第28話 - 王都へ
1ヵ月ほど経過してヴィクトーの鎧が一式届いた
その間は湧き水エリアなどで訓練したスキルを試し撃ちしたり連携の確認をしたり、最終的には森林ダンジョンの最奥、大木エリアまで行こうという目標を掲げて訓練を続けていた
いずれは王都で有名な冒険者になろうというぼんやりとした子供じみた憧れと目標に向かってみんなで盛り上がっている
それから1年ほど経ち、みんな3級の冒険者になった
かねてより憧れていた王都へ向かおうという事になり、ついでに王都へ向かうような依頼がないか、アリアに尋ねた
「それでしたら王都とオーヴィルの中間にある山脈にオークの群れが出るそうで、壊滅とまではいかずとも何匹か討伐した証さえ持っていけば王都でもオーヴィルでも報酬が出ます。そういった常設型依頼などいかがでしょう?」
常設型依頼とは証さえ納品すればいつでも数に応じた報酬を得られるもので、今回のような魔物の集落や、閉鎖されたダンジョンから溢れた魔物を少しでも数を減らす目的で国が発行している依頼だ
今回の常設依頼対象であるオークは集落ごとに文化を持っており、紋様や装飾品など、同じものを集落内で統一する傾向がある、調査もある程度進んでおりガイドブックに乗っている品を納品すればモノに応じた報酬が出る仕組みだ
クレアが賛成する
「いいね、ちょうど中間だしこれやっちゃおうよ」
ヴィクトーは重い表情を浮かべている
「オークかぁ…」
「ん?何か問題あるの?私たちなら勝てる相手じゃない?」
「いや、オークは雄しか生まれないのは知ってる?」
「へ?そうなんだ、いっぱいいる魔物じゃないの?豚の頭と巨体を持った魔物でしょ」
オーガスが口を挟む
「そう、なんだけどその生態が問題なんだ。オークは雄しか生まれない種族だから他種族の女を攫って子を産ませる。クレアとベアトリスが攫われたときの事を心配してるんだよ」
「あ、そういう事か…なるほど…それは本当に嫌だな」
クレアは背筋がゾクゾクとする感覚を覚え、身震いした
ベアトリスが話し出す
「ま、まぁ集落から溢れた偵察だけ倒すとかにするとかなら…」
「そ、そうね。さすがに集落の中まで攫われちゃったらみんな手を出せないし、あたしたちも攫われたくないし…」
ヴィクトーは少し悩んだ
「うーん、まぁ出会わなければ無理に探さなくてもいいし。いたらやる程度で行こうか」
全員それで納得したのでアリアに受注の意思を伝える
「この依頼は受諾処理がいりません、なので達成されなくても罰則はないので戦わないという選択肢を選ぶことも気兼ねしなくていいですよ」
「そうなんだ、ありがとうアリア。今まで助かったよ」
「いえ、こちらこそお礼したりないほど助けて頂きました、近くを通る際はまた是非依頼を見ていってくださいね」
一行は王都へ向かって歩き出す
王都までは歩いて1ヵ月ほどかかるので長旅となりそうだ
オーク討伐も中間とはいえ歩いて片道15日もかかるのであれば常設型依頼として通る人を対象におまけ程度に倒してもらう選択肢が生まれることも納得できた
軍を派遣するにしても最低1ヵ月は見なければならない冒険者に適当に数を減らしてもらうのが一番効率がいいわけだ
…
10日ほど歩いただろうか、王都へ向かう貴族の馬車が街道を通って行った
貴族馬車に4人の騎士が護衛につき、クレア一行の側を通り過ぎていく
クレアが話す
「ねぇねぇ見た?騎士様だよ!」
ベアトリスも同じようにはしゃぎだす
「みたみた!かっこいいね~馬車に乗ってたのってお姫様かなぁ」
「うんうん、きっと。姫様に一生忠誠を捧げます。とか言ってるんだよ~!」
「キャー!言われてみたい~」
ヴィクトーとオーガスは少し引き気味に話した
「女の子っていつまでこうなのかねぇ」
「ほんと…」
ナ~
(男の嫉妬は見苦しいぞ)
「ニャーゴもわかるか~そうだよなぁ、俺たちだって男だもんなぁ」
ニャ~
(ハイハイ、悔しいね、どんなきもち?ねぇどんなきもち?)
ヴィクトーは腕を組んで何度もうなずきながらニャーゴに話す
「いや、わかるよ。わかる。俺たちだって騎士に負けてない、うん」
ニャーゴはそっぽを向いた
ニャッ
(めんどくせっ)
クレアは必死に笑いを堪えながら聞いていた
それから半日ほど歩いただろうか、今朝通り過ぎた貴族馬車が見えた
護衛はおらず、馬車の扉は開いている
おかしいと思い、ヴィクトーが近づく
「……どうか、されたんですか?」
中を確認したヴィクトーが驚き、声を上げた
「襲撃されている!みんな来てくれ」
慌てて貴族馬車へ駆け寄る一行、状況を確認するとおそらく騎士たちと引き離され、御者が殺され、中にいた人物が攫われている
オーガスが足跡を見て話す
「オークの足跡が複数ある、そして馬車の中にいた人は女性だ、御者が殺されているのに馬車の中に血痕はない。攫われたんだ」
ヴィクターが話す
「ここで戦闘した跡はない、騎士4人に陽動をかけて奪っていったのか…」
「そうなるね、馬の足跡は二方向ある、2回に分けて陽動が行われたんだ、騎士たちが全員いなくなったのを確認してから襲ってる」
「まずいな、とりあえず足跡を追おう、取り返せるかもしれない」
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