第40話 - 少年
冒険者ギルド
依頼を品定めしているクレア
「たまには5級くらいの簡単な依頼で息抜きしようかなぁ」
クレアが選んだのは5級依頼の薬草材料採集、”清流草”の採集
コレットに受諾の件を伝える
「あ、これ高級ポーションの材料ですね」
「そうそう、自然と薬草採集選んじゃうところが、あたしはまだまだ草娘なのかね~」
「? ともかくギルドとしては助かります、採集系の依頼は討伐依頼の副収入となる魔物素材の売却がないんでなかなか人気ないんですよね~」
「みんな命かけるのが好きだねぇ…」
「あはは、自分の実力に劣る討伐であればある程度簡単になっちゃいますからね…」
クレアは腕を組んで首を傾げた
「まぁそうだけど、何があるかわからないのにね」
「あ、そうだ。この依頼の途中で苦戦しているパーティがあったら助けてもらえませんか?」
「どういうこと?」
「7級の冒険者たちが丸二日帰って来てないんです。きっと何かあったんだと思います。もし苦戦していそうでしたら手伝って貰えませんか?追加で報酬もお渡しします」
「そのパーティの依頼って何?」
「ジャイアントスパイダーの糸を10束納品ですね」
7級の冒険者なら当日中に帰ってこれる距離の依頼のはず、丸二日帰っていない時点で生存は絶望的だろう、だがジャイアントスパイダーに苦戦するはずはない。コレットの言う通り何かあった可能性が高い
「なるほどぉ…わかった。途中で見つけたらギルドが心配してるって伝えるよ」
「ありがとうございます」
…
クレア達は王都を出て清流草が取れる山へ向かっていた
途中で冒険者たちがいないか確認しつつ向かっていたが目的地に着くまで見つけることはできなかった
清流草を採集後、冒険者たちをもう一度探すために来た道とは違う道を通っていたところ、冒険者たちを見つけた
冒険者たちは4人パーティで既に3人は死亡している状態だった、ジャイアントスパイダーの糸に絡めとられており、繭となりかなりしぼんでいる。既に体液を全て吸われミイラになっている事だろう。
もう一人は何故か生きており、繭にもされず木に糸で縛り付けられている
顔は呼吸ができる程度に糸でぐるぐる巻きにされており言葉は話すことができなさそうだった。明らかに異常な光景だ、盗賊など人間の仕業だろうか…
周りをよく観察しながら男に近づくクレア、周囲に気配がないことを確認し、男の顔の糸をナイフで切る
「ハァ、ハァ。あ、ありがとうございます」
「何があったの?」
クレアが男を拘束している糸を切ろうとした瞬間、上から魔物が降ってきた
間髪入れずにニャーゴが魔物を蹴り飛ばし、魔物は距離をとる
クレアとニャーゴは戦闘態勢を取った
ジャイアントスパイダーというには小さく、色も違う…
これはデーモンスパイダーだ、4級に相当する魔物で獲物を生かしたまま拘束し、囮に使って助けに来た仲間を襲う知恵がある
本来このあたりにいるはずのない魔物だ、7級では全滅するのも仕方なかった
クレアは速攻勝負を挑み、一撃で仕留め、生き残った男の子を助けた
男の子はレオと名乗った 16歳 7級盾士
「ありがとうございます」
「無事でよかったね。怪我はない?」
「はい、情けないことに手も足もでなかったもので…」
「あー、まぁ相手が4級じゃ仕方ないよ」
…
王都
少年を冒険者ギルドへ送り届け1週間が経とうという頃、クレアに会いたいという男が屋敷に客が来た
クレアは首をかしげながら今に案内してもらうと、レオがいた
「お久しぶりです!国家魔獣士、”竜殺し”のクレア様」
「竜を殺したのはニャーゴですっ」
初恋の失恋以来ニャーゴの冗談を真に受けて徹底して竜殺しの二つ名を否定するようになっていた
「え、と…あの…」
「あ、いいよそんな大げさじゃなくて…」
レオは申し訳なさそうに返答する
「す、すいません。緊張してしまって…」
「今日はどうしたの?」
「あの…俺を…弟子にしてください!」
「え?」
クレアは急な申し出で困惑したが、事情を聞くと以前、助けられたときに恩を感じ、ギルドへ聞いてここへやってきたそうだ
デーモンスパイダーを一撃で仕留める姿に惚れ、弟子になる事を決意したそうだ
あまりにも単純な理由だが16歳の少年なので夢を見るのも仕方ない
しかし弟子なんて取ったこともないのでサンドラを呼んで聞いてみた
「サンドラ、あたし弟子なんて取ったことないんだけどどうしたらいいかな?」
「クレア様は既に国家魔獣士となり竜を倒す偉業まで成し遂げられております。後進の育成を行ってもよい時期だと思います」
「えぇ~…でもジョルノ伯は許さないんじゃない?」
「特に問題ないと思います。エクセ家に国家魔獣士が滞在しているだけで大きな名誉と利益が得られるため、よほどエクセ家の名誉に傷がつくような事が無ければ全て容認されると思われます」
「う~ん…」
「では直接お伺いになってはいかがでしょうか?話しは私からしておきます」
クレアは困った顔で思った
(サンドラ、許可が欲しいんじゃなくて止めてほしいの…)
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