第37話 - 憧れの騎士
地竜討伐当日の朝
冒険者ギルドで待っていると騎士二人がやってきてクレアに挨拶をした
「国家魔獣士のクレア様ですね?私は今回お供させていただくデルバートです」
「初めまして。バルトールです」
二人は王都北西の領土を預かる公爵の騎士で地竜の管理を任されている騎士隊長と騎士だった。デルバートは元1級旅士で20歳男性。バルトールは元1級盾士18歳男
特にデルバートは容姿端麗で見るからに女性に持てそうな男だった、バルトールは歳の割に老けており、いかつい顔と巨大な筋肉質な体だ
クレアはデルバートをひと目見るや否や憧れの騎士が目の前にいる事に感動し、赤面してしまった
「あ、はい…今回はよろしくお願いします」
深々とお辞儀をし、赤面しているため顔を上げられないクレア
礼儀正しい騎士たちはニャーゴにも挨拶をする
「そちらはクレア様の従魔、ニャーゴ様ですね。バルトール共々よろしくお願いします」
ニャーゴは初めてまともに挨拶をされ、上機嫌になった
「へぇ、俺に気を使う人は初めてだ。よろしく」
「御謙遜を、クレア様と同じくニャーゴ様も庶民たちの中で非常に高名ですよ。新種の魔物に変異を遂げた国家魔獣士と共に歩く暗黒騎士ニャーゴ。子供たちが憧れ歌を唄うほどの人気です」
「そんなの初耳だ」
落ち着いてきたクレアが顔を上げて話す
「あたしたちはほとんどジョルノ伯の屋敷にいるからね、あまり聞こえてこないのも当然かも。それに暗黒騎士なんじゃ皆怖がってるんじゃないのー?」
ニャーゴは両手をあげて仕方ないなと言わんばかりの仕草を見せた
北西にある地竜の沼地までは片道5日の行程でデルバートは馬車を用意してくれていた
「クレア様、こちらへどうぞ」
「あ、馬車まで用意してくれていたんですね。ありがとうございます」
「馬車でも片道5日の旅となります、相手は地竜ですので。しっかりと体力は温存しておきましょう」
「ありがとう、騎士様って気が利くのね~」
「ありがとうございます。そういった教育をされますので、クレア様もどうかお気軽に私の事はデルとお呼びください」
「そ、そんな…あたし貴族じゃないですし…それなら…あたしの事もクレアでお願いします」
クレアは赤面し、目を合わせずに返答した
デルは微笑みながらお礼を言う
「ありがとうございます。ではクレア、行きましょう」
クレアは一瞬ドキッとした。憧れの騎士とこんなにも親しげに話せることが嬉しくてたまらないようだった。ニャーゴは初めて見るクレアの表情に呆れ気味になる
「クレア、竜と戦う時はちゃんとしてくれよ」
「なっ…ちゃんとしてるでしょ!どいう言う意味よ!」
(ダメだこりゃ…慣れるまで待つか…)
赤面するクレアを見てニャーゴは諦めた
美顔の男で騎士、それでいて強く身分も騎士隊長
憧れない女の子なんていない、デルバートは若く、あまり自覚していないので更に脅威だ
「デルバートは竜より手ごわそうだな~」
「私がですか?そんな…竜が出てきたら知らせるだけの名ばかりの騎士ですよ」
「あ、うん。そうじゃないんだけど…まぁいいよ…」
先が思いやられる旅になりそうだった
…
夜食はデルバートが用意してくれた
切ったパンを炙ってベーコンを乗せ、簡単な卵焼きを作って乗せる
パンは固かったがなかなかにうまい。クレアは感動してデルバートに話しかける
「旅先でこんな料理を食べられるなんて思ってなかったです!おいしい」
「騎士隊長とはいえ竜の監視はヒマでして…簡単な料理でしたらいくらかレシピをお教えしますよ。」
「ほんとうですか?騎士隊長で料理もできて…デルの周りにいる騎士様は幸せですね」
「ハハ、おかげで夜食の評判はよくなりました」
バルトールも話しに入ってくる
「騎士隊長のおかげで陰気な沼地の哨戒にも楽しみができて皆喜んでますよ」
「そう言ってもらえるとありがたいな」
その後もデルバートの洗練された仕草は何をとってもクレアの心を捉えていった
…
沼地
「クレア、ここからは徒歩での移動になります」
「うん、今降りる」
一行は沼地の地竜の巣を目指し始めた
沼地は広く広大で草や苔がびっしりと生えており、足元をよく見ていても足を取られるほど歩くのが難しかった。この地に慣れている騎士が前後を挟むようにエスコートする
バルトールが先頭を歩き、ニャーゴ、クレア、デルバートの順で歩く
沼地には木の板が敷いてあり、歩ける場所の目印が至る所に置いてあった
沼地の中ほどに来た頃、デルバートがクレアに注意を促す
「クレア、そこの板が途切れているところは注意してくれ、足が取られやすい」
さっそく足を突っ込み体制を崩すクレアをまるで予想していたかのように支えるデルバート
「クレア、大丈夫かい?」
デルバートの顔がクレアに近づく、クレアは恥ずかしくなりデルバートの顔を見ることができなかった
「あ、ありがとう。たすかった…よ」
…
地竜の巣
地竜の巣は沼と山の境目付近にある岩場を中心としたエリアにあった
不自然に切り立った岩の壁が乱立しており、明らかに沼地とは雰囲気が違う
異質な力を持った魔物がいると思わせるには十分な景色だった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます