第34話 - 尊い勝利
ニャーゴは戦闘態勢をとる
続いてヴィクトーらも武器を構えた
高い魔法防御、異常耐性により戦闘は長引いていく
物理攻撃も効果が薄く、1級の魔物らしい強さを見せつけてくる
魔力闘法を身に着けていなければ間違いなく戦いにすらならなかっただろう
皆に疲労が見え始めたころ、戦況に変化が現れた
森の魔女の放った風魔術がオーガスの足に直撃し、切断されてしまった
苦しむオーガスに回復魔術を使うベアトリス
オーガスを庇うように立ちはだかるヴィクトー
パーティの動きが止まり、いっそう激しくなる攻撃がヴィクトーを襲う
ニャーゴは全力でリッチに攻撃をしかけるが見向きもされず、攻撃もほとんど効果が見られない、クレアもサポートに徹しているがまったく追いついていなかった
オーガスの止血が終わったころ、ヴィクトーが攻撃に耐えきれず、盾ごと左腕を持っていかれてしまった。ヴィクトーは無くなった左腕の傷口に手を当て、深刻な表情で座り込む
盾を失ったメンバーが崩れるのは早かった
次にベアトリスが風魔術で吹き飛ばされ木に叩きつけられると折れた枝が肩に刺さり、気を失って宙吊りになる
するとリッチの攻撃が急に止み、リッチは館の裏にあるハーブ園で土をこね、魔力を注ぎ延々と魔物を作り続ける
ニャーゴの呼びかけには一切答えず、延々と作り続けている
応急処置を終わらせたクレアが戻ってきた後、二人で呼びかけるも答えなかった
クレアがニャーゴに問いかける
「どうしたんだろうね、森の魔女…」
「どうしたらいいんだろう…」
「ごめんねニャーゴ、こんなこと言いたくないんだけど…」
「何?」
「みんなもう瀕死なんだ、早く街に連れ帰らないとまずい。命に関わる」
ニャーゴはうつむいて考えた
「わかった、倒せるかはまだわからないけど試してみる」
「うん、手伝えることがあったら言って」
「赤い実がひとつあればいい」
クレアが馬車へ荷物を取りに戻る間ニャーゴは”巨水弾”を作りだし、魔力を注いでいく
クレアが戻ってくると赤い実を受け取り、水の中に入れた
「バステト、助けてほしい」
赤い実が溶けるように消えていくと大きな水の玉はみるみる渦を巻き、小さくなっていく
小さな小さな水の玉になって弾けると、バステトが現れた
「なーん。お困りかい?」
「森の魔女を、助けてほしい」
バステトは森の魔女を見てショックを受けたあと話しかけた
「リステア…かわいそうに」
リステアは顔をあげ、バステトを見ると土をこねるのをやめた
「リステア、どうしたんだい?君らしくないじゃないか」
「…」
「強い憎しみを感じる…どうしてそうなったんだい?」
「…」
「偉大な魔術士だったのに…」
「…」
「少しだけ力を分けてあげる」
バステトの手から光が漏れ、リステアに降り注ぐ
リステアは生前の姿に変化し、話し出した
「バステト、ごめんね」
「何があったの?」
「人間に殺されたわ、そのあとニャーゴがお墓を作ってくれたの。嬉しかったわ」
「うん」
「森の封印が解けて、魔物が溢れたわ。ヘルネ村には申し訳ないことをしたの」
「うん」
「そのあと別の人間がきたの、私のせいだといって墓を荒らしたわ」
「うん」
「悲しくて、辛くなって助けを求めたの。でも次第に憎しみが勝って行ったわ」
「しかたないよ、リステアだって人間だもの」
「お願い、終わらせてほしいの。もう自分で止められない」
「…」
「お願い」
「わかった」
そういうとバステトは小さな光をリステアに飲ませた
光はリステアを包むように大きくなり、広がりきると一瞬で小さくなって消えた、リステアと共に
「おわったよ」
ニャーゴは暗い顔をしてバステトに謝った
「古い友人だったんだろ?辛い役目を…ごめん」
「なーん。仕方ないよ、リステアが望んだことだもの」
バステトは悲しそうな顔で返事をした
バステトに別れを告げて俺とクレアは急いでリスホルンに戻った
ギルとメリッサに頼んでヴィクトー、オーガス、ベアトリスの治療を手伝ってもらい奇跡的に一命はとりとめた。しかし、失った体は戻らず、冒険者として生きていくことは不可能と言われた
皆の容体が落ち着いたころ王都へ帰還し、屋敷へついた
ヴィクトー、オーガス、ベアトリスはそれぞれ屋敷を離れ、軍で騎士を育てる教育係という職を与えられ、働き始めた
クレアは事の顛末を報告し、国家魔獣士として国王から名誉を賜った
ヘレネ村周辺はリスホルンの冒険者たちが少しずつゴブリンから解放していき、以前の落ち着きを取り戻している
屋敷でクレアはニャーゴに話しかける
「二人きりになっちゃったね」
「うん、冒険者ってこんなもんだよ」
「これからどうしよう」
「しばらくはお休みしようよ、しばらく冒険はいいや」
「そうだね…あたしも休みたい」
ヘレネ村を弔い、館の解放を達成したものの、ぽっかりと大きな穴が開いたような気持ちだった
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