第31話 - 人の姿

目が覚めると大きな木の前にいた


どこにいるかわからないがバステトに呼びかける


(またきたよ)


バステトは大きな木の陰から現れた


「なーん。久しぶりだね、現世で一度も呼んでくれないから忘れちゃったのかと思ったよ」


(アハハ、ごめん)


「なーん。でも今回はちょっと怒ったぞ。前回約束してくれたのに!」


(うっ…ごめん。目が覚めたらすぐにやるよ)


「ふっふっふ、習慣化して毎日話し相手になるんだぞ」


(わかったよ)


「よしよし、じゃあ今回も君に道を示そう。今回は2つだ」


それぞれの姿が頭の中に流れ込んでくる

・影の中を歩く猫

 人型になる、黒い毛と灰の肌を持ち、二つの尾を持つ、大きさは10歳くらいの子供だ

 影の中へ自由に出入りできるようになる、上位の闇魔術と強い水魔術を使える

 邪眼、呪眼に加え凶眼が使えるようになる、弱い魔物なら睨むだけで死ぬだろう

 爪や牙はあるが前より劣る、代わりに人間の武具が使える

・奈落の底を歩く猫

 今までと変わり小さくなる、子猫ほどに、黒い毛とひとつの尾

 最上位の闇魔術と上位の氷魔術が使える

 魔眼というものが使える、額に大きな目が現れ強大な闇のエネルギーを照射する

 爪や牙も子猫同然だ


「なーん。この次の変異が最後、深淵の猫となる。どちらを選んでも同じだ。君がクレアと会った頃と同じくらいの姿になるだろう、また膝の上に乗れるようになるぞ」


(影の中を歩く猫)


「なーん、早いね、子猫は嫌だった?」


(人の姿なら会話が楽になるだろうから)


「それはそうだね、では今回はここまでにしよう」


そう言うとバステトは大きな木に語り掛ける


「なーん。彼の者は今より影の中を歩く猫として生きる、我が御名の祝福を授かるだろう」


大きな木から目が眩むほどの光が溢れ、目の前が真っ白になった



目が覚めるとクレアと一緒に寝ていた

俺の体は完全に人の姿だ、裸でも毛があるからまだいいけど恥ずかしいな


「クレア、起きて」


クレアは目をこすると目を丸くして驚き、壁にぶつかった


「ちょちょ!!誰!?なに!?」

「ニャ~ゴ」

「え?ええ!?」

「驚いた?」

「う、うん。ニャーゴ…なの?」


俺は頷いた


「あの…服を…誰かからもらえないかな…」

「あ、ちょ、うん!!!うん!!!待ってて!」


バタバタと走り出すクレア、しばらくすると戻ってきて服をくれた

その後は赤い実を貰い、水桶に落とすと赤い実は消え、バステトが移りこむ


「なーん。人の姿もかわいいね。まずは君に祝福を授けよう」


そういうと俺の体はぼんやりと光り、消えた

体の中から力が湧いてくる


「バステトの加護、傷の治癒力や状態異常に対する抵抗、魔力の増大が確認できるはずだ」

「ありがとう、この水桶ひっくり返せばバステトは消えちゃう?」

「ちょっと!怒るぞ!」

「あはは、今までの話をしよう」


3級冒険者に至るまで、貴族の屋敷に住んでいることを長々と話し込んだ


「なーん。そんなことがあったんだ、いいなぁ、あたしも行きたいなぁ」

「出てこれるの?」

「条件が整えば。君の魔力ならもうできるだろう」

「どうすればいい?」

「君が魔力を注いた大きな水たまりに赤い実を投げ込めばいい、一日に一度だけ、祝福と同じように君を手伝ってあげよう。ただし顕現できるのは1時間ほどだ」

「わかった、大事な時に呼ぶよ」

「そうするといい」


バステトと会話を終えると、後ろにクレアが立っていた

ものすごい形相で俺を見ている


「今の娘、誰!?」


バステトという女神であることと変異を手伝ってくれる事、森の魔女の約束の事を話した

クレアは落ち着き、今後呼ぶときは同席して感謝を述べ、一緒に話したいと言ってくれた。できるかどうかはわからないけど、見えるならできるんだろうと思う


一週間が経って訓練場ができた

サンドラが俺の分も含め全員分の新しい武具を用意してくれたので早速全員着替えた


魔力の伝達効率が高い素材でできた鎧をそれぞれ着用し、訓練を行う

属性がなくとも魔力を武器や鎧に纏わせ、魔力を込めた攻撃でなければこの先皮膚を傷つけることもできない敵が現れるのだとか


竜などはその最たる例で魔力闘法を体得していなければ例え鱗を避けても傷ひとつつけられないそうだ、眼や口の中であっても刃は通らない

1級になるほどになれば訓練していなくても自然と全員ができるようになるという事だった


俺はあまり意識したことはなかったが自然とできていた、俺の昔の姿はみんな知らないが魔物だからという理由で納得してくれた


みんなが訓練している間俺は街の外で新しい体の能力を試している


”凶眼”


街の近くにいる低級の魔物なら睨むだけで目が合っていなくても即死する

新しい闇魔術は

”影沼”(シャドウスワンプ)

 対象の影の中に引きずり込む、体の半分ほどが埋まり、拘束する

”影投槍”(シャドウジャベリン)

 体の周りに黒い槍が5本現れ、好きなように操れる、敵に当たると黒い針が体の中からたくさん飛び出る


水魔術は

”氷吹雪”(ブリザード)

 指定した範囲に氷吹雪と共に極低温のフィールドを作る

”巨水弾”

 かなりの大きさの水弾を飛ばす、質量で押しつぶす感じ


影の中の移動は意識するだけで自分の影から周囲50メートルほどの対象の影の中へワープできた。ある程度の大きさの影でなければ入ることも出ることもできなかった

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