第35話 - 信頼

半年後


クレアはエクセ家の屋敷で自堕落な生活をしていた

食べて、寝る。の繰り返し

たまに思い出したように訓練は続けている

ニャーゴが冒険者ギルドへ行こうと誘うも、無気力なまま足が向かない

ニャーゴが何度励ましてもうつむいてしまうばかりで何も変わらない毎日が続いた


ある日、屋敷にクレアとニャーゴの元へ客が訪れた

ヴィクトーだ


片腕を失ったヴィクトーの姿が痛ましい

ヴィクトーを居間に通すと3人でテーブルに座る


ヴィクトーは悲しそうな顔で話しを切り出した


「クレア、最近冒険者ギルドに顔出してないって聞いた」

「うん」

「俺たちの事を気に病んでるんだろ?」

「…」


ヴィクトーは窓の外に目をやった


「訓練してたのが懐かしいな…俺たちはクレアに感謝してるんだ」


クレアはうつ向いたまま目をつぶった


「…でも、腕が…」

「いいんだ、オーヴィルでクレアに会わなきゃ俺たちが1級になる事なんてなかったから」

「わたしは、つらい…」


ヴィクトーは軽いため息をつきながらクレアを見る


「そうだと思った、俺の方こそ申し訳ないよ。俺たちが未熟なせいでクレアを傷つけてしまって…」


クレアは顔を上げ、強い態度で訴えた


「そんなことないよ!あたしたちの村を助けてくれたじゃない。それなのに…」

「気にしすぎだよ。俺たちはみんな幸せだから、オーガスもベアトリスも。今は軍の教師として忙しいんだぜ?今日は俺がたまたま非番なんだ、二人ともよく街で飲んでる。クレア達がどうしてるか気になって冒険者ギルドへ行ったんだ。そしたら来てないって言うから」


クレアは涙をこらえながらうつむいた


「あたしは…みんなと冒険したかった…」


ヴィクトーは微笑んだ


「元気出してクレア。クレアがそんなだと俺たちも辛いんだ。俺たちが未熟だったせいでクレアを悲しませてるって、この間二人と話してみんな同じだった」

「…ごめん…」


ヴィクトーは洋紙皮を広げクレアを見る


「今日は依頼を持ってきたんだ」


クレアは涙をこぼしながらヴィクトーを見る


「依頼?」

「うん、ジョルノ伯にも許可をもらって指名依頼を。軍の新米たちが先日野外演習で魔物に襲われたんだ、幸い死傷者はでなかったけど予備の武器や備品の入った荷物を置いてきてしまってね…在庫が足りなくなったんだ。それでクレア達にそれらの回収と足りない魔力武具を補充するために使う魔石をとってきて欲しい」

「…でも…」


ヴィクトーはニヤリと笑い話しを続けた


「これは断れないよ?ジョルノ伯からも推薦状を貰ってる。報酬は金貨3枚、3人で1枚ずつ出した。あと魔石の買い取り。その他の素材は別途自分たちで使うか売るかしてくれていい」

「…」


ヴィクトーはクレアの様子を見ながら優しく言葉をかける


「それが終わったら、皆で酒場に集まって飲みたいんだ。やってくれないか?」

「…うん、ありがとう…」


クレアはボロボロと涙をこぼしながら何度も頷いた

ヴィクトー、オーガス、ベアトリスが心配して、気を使ってくれる上、また頼ってくれる。もしかしたら恨まれているんじゃないかと思い、会うのが恐ろしかった


ニャーゴはクレアの顔を見て微笑んだ後、ヴィクトーにお礼を言った


「ヴィクトー。ありがとう、必ず荷物は回収するよ」


ヴィクトーから詳細な場所を聞き、翌日向かう事にした



翌日、冒険者ギルドで指名依頼の受注を行い、門を出るとヴィクトー、オーガス、ベアトリスが待っていた


オーガスとベアトリスがクレアを見て手を振り、オーガスは嬉しそうに声をかけた


「久しぶりだね、クレア!今日は俺たちの尻ぬぐいをしてくれるって聞いて応援に来たよ」

ベアトリスはクレアに駆け寄り、優しく抱きしめる


「ごめんね、あたしたちが未熟なせいで。傷つけちゃった」


クレアは少し悲しい顔をしてベアトリスに謝る


「こちらこそ、いつまでもウジウジしちゃってた。もう大丈夫」


ヴィクトーは手を腰に当て、クレア、ニャーゴに声をかける


「夕方、酒場で待ってるよ。久しぶりなんだから無理はするなよ」

「うん、ありがとう。行ってくる!」

「ニャ!酒場で待ってて」


俺たちは出発し、荷物を紛失したと言われる場所へ移動した

荷物は街道を大きくはずれた森と山の間にあり、馬車だった。天幕は痛んでおり、馬もいない。中も荒らさられており、3人分ほどの武防具、ポーションなどを回収できた。


あとは魔石を調達するため、馬車を襲った犯人を探そうと痕跡を調査する

おそらくグリフォンであろう痕跡がみつかった


ここはグリフォンの縄張りだったのだ、おそらく山側に巣があるのだろう。グリフォンは追いかけるのが難しい魔獣だ、長距離飛行するため巣の位置が特定しにくい。

山側は切り立った崖がいくつもありかなり、険しく足場も悪いため今回は追いかけることを断念した。代わりの魔物が何かいないかと探していると森の奥から戦闘音がするので追跡すると、オーガとグリフォンが戦闘している所に出くわした


ちょうどよいのでこの二匹を狩ることに決め、戦闘準備をする

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