第38話 - 地竜
巣に近づくと、行軍を休止し、デルバートが説明を始める
「クレアはここにいる地竜の事を知っていますか?」
「や、地を這うトカゲに似た竜だって事くらいしか」
「その通りです、防御力、魔術耐性、生命力が非常に高く、さらに山ほどもある巨体を持ち、地形を変えるほどの土魔術を駆使します。そのうえ状態異常に対する耐性が非常に高く、固い鱗と巨体を持つ相手に対して肉弾戦を余儀なくされるため長期戦になるでしょう」
「弱点はあるの?」
「風魔術と巨体通りの動きの遅さですね、ただ、直線状に突進してくるときだけは非常に素早いので絶対に正面へ立たないでください」
「わかった」
…
竜の巣へ侵入するとダンジョンになっているようで、外から見た景色以上の広さだった
半径1kmに及ぶ広大な岩の地面に高く切り立った崖に囲まれたエリアの奥に地竜は丸くなって寝ている
「今は寝ているみたいですね、ここは仮の巣で本来の巣はもっと山の上にある洞窟の中です。ある程度傷をつければ帰っていくでしょう、無理をしないように戦ってください」
崖沿いに竜へ向かい、近寄るほどにそれが竜であることを思い知らせる大きさになっていく。魔物の中で一番大きいのはサイクロプスという巨人、身長10メートルにも及ぶ大きさを誇る、だが地竜は体高8メートル、体長は30メートル、幅は12メートルはあろう巨体だった
クレアがデルバートに話す
「サイクロプスが何十体も列をなしているみたい…」
「そうですね…いつ見ても戦慄を覚えます、地竜の尾にも注意してください。死角というものはありませんが、腹付近であればいくらかマシです」
クレアは頷き、一同が武器を構える
デルバートが素早さを増強する風魔術を使う
”疾駆”(ウィンドスライド)
足元から心地よい風が巡り、体が軽くなるのを感じる
魔力を感じた地竜が気づき、起き上がる
敵であることを認識すると突然土魔術を使った
一帯にある岩が浮き上がり、猛烈な勢いで降り注ぐ
バルトールが盾を構え全員が後ろに避難する
岩の雨が止むと、地竜は少し後ろに下がる
危機を察知したデルバートが叫ぶ
「突進だ!壁から離れろ!」
ザザザザザザザザザザザザザザ
ドゴォォォォォォン
崖から大きな岩が崩れ落ち、竜に降り注ぐ
間一髪、全員が退避できたが威力の高さに戦慄した
大きな岩が竜に直撃しているが何事も無かったかのように動いている
クレアは防護障壁と膂力増強を全員に展開し、全員で竜の腹に回り込んだ
竜の鱗は非常に硬く、魔力闘法を利用しているにも関わらず一切刃が通らない
腹の下にある鱗のない部分だけがかろうじて攻撃を受け付けた
何度も降り注ぐ竜の土魔術による岩をデルバートが風で遮りながら攻撃が続く
しばらく攻撃を続けていると、クレアが距離をとった瞬間、竜の尾がクレアを襲った
デルバートが気づき、クレアに迫る尾に盾を構えて体当たりをする
尾の勢いは止まり、デルバートは吹き飛ばされた
地面を滑るように転がり、ようやく止まる
「ぐ…く…」
デルバートは腕が震え、起き上がるのも辛そうだ
バルトールが間に入り、デルバートを庇う
クレアは駆けつけ、デルバートを支えた
ニャーゴが叫ぶ
「少しだけ隙をつくる!立て直してくれ」
”影沼”(シャドウスワンプ)
竜は地面にズブズブと埋まる、半身ほど埋まると抵抗を始める
クレアは急いでデルバートに高級ポーションを飲ませ、防護障壁を張りなおした
竜はすぐにニャーゴの魔術を抜け出し、後ろ足で立ち上がるとのしかかるように体を投げ出した
全員で退避したが、ニャーゴは竜の腹を見て思いつく
(あいつの腹の下、普通なら潜り込もうなんて考えないけど、俺なら影に潜りながら攻撃できるんじゃないか?)
(ただ長い時間潜ることはできない、常に移動先の影が必要になる)
「みんな、これから俺があいつの体の下に潜って攻撃をする、あいつから半径50メートル以内の距離を保っててくれないか」
デルバートとバルトールは意味がわからずポカンとしている
クレアだけが意図を組み取った
「わかった!行って!」
デルバートが声を上げる
「待て!押しつぶされるぞ!死にに行く気か!」
ニャーゴは溶けるように自分の影に潜るとニャーゴの影は消えた。すると竜が苦しみ出した。見ると竜の体の下から長く黒い刃が飛び出し、竜の腹を割いている
一振り、二振りほどするとクレアの影の中からニャーゴが現れた
デルバートは驚き、目を丸くしている
「なるほど、影の中歩く猫とはそういう事か!」
何度か影の中から竜の腹に攻撃を加えていると、竜がだんだんと弱っていくのがわかる
竜は血を流し、どんどん動きが遅くなっていった
好機と見たクレア達は一斉に攻撃を仕掛けた
すると竜は最後の力を振り絞らんばかりに暴れだす
頭を左右に振り、尾を激しく振りながらどこへともなく突進すると、クレア達は尾撃を全員で受けてしまい吹き飛ばされる。大きく距離をとった竜は3人へ向けて突進する
回避が間に合わないと悟ったバルトールが盾を地面に突き立て、デルバート、クレアも盾を支えるが、竜は何の抵抗もなくデルバート達を押し運んでいく
押し込まれる先には崖があり、このままでは潰されてしまうだろう
押し込まれる勢いが強く、3人は抜け出せずにいた
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