第27話 - 新しい防具

今日は久しぶりに街でお買い物


宿の朝食を断り、一日全て外食で楽しむつもりだ

朝食から酒場へ向かい、柔らかいパン、腸詰め、薄切り燻製肉と卵焼きなどいつもの固いパンとスープに比べて一味違う朝食を楽しんだ


「はぁ、貴族の朝食みたい…」


ナ~

(クレアは貴族の食事を知ってるの?)


「知るわけないでしょ」


(…)


朝食を終えると街を一通り練り歩いた

道具屋では二人とも使い古した鞄を買い替えた

ゴードンさんとアイサおばさんに貰った鞄を惜しみながら、クレアは銀貨200枚で買える小さな魔力鞄にしたようだ。初めての魔力鞄に興奮している


腰に括り付けるタイプの鞄で拳ほどの大きさしかないのに以前の鞄の倍は入る

鞄の形をしているだけで中身は魔石、魔力を込めながら近くにモノをかざしたり手をかざしたりすると出し入れが可能だ


小さな術式に吸い込まれたり、バケツをひっくり返したように出てきたりと何度もアイテムを出し入れして感動していた


ニャーゴは首の鞄ではなく、指輪型の極小容量の魔力鞄を銀貨10枚で購入

いくつかのポーションなど主人が倒れたりした場合の緊急用救急セットを入れた

皮ひもで指輪を首にぶら下げ、ちょっとおしゃれ


「これは発明だな、ニャーゴ君。すごく体が軽いぞ」


ニャ

(これで戦闘中に鞄を放り投げなくて済むね)


鞄が膨らむとなかなか邪魔なもので戦闘になる前に邪魔なところへ隠したり、急な遭遇戦闘の場合はその辺に投げたりする、運よく被害はなかったが置き引きされたり敵の攻撃で全部ダメになったりするので魔力鞄は本当に重要だ


ちなみに魔力鞄が壊れると空間ごと閉じて何も取り出せなくなる

高級魔術士ならば術式にアクセスして取り出すことは可能だ

魔力鞄の魔石はかなり頑丈な装飾がされているのでそうそう壊れないがリスクもあるにはある


昼食も酒場へ向かい豪華な食事を楽しんだ、豪華とは言っても所詮は庶民の店

朝食と内容は変わらない


次は防具屋に向かった

防具のデザインを一新し、革製の胸当て、腕当て、ブーツ、外套、布製の上着とズボンを購入、ブーツは風の魔力を帯びた魔力防具、これが一番高かった

軽装だから機動力は重要なのだ


フラフラしているとオーガスにバッタリ会った


「オーガスじゃん、何してるのー?」

「やぁ、防具を変えたんだね、似合ってるよ。僕はこれから戦闘用の道具を補充しにいく」

「あ、こないだ全部使い切ってたもんね」

「そうそう、でも製品は少ししか買わないよ。加工済みの材料を持ってって現地で少しずつ調合しながら使うのが容量圧縮の秘訣だね」

「へー、旅士ってお金かかりそー」

「フィールドワークに特化してるから戦闘は苦手な部類だし、道具に頼らざるを得ないんだ」


クレアは腕を組んでうなずいた


「キノコエリアのマスクは助かった、これから調合に使えそうな素材は優先的に回すよ~」

「そうしてくれると本当に助かるよ。ありがとう」


旅士は危険なエリアの踏破、キャンプなどで非常に重要な職種だ

豊富な魔物知識、危険地帯の知識、状態異常知識、野生植物知識があり、強敵との戦闘で作戦立案や囲まれた場合の脱出など、生存に関するあらゆる知識を詰め込んでいる


何の準備もなく強敵と出くわし、基本的に人間より足の速い魔獣などに退却さえ許されず死んでしまう冒険者は多い。旅士はそう言ったリスクを減らしてくれる。攻撃力だけが重視されがちな低級依頼では嫌煙されるが、高級なパーティほど危険地帯に赴く可能性が高いため等級があがるほど人気がある職業だ。


戦闘より生存を重視しているため軽装で、火力が伸びず、道具に頼りがちなのはそういった一面がある


オーガスと別れた後は久しぶりに低級依頼の草集めをやった

ニャーゴの尾蛇が採集も手伝えるようになったためあっという間に終わったが懐かしい気持ちに包まれた


依頼を終わらせ街を散策しているとヴィクトーが空地で訓練をしていた


「ヴィクトー、お休みの日も訓練してるの?」

「お、クレアとニャーゴか。5級にもなったのに攻撃スキルが乏しいからなぁ、新しいスキル獲得のために本を買って練習してるんだ」


ナ~

(クレアもやったほうがいいんじゃない?)


「う”っ…」


クレアはヴィクトーに駆け寄った


「スキルの本ってちょっと見せてもらっていい?」

「いいぞ、そこに置いてある」


クレアはスキル本を手に取った


鈍器技術手法


目録

・”重撃” 鈍器に遠心力を加えて威力を増す方法

・”重連撃” 重撃を連続で繰り出す型、体捌き

・”骨砕き” 鈍器をより効率的に使い、少ない振り幅で威力を出す方法


クレアは魅入るように本を眺めていた


「へぇ~戦闘技術ってこんなにあるんだ…あたしも5級になったしレベルアップしなきゃ」

「体を動かすのはいいぞぉ、汗をかいた後のエールはたまらん」

「ア、ハハ…脳筋だぁ…」

「ハッハッハ、クレアもやってみればわかるさ」


ヴィクトーは普段から重装を身に着けているからか筋肉は大きく発達しており歳の割に体の大きさはクレアの倍はあった


「あそこまででっかくはなりたくないけど、スキルの知識は欲しいなぁ…」

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