始原の十二―原初の約定―

N.C

原初回帰へと至るために

―――なぜ、かつての人々は、現代の我々が理解し難いような高度な建設ができたのか。

―――なぜ、かつての地層から、オーパーツと呼ばれるものが出土するのか。

―――なぜ、かつての彼らは厳しい環境に適応できたのか。

それは、我らがかつて完璧であったからだ。


 かつての我々は、ある思想集団が仮定するところの『原初人類』だった。手足を完璧に操って精緻な手工業を行ない、あらゆる戦技や戦具を使いこなし、あらゆる環境に適応し、今のすべてを知っていた。

 そのような超人などいるわけないと、一笑に付すだろう。だが彼らは確かに存在し、我々は、その系譜を受け継ぐはずだったのだ。

 だがそれは、『紡績回路』という選ばれたもののみが開花させた身体機能と、それを普遍のものにしようとして失敗し、その失態を歴史の闇に葬り去った群体が断ち切ってしまった。


 その紡績回路は今の人類誰もが持つ身体機能であり、物質を観測して数値化し、その数値を制御することで現象を引き起こせる。かつては異端として裁かれた才能だったが、全人類に適用された今それは凡庸に落ちた。世界も、それを当然とし、紡績回路を十二分に稼働させたときに生まれる『異能』を求める競争社会となった。

 これは、進化なのかもしれない。あるいは適応とも言えるだろう。

 それを、今はただ『世界の暗部』と呼ばれる群体は認めはしなかった。これは退化である。そう断じて、『原初回帰』を高らかに謳い上げた。


 原初回帰とはすなわち、『原初人類』が持っていた完璧を取り戻すこと。

 だが、今の人類のほとんどはその完璧さを失っている。

 そう、ほとんどである。ごく一部、『原初人類』の完璧さを部分的に継承した十二の血族を『暗部』は見出していた。

―――御剣みつるぎ

―――戎具じゅうぐ

―――戦場いくさば

―――シュティレStille

―――レーベンLeben

―――作為さなり

―――炎上ひかみ

―――流水ながみ

―――オブテインobtain

―――天地あまつち

―――ミリアーディмириады

―――弓懸ゆがけ

 これらの血族以外を滅ぼし、結果として原初に回帰する。

 それが『暗部』が計画する―――ジャガナート計画だ。

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