第36話 - 竜と騎士
ニャーゴはオーガの影へ移動すると、オーガの体を駆け上り、グリフォンの羽を影の刃で攻撃した。グリフォンの右翼が切断され、大きく体制を崩し、地上に降りるグリフォン
ここぞとばかりにグリフォンへ襲い掛かるオーガの腕をクレアはムチで攻撃するとオーガの右腕が切断される。大怪我を負ったオーガは咆哮し、体制を崩す。
隙を見たニャーゴは一息にオーガの首を切断した。
膝をつき、崩れるオーガを見るや否やグリフォンが逃げようとするので”邪眼”で動きを止める、クレアはグリフォンの首をムチで攻撃、風の刃で首が飛び、戦闘は終わった
半年ぶりの狩りだったがそれなりに訓練を続けていたせいかそれほど苦ではなかった、武具の性能もあったのだろう、素材を取り終えると王都への帰路につく
…
王都に帰り着く頃には夕方になっていた
冒険者ギルドで回収した武具と魔石を納品し、報酬を受け取ると酒場へ向かった
酒場の入り口でヴィクトー、オーガス、ベアトリスが待っており、中へ入る
席を取り、駆けつけのエールで乾杯するとヴィクトーはクレアに質問した
「依頼達成おめでとう!久しぶりの狩りはどうだった?苦戦したか?」
「思っていたより楽だったよ、訓練は続けていたからね」
「さっすが国家魔獣士さまだ」
「ちょっとやめてよ…はずかしい」
オーガスがクレアに質問する
「魔物は倒したの?」
「うん、オーガとグリフォンが戦ってて、ちょうどよかったから」
「グリフォンの縄張りだったのか、そりゃ新米たちには手に負えないな」
「あ、でももう二匹とも倒したからしばらくは大丈夫だと思うよ」
「二匹とも?無傷で…俺たちと居たころより強いんじゃないの」
ベアトリスがクレアに話しかける
「ごめんね、クレア。私たちのわがままに付き合ってもらって」
「そんなことないよ。正直恨まれてると思ってた…それで…会うのが怖くて…」
「もっと早く会いに行けばよかったって私たちも後悔したんだ…冒険者ギルドに顔出してないって聞いて、落ち込んでるんだって」
「や、もういいの。こうして違う形で頼って貰えて嬉しかった。心配かけてごめんね」
クレアは皆の顔を一通り見て深呼吸をする
「みんなごめんね。会えて嬉しい」
ヴィクトーがエールを飲み干す
「わかった、もう謝るのはそれが最後だ。それでも気が晴れないなら、俺たちはたまにこうして飲んでる。クレアも呼ぶから可能な限り付き合えよ」
オーガスとベアトリスが頷く
クレアは涙を拭いて頷いた
…
それから数年が経過し、クレアは20歳になった
クレアとニャーゴはすっかり元気になり、二人でパーティ用の依頼をいくつも達成していた。その影響で王都では魔獣士に憧れるものも多く、街には従魔を連れている冒険者が増えた
今日も依頼を終えた二人は冒険者ギルドで報告をしていると、王宮から指名依頼が来ていることを告げられた
「クレアさん、指名依頼が来ています。以前ヴァンパイアを討伐した館を覚えていますか?」
「うん、覚えてる」
「あの館より西の沼に住んでいる地竜の討伐が今回の依頼です」
「竜?」
聞けばとある美食家が竜の卵を食べたいという依頼を出し、沼地に住む竜の卵を取ってくる依頼を出したのがきっかけだそうだ。その依頼は見事達成されたが挑んだ3級のパーティは半数が再起不能に陥り、さらに怒った竜が付近の交易馬車やダンジョンに挑む冒険者たちを攻撃するようになったという事だった
「う…気の引ける依頼だなぁ…」
「そうなんですけどね…美食家は責任を感じて私財を投じて討伐隊を編成したらしいのですが全て返り討ちにされ、ギルドに泣きついてきたという経緯があります。その報告を聞いた王宮が並みの冒険者では損害が大きくなることを懸念してクレアさんに指名依頼を出す事になったそうです」
クレアは腕を組んで考えた
「うぅん…まぁ美食家も反省してるなら仕方ないか…でも竜の討伐はしたことないからどうしよう」
「はい、さすがにその経験がある冒険者は数人しかおらず、皆他の依頼で今はいないため今回はクレアさんだけが頼りという状況です…ただ、王宮から騎士が2人派遣されます。元旅士と盾士の経験を持つ騎士ですね、クレアさんほどではありませんが二人とも優れた経歴を持っており、とても優秀との事でした」
「騎士か…ちょっと一緒に冒険してもいい気がしてきた…」
「本当ですか!では受理しておきますね!」
「え!?ちょっ…」
いつもなら窓口で処理するコレットは今回に限って奥に引っ込んでしまった
「くっハメられた…」
ニャーゴが笑いながら話しかけてくる
「ニャニャ!無理に倒さなくてもいいはず。追い払って出てこなくなればそれでいいと判断されることもあるんだ、変に気負わなくてもいいよ」
クレアは肩を落とし、疑惑の目でニャーゴに質問する
「ニャーゴってさ…」
「ニャ」
「なんか妙に詳しい事あるよね?ずっとあたしと一緒にいるのにあたしの知らない事しってる…」
ニャーゴは目が泳ぎながら答えた
「ニャ…ニャー…バ、バステトが教えてくれるんだ…」
「ふぅん、あの娘そんなに俗世に関心あると思えないけど…」
「ニャー…」
「まぁいいよ。嘘か本当かは置いておいて一理ある話しだ、もう受理されてしまったし腹くくっていこう!」
(ホッ)
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