第41話 - その名はレオ
1週間後
ジョルノ伯爵邸客間
レオという弟子志願の男についてジョルノ伯に相談していた
ジョルノ伯は上機嫌な態度でクレアに話す
「クレア、弟子をとると聞いたぞ。私からは何も言う事はない、弟子の生活費もエクセ家で負担させてもらおう」
「ジョルノ伯まで…どうしてそんなに弟子を取る事を喜ばれるんですか?」
「ふむ、理由はある。エクセ家に所属している専属冒険者が弟子をとるとなれば後進育成という社会貢献をしていることになるんだ、エクセ家の名誉にもなるしクレアの名誉にもなる。断る理由がないだろう」
「え~、でも私断りたいんです。そんな柄じゃないですし…」
ジョルノ伯爵は驚いた顔でクレアに話す
「何を言う、聞けばギルドからの頼みで全滅寸前のパーティを救い、さらに生き残った少年を弟子にとり育成しているという美談は既に貴族たちの間でも有名な話になっているぞ」
(なんてこった…すでに弟子を育てていることになっている…)
「それにクレア、竜殺しの二つ名を嫌がっておっただろう」
「はい、それはそもそもニャーゴが…」
「今や聖母クレアなどという二つ名が囁かれておる、これを断れば竜殺しに戻るどころか孤児を見捨てたクレアなどという不名誉な二つ名になってしまうかもしれんぞ?」
ジョルノ伯爵はニヤニヤしながらクレアを見る
(くっ…相談した相手を間違った。ジョルノ伯は弟子を取らせたい派だったか…)
クレアは大きなため息をついた
「わかりました…レオを弟子として迎えますぅ」
周りの強い圧力にクレアは屈し、レオはめでたく弟子となる
…
レオはその後、クレアと同じ屋敷で生活することになった
よく家事をこなし、掃除や洗濯、料理などよく働く男だった
ただ、戦闘に関してはお世辞にも才能があるとは言えず。盾士という重装備にも関わらずよく吹き飛ばされる、完全に名前負けしている男の子だった
気持ちだけは一人前以上に強く、よくクレアの前に立っては敵の攻撃を防ぎつつも吹き飛ばされる毎日を送っている
そんな毎日に自信を無くし、レオは半べそでクレアに相談する
「クレアさん…俺…才能ないんですかね…」
「う~ん…そんなことはないと思うけど…一応仕事はできてるし。盾士に関しては私あんまりわからないんだよなぁ」
ニャーゴが口を挟む
「ヴィクトーに教えてもらうのはどう?」
「それは名案だね、ちょっと連絡してみようか」
ヴィクトーに連絡する準備をしているとジョルノ伯が尋ねてきた
「クレア、紹介したい人を連れてきた」
「はーい、どなたでしょう?」
ジョルノ伯が連れてきた男はバルトゥスだった
リスホルンでネズミ屋敷の依頼を手伝ってもらったニャーゴの正体を知る男だ
「バルトゥスさん!リスホルンのお屋敷でネズミ退治を手伝って頂いた時以来ですね」
「…」
バルトゥスは目を細め、誰だかわからない様子だ
「バルトゥスさん…覚えてはいらっしゃらないですか?」
バルトゥスの顔が明るくなり、懐かしそうに話し始めた
「あぁ…あの時のお嬢さんか!大きくなった。まだ10歳くらいの頃だったね」
「そうです!思い出して頂けたんですね!」
ジョルノ伯が口を挟む
「二人は面識があったのか」
「はい、リスホルンに住んでいるときに一度助けて頂いたんです」
「ほぉ、これはまた縁のある巡り合わせだな…レオ君のアドバイスを、と思って紹介しに来たんだ、積もる話もあるだろう。私はここで失礼するよ」
ジョルノ伯は去り、バルトゥスが話し始める
「懐かしいな、もう国家魔獣士になったって?」
「あ、はい。運よく…」
「謙遜しなくていい。運がいいだけでなれるものではないだろう、それに竜殺しの正体があの小さなお嬢さんだとは」
「竜を殺したのはニャーゴですっ」
「ハハ、ジョルノ伯の言う通り、竜殺しは気に入らないみたいだね」
しばらく昔話に花を咲かせ、レオの家庭教師も週1で1ヵ月ほど引き受けてくれることになった。話しが一区切りするころ、バルトゥスは質問する
「ところで、ヨルンはいないのか?」
「ニャーゴですか?リスホルンでも時々そう呼ばれてましたよね。なぜヨルンと呼ばれるのか不思議です」
「あぁ、昔同じパーティの旅士がヨルンという名前だったんだ。俺たちがまだ未熟な頃、竜に挑んで俺たちは皆川に落ち、ヨルンだけが取り残された事があってね」
「それがニャーゴなんですか?でもニャーゴは子猫の頃から知っていますけど…」
「竜に生きたまま食われると新しい命を授かる、そんな噂話があるのは知らないか?」
「いいえ、知りませんでした。それに今までそんな話してくれたことなんてないですよ…」
クレアはハッとした
「あ、でもずっと一緒にいるのに、私より詳しいことがよくあります…ちょっと呼んできますね」
ニャーゴはバルトゥスの前に姿を現した、バルトゥスは姿に驚き、声をかける
「こっちもでっかくなったな…喋れるのか?」
ニャーゴは懐かしそうにバルトゥスへ話しかける
「久しぶり、リスホルン以来だね」
「ヨルン、お前が竜に閃光爆弾を投げた時、俺たちはどんな状況だったっけ?」
「お前の盾にみんな隠れて竜のブレスを凌いでいたな」
バルトゥスは大きなため息をつくと、ニャーゴを見る
「リスホルンで一緒になった時は驚いたぞ」
「俺も猫になるとは思ってなかったからな…」
「行方が知れなくなってから噂を頼りに長い事探してたんだぞ」
「それは、悪かった。でも喋れるようになったのも最近なんだ」
「まぁ、いい。また再開できたこの巡り合わせを神に感謝しよう」
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