APC――災禍を律し鎮めんとする者たち

前段の『起源者』と『神為らぬ者』でも出たが、APCとは正式名称を覚醒遺伝対策委員会Atavism Project Committeeという。元々は『覚醒遺伝』を後天性の人為的疾患と考えた医学者の集まりであり、その後に様々な領域の学者や技術者を巻き込みながら大きくなり、最終的に国連の安全保障理事会の補助機関として改組された経緯を持つ。

補助機関としてはやや独立した動きを見せることが多く、主な責務として前段の2つの調査研究、『伝承者』の監視や『精霊』の保護がある。


『精霊』も『神為らぬ者』がきっかけで生まれた存在だが、『伝承者』とは趣を異にする。というのも、伝承者は自らの意志で神格や英雄の一側面という稀少な機能を振るうが、精霊は逆に『伝承者被害の修復機能』という機能を全員が持ち、それを無意識下で実施するからだ。伝承者と同じく人間に押し付けられた機能だが、こうも違うのは何故か。それもAPCの研究対象である。


この組織の最終目標は、『伝承者の撲滅』だ。

それは抹殺という意味ではなく、すべての伝承者を生きながらに凡人へと戻すことを示す。

それは可能なのかと、疑義を投げかけるものもいるだろう。しかしこれは、彼らにとって万難を排して可能にしなければならないこと。絶対的な使命とさえ呼べるものなのだ。

だがもし、彼らの認識外に伝承者がいたとしたら、それは不可能だろうと思う。まぁ、例えば宇宙を揺蕩う伝承者なんていないも同然なのだから、考えなくてもいいことだろうが。

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