第45話 - 新しい生活
クレアとレオ、ニャーゴはヘレネ村へ着いた
壊れた建物と骨だけが残っており、廃墟そのものだった
クレアがヘレネ村にいる事を聞きつけたギルやメリッサ、ゴードン、アイサも駆けつけ生活の基盤が整うまで手伝ってくれた
また、リスホルンから何人か移住してくれるそうだ
いくつか住居が復旧され、村人は10人ほどになり、無人となった森の魔女の館も復旧された
クレアとレオは夫婦となり、日々つつましく生活を送る
村が落ち着きを取り戻したころ、俺は魔女の家に住むことに決めた
ニャーゴはクレアに話しかける
「クレア、竜の魔石はまだ残ってるかい?」
「うん、どうしたの?」
「高価なものなのは承知しているんだけど、もらってもいいかな…」
「もちろん!竜を殺したのはニャーゴですっ」
ニャーゴとクレアは笑った
「ありがとう、俺は最後の変異をするよ」
「え?どうして?もう戦う事なんてないでしょ」
「うん…次の変異はまた猫になる。クレアと最初に冒険を始めたころの大きさらしい」
「そう、なんだ…人の姿は不便?」
「ううん、魔女の館を見たら懐かしくなっちゃって…俺はあそこで暮らすよ」
クレアは寂しそうな顔をした
「ごめんね、今までずっと一緒だったのに。急にレオが来たからかな…」
「まさか、クレアの幸せな顔を見ていると俺も幸せだよ」
「じゃあ、どうして…」
「森の魔女の膝の上が好きだったんだ。あそこで毎日ひなたぼっこして暮らしたい」
クレアはしばらくうつむいたまま黙り込んでいたが顔上げると明るい表情で話し出す
「そっか、遊びに行ってもいい?」
「もちろん、椅子に座って俺を撫でてくれればいい。それだけで幸せだから」
クレアは涙を流しながら何度もお礼を言った
俺は竜の魔石を受け取ると、魔女の館へ向かい、魔石を呑んで眠りについた
…
目が覚めると大きな木が見える
(バステト、いるかな)
…
バステトは大きな木の陰からゆっくりと出てきた
「なーん。」
(やぁ)
バステトは微笑み、話し出す
「なーん。君に最後の道を示す時が来た、古い友人との約束を果たす」
(深淵の猫)
バステトは小さく頷き、あぐらをかいた
「なーん。彼の者は今より深淵の猫として生きる、我が御名の祝福を授かるだろう」
大きな木から目が眩むほどの光が溢れ、目の前が真っ白になった
バステトが光の中で話しかける
「深淵の猫は竜にも匹敵する力を持つ猫だ、ひとつの尾を持ち、黒い毛に包まれている。最上級の闇魔術と上位の水魔術を使えるようになる。膝に乗りたくなったら、あたしを呼び出すといい。日の当たる場所で膝の上に乗せ、撫でてあげよう」
(ふふ、毎日呼び出すよ)
…
目が覚めると揺れる椅子の上にいた
体は小さくなり、肉球が懐かしい
空を見上げるととてもいい天気だ、美しい木漏れ日と心地よい風が魔女と過ごした幸せな思い出を蘇らせる
赤い実を取り、早速バステトを顕現させた
「なーん。早いじゃないか、そんなに寂しかったかい?」
「今日はいい天気だ、さっそく膝の上に乗せてくれ」
「ふふ、いいよ。さぁおいで」
ゴロゴロゴロゴロ…ゴロゴロゴロゴロ…
…
それから何年も経って、村は30人くらいの規模になりクレアとレオに子供が生まれた
魔女の館に遊びに来てはいたずらをして帰っていく
その後、何十年も何百年も、猫は魔女の館で女神と日向ぼっこをしながら過ごした
猫になった冒険家 どーん @DoneAnger
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