第29話 - さらわれた姫

俺たちは馬車から続くオークの足跡を追った


オークの足跡は途中、馬の足跡とも合流しており、方向が一致していた

おそらく先に集落がある、はやく貴族の女性を見つけなければ集落まで行くと手が出せなくなってしまう


追跡を開始してすぐに3人の騎士が死んでいるのを発見した

周りには10体ほどのオークが倒れている


ヴィクトーはつぶやいた


「たった3人でこんなにオークを倒したのか…」


オーガスが話す


「これだけ死んでいるなら残りは少ないはずだ、追いつければ取り返せるかも」

「そうだな、急ごう」


その後2日かけて追跡し、休憩しているオークの集団を見つけた


オーガスが話す


「ひぃ、ふぅ…7体だ、袋詰めにされてるのが貴族だと思う」


ヴィクトーが眉をひそめて話す


「ちょっと多いな、どうする?」


クレアが怒りに満ちた表情で話し出した


「助けに行こう!女の子にあんなことするなんて許せない!」


オーガス、ベアトリスも同意した


「オーガス、ニャーゴ、先制攻撃を頼む、2体は確実に消したい」


オーガスとニャーゴは頷くと静かにオークの集団を囲む、配置についたのを確認するとヴィクトーは立ち上がり、盾を構えた


いつもの強化魔術を準備するとヴィクトーは意識強制を発動する

オーガスとニャーゴは意識のそれたオーク達に忍び寄り、2体にトドメを刺すと、オーガスは袋詰めにされた貴族を離れた場所へ移動させた



戦闘は終わり、貴族を解放すると、女性はリリア=アウグスト=エクセと名乗った


「危ないところを助けて頂き感謝いたします。このままオークの苗床にされる前に自決する覚悟を決めようと思っていたところでした」


ヴィクトーが話す


「舌を噛みきるなんてよっぽど訓練しないとできませんよ。そんな訓練しませんけど、行き先は王都ですか?」


リリアはしゅんとして返事をした


「はい」

「では歩きになりますが我々が護衛しましょう。それとも、援軍の当てはありますか?」

「いいえ、騎士が戻ってこないことを見るとみんなやられてしまったのでしょう。護衛を依頼してもよろしいでしょうか?報酬は王都に戻ってからお渡しいたします。」

「わかりました、少々つらいとは思いますが頑張ってください」


街道へ戻り、警戒しつつ王都を目指すことになった。貴族の女性は王都に住む伯爵の娘で、領内の領主たちに挨拶をした帰りに襲われたそうだ、リリアは行軍開始1日であっという間に歩けなくなり、ニャーゴの背中に乗って移動した


それを見たクレアは思いついたように話し出す


「そういえば魔物用の防具ってあるのかなぁ?人が乗れる鞍とかあればニャーゴつける?」


ニャッ

(邪魔そうだなぁ…)


オーガスが話す


「王都に行けばあったりするのかも?」


リリアが話す


「みなさん、王都は初めてなのですか?」

「そうです。我々はオーヴィルで活動していたんですが、3級冒険者となってからは王都の依頼を受けるために旅をしています」

「まぁ、3級ともなれば王都も非常に助かります。王都までお送り頂いた際は後日招待状をお送りするので是非おもてなしさせてください」


ヴィクトーが申し訳なさそうに話す


「我々は田舎者なので…その…多少の不敬を大目に見て頂ければ…」

「それは気になさらないでください。もしよろしければエクセ家の専属冒険者としてお迎えさせて頂きたいと思います。専属冒険者となれば街の中でも融通が利くため魔獣用の防具などもオーダーメイドで仕入れることが可能になるでしょう。その他魔力武具なども必要に応じて優先的に取引が可能です」

「ありがたい申し出に感謝します、無知を承知でお伺いしたいのですが、専属というものは…」

「専属というのは指名権のようなものです。普段通り依頼をこなして頂いて構いません。ただ、エクセ家の特権を与える代わりにエクセ家からの依頼を優先で処理して頂くことが条件となります」

「なるほど、みんなはどう思う?」


オーガスが慌ててヴィクトーに話す


「ちょっと!目の前で聞くのは失礼だろ?二つ返事で受けなよ」

「そうは言ってもな…俺たちは皆自分の意思でここにいるんだ」


クレアもベアトリスも特に異論は無かった


「リリア様、専属の件、正式に依頼が頂ければお受け致します。まずは王都へ帰りましょう」

「ありがとうございます。戻り次第招待状をお送りしますね」


その後、敵に襲われることなく一行は王都へ到着し、リリアを送り届けたあと、宿を探すために街へ戻った


ヴィクトーが話し出す


「王都ではみんな同じ宿にするか?これから専属の話が正式に決まってしまったら招集の時とか集まりやすいだろうし」


オーガス、ベアトリスが頷く

クレアが不安そうに話す


「それはいいんだけど、あの、従魔と同じ部屋に入れるとこがいいの…ニャーゴと一緒に寝れるとこがいい」

「おっけーおっけー!まだニャーゴは人よりちょっとデカい程度だ、王都は広い、なんとかなるだろう」


一行は冒険者ギルドへ顔を出すついでに聞くことにした


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