神為らぬ者――余人の辿り着けぬ高みへ至る者たち

『神為らぬ者』は、この世界において特別な存在だ。

ある人は言う。我らの救い主だと。

ある人は笑う。新しいオモチャをくれたゲームメイカーだと。

ある組織は断ずる。テロリストだと。

そのいずれも間違っており、あるいは合っている。


最初は、人々に広く救いを届ける科学者の集まりだった。特定の国家や主義主張に依らず、ただ『人々を救う』ことを第一義として資金をかき集め、研究開発に明け暮れていた。

その純粋な思想がなぜ捻じくれたのか、どういう思想に至ったのかを知るものはいない。案外、救っても救っても絶えず救いを求める浅ましい人類に絶望して、世直しのために動いたのかもしれないし、単純に興味関心を突き詰めた果てに人類改造に乗り出しただけかもしれない。

人々が観測できたのは、宣言を行なう『神為らぬ者』か、それ以前の純粋な科学者集団の二極だ。その過程を想像するのはそう簡単ではないだろう。


ただ、一つわかることがある。彼らは解決を放棄した。自身の成果を声高に叫びながら、その成果をぶち撒けるだけぶち撒けて行方を眩ませたのだ。その成果が誰かの救いになれば救い主だし、悦楽になればゲームメイカー。そして当然、その姿は世界を混乱に陥れるテロリストに相違ない。彼らが徹頭徹尾コントロールしていれば、評価はこれほど割れることもなかっただろうに。


あるいは、彼らは自分たちの言葉に反して、神になったつもりなのだろうか。

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