないの?」
「えだって。ステラのほうがよくない?」
「ここまで一緒に引っ張ってくれたのはセーラだし」
「だけど」
となんか二人で言い始めてしまったため、
受付のシーナさんが困り顔になりながら、
「で、でしたら 仮パーティ1 という名前で登録しておきますね」
と私とステラのギルド証を受け取って登録した。
あ。そういう名前でもよかったんだ。
・・・あ。
ふと、先ほどのシーナさんの言葉を思い出す。
そういえばこのパーティ、
ハンター稼業や冒険者稼業をするなら、って言ってなかったっけ。
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