奇病に次ぐ不治の病
「ごめんね、実は俺ピザ恐怖症なんだよね。」
今日も断られた。もう六度目になろうか。でもそういう病気ならしょうがないよね。
私は自分の席に戻ってノートを開く。いままで彼に断られた”病気”を書いていっているカルテだ。
今日は”ピザ恐怖症”、昨日は”アイスクリームシンドローム”、おとといは”映画館性免疫疾患”。調べても出てこない病名だったけど、きっとかなりの難病で彼はそれに苦しんでいるに違いない。そう思った私は彼のために医者になろうと決めて勉強に励んでいる。いつか治してあげたい。
「ねえねえ、今日の帰りにクレープ食べて帰らない?」
クラスの別の子が教室を出てすぐの彼に話しかける。でも彼女は知らないらしい、彼が”クレープ性鉄分欠乏症”であることを。これは私と彼だけが知っていて-
「いいよ、行こうよ。」
あれ?治ったのかな?それならよかった。
「ついでに見たい映画もあるんだ。」
「この前映画なんとか症みたいなことを言って断ってたくせに。」
「あいつしつこいからこれで断るしかないんだよね。」
そういいながら彼は帰っていった。
私は医者になりたい。彼の舌を治してやるんだ。
第六回作者人狼作品集 ふたつかみふみ @squartatrice
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