第42話 - 家庭教師

バルトゥスとの再会を喜び、何時間も話した

ひとしきり話した後、バルトゥスはレオの訓練に付き合ってくれている


クレアが俺の側に寄ってくる


「前世の記憶を持ってたなんて、言ってくれればよかったのに」

「言ったところで信じなかっただろ?それにクレアを育てるためでもあったんだ」

「ニャーゴがずっと気を使ってくれてたのは知ってるけど…なんか複雑」



クレアは不安そうな顔をしながら質問してくる


「ねぇ、これから何て呼べばいい?ヨルンのほうがいいかな」

「いや、ニャーゴでいいよ。クレアに貰った名前だから」


クレアは涙を浮かべて抱き着いた


「うぅ…ニャーゴのくせに…嬉しい事言うじゃない」

「ほんと、子猫の頃につけられたときはセンスないなって思ってた」


クレアは顔を上げ睨みつけた


「ちょっと!今いいところなんだから空気読みなさいよ!」

「クレアは底なしに元気な方がいいんだよ」

「なによー!」


クレアが疲れるまで追いかけっこして遊んだ



レオに合わせていくつかダンジョンを回ったり指名依頼に連れていくなどしながら半年が経った頃、レオはようやく6級に昇級した


レオはにこにこしながら戻ってくるとクレアに告げる


「クレアさん!6級に昇級しましたよ!!」

「お、やるねぇ。レオ君ひとつ大人になった、ここに来た頃は毎日敵の目の前で寝転んでいたのに」

「へへー、もうあの頃の僕とは一味も二味も違うんですよ。今なら竜だって倒して見せましょう!」


クレアは冷たい表情で突き放す


「それは無理でしょ、何言ってんの」


レオは少し言い過ぎたと反省しながら答えた


「う…竜は無理でもクレアさんに迫る敵の刃を受け止めるくらいはできますって!」

「ほんと強がりだけは1級なんだから…」

「すぐに追いついてレオがいないとダメだって思うようになりますよー」


クレアは大きなため息をつく


「はー…あたしがお婆ちゃんになる前にそうなってくれるといいわねー」


ニャーゴは微笑みながら二人のやり取りをながめていた


(クレアもなんだかんだ待ってる姿勢を見せるんだよな~)


「さ、お祝いしましょ。昇級おめでとう、今日はグリフォンのステーキを買ってきたの」

「ほんとですか!?やったぁ!僕も料理手伝います」



ある日クレアの元にエクセ家からの指名依頼が届いた


内容はオーヴィルと王都の中間にあるオーク集落の攻略

数日前から交易馬車が何度もオークに襲われ被害を受けているとのことだった

エクセ家の被害も大きく、ギルドの調べではここ半年で急激に数が増えているという話だ

おそらく交易馬車に女性が複数人乗っていたのだろう、今も捕まったまま繁殖に使われているに違いない


クレアは女性として強い憤りを感じ、攻略を引き受けた

ギルドの調査によると50を超える大軍になっているらしい、また規模が大きすぎて詳細な調査ができておらず、更に多い可能性もあると注意を促された

攻略にはエクセ家の騎士10人、エクセ家の指名依頼を受けた冒険者総勢30人も同行することになっていた、オークは5級程度の魔物だ今回はレオも参加できるだろう。数こそ少し劣るものの、同行している騎士なら一人でも2,3体は処理できる。圧倒的に優勢だ、囚われている女性も保護することが可能だろう


私設兵団を中心とした軍とも呼べる規模になり準備に多少時間がかかったがエクセ家の騎士が馬車5台と替えの馬を含めて50頭用意してくれた


王都を発ち、5日ほどでオーク集落の周辺へたどり着くと、街道から見える位置にちらほらとオークが見える

オーク達は森の奥に集落を築いており、崖の側に拠点を持っている。崖から街道までは数キロは森が続いており、街道付近までで来るのは異常だ


クレアは馬を降り、徒歩で向かう事を部隊に伝えた

陣形指揮は騎士隊長が代行することになり、クレアとニャーゴ、レオは前線へ出てオーク達を蹴散らす役目となる


大きく散開しながらオーク達を順次仕留め奥へ進んでいく

オークの集落が見える位置につき突入する作戦を騎士隊長と話していると悲鳴が聞こえた


「ウワァァァァ!」


奇襲を受けたようだ

他の場所へ散開していたオーク達がまとまって突撃してきた

数は20ほどだろうか、明らかに統率されている、力任せに攻めてくるオークではなかった。前線を作り、壁を作るように押し寄せてくる


ニャーゴが前線へ出向き、被害は最小限で済んだが冒険者たちが10名ほど離脱した

ギルドの報告では残り30体、こちらは騎士10名と冒険者20名

負傷者を後方に送り、攻略を続けることとなる



その後集落の中に入り、オーク達を殲滅した

冒険者たちは全員負傷し、残り騎士10名とクレア、ニャーゴ、レオのみとなる


集落の中に女性はいなかった。捜索を続けると崖に大きな洞窟があることが発見された

おそらく女性たちはここに囚われているのだろう、残りのオークの数は不明だが集落周辺に散らばっているであろうオークの斥候達が戻ってくる前に様子を見ることになった


洞窟は地下に向かって進んでおり、半径5メートルはある大きなものだった

しばらく進んでいると大きな怒号の音と共にオーク達が走ってくる


ニャーゴが緊張しつつ声を張る


「戦闘準備だ!誘いこまれた」

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