第25話 - パーティ
宿へ戻るとクレアはベッドに飛び込み、枕に顔をうずめると足をパタパタさせた
「くぅ~!」
ニャ~ゴ
(受けないのか?)
「断る訳ないじゃん!あんな大物倒したのすごくない?」
ナ~
(気に入ったならあの場で受ければよかっただろ)
「えー!そこは尻が軽い女だって思われたくないし、ちょっと焦らすくらいが大人の女のたしなみってやつでしょ。ニャーゴってば女心がわかんないなんてモテないぞ」
(猫に言うなよ)
「は~。でもいいなぁあのパーティ、みんな兄弟みたいに仲良くて。あたし邪魔にならないかなぁ」
ナ~ゴ~
(それはクレア次第じゃないか?)
「う~…他人事だなー。猫はいいなぁ気が楽で」
ニャッ!
(俺にも悩みくらいあるぞ)
クレアは興味深そうな顔で身を乗り出して聞いてきた
「へー!何?恋の悩み?」
ナ~ォ~
(クレアのお守り)
ベッドに体を投げ出して横になるクレア
「なにそれつまんなー!あたしのお守りがそんじょそこらの男に勤まるわけないでしょ。当然よ」
(自慢するとこじゃないだろ)
ニャ~
(いい人達だったね)
「うん!あたし、あの人たちと一緒に冒険したい」
ナ~
(明日ギルドに行くんだろ?今日はもう寝よう)
「そうだね。楽しみだなぁ」
…
翌日、冒険者ギルド
クレアが扉をくぐるとヴィクトーたちが手を振り、気が付いたクレアは駆け足で寄っていく
ヴィクトーがクレアに話しかける
「おはよう、返事は焦らなくていい。今日も依頼一緒に行かないか?」
「あ、はい!あの…」
ヴィクトーは椅子を引いてクレアに対して正面を向く
「うん」
「え…と、あたしでお邪魔にならなければ。今後もお世話になりたいです…」
ヴィクトー、オーガス、ベアトリスが一斉に顔を見合わせ、喜んだ
「本当に!?みんな大歓迎だよ。是非一緒に行こう」
それぞれがクレアに握手を求め、それぞれと握手を交わした
「よし!じゃあ今日は軽めな依頼にして朝まで飲み明かそう!」
ヴィクトーが選んだ依頼は森林ダンジョン湧き水エリアに生える吸血花の採取
死んだ魔物に寄生して生える花で生命力が強く、中級、高級ポーションの材料になる
赤く、細い花びらと細い糸のような花びらを付け、茎は折れやすい
水分が多く、採取後は扱い方を間違えるとすぐに枯れてしまう花だ
森林ダンジョンに向かい、湧き水エリアに着くとクレアは草娘と呼ばれた理由をみんなに見せつけた。楽しそうに一日中採取している姿はニャーゴにとって懐かしく思た
その夜は盛大に酒場で盛り上がる、ヴィクトーが大の動物好きだったりオーガスのなんでも調合癖だったりベアトリスのシスコンが発覚、みんなとの距離が縮まった一日だった
…
2年ほど経ってクレアは17歳になった
冒険者ギルドにいつも通り集まっているとアリアから昇級試験の打診がきた
「鉄塊の皆さま、そろそろ昇級試験を受けられてはいかがでしょうか?キマイラをほぼ損害なく倒せる皆さまでしたら5級の昇級試験に推薦することができます。当ギルドとしても優秀な冒険者がいてくれるのは大変心強いので私から推薦いたします。」
5級以上の試験は基本パーティ前提依頼となり、単独でも挑む事はできる。治癒士などの支援職は単独で5級以上を目指すことが難しいため、パーティで参加し、達成後全員が試験達成等級へと繰り上がるという措置があるそうだ
等級が上がれば当然危険にもなるがその分見返りは大きい。価値の高い魔力武具が手に入る確率もあがる。人型や巨大な魔物が増えるからだ。
「試験の内容は森林ダンジョン、キノコエリアの赤屋根茸(レッドルーフマッシュルーム)の討伐です。旅士がいらっしゃるのでそれほど苦戦はされないと思われますが、いかがでしょう?」
ヴィクトーは皆の顔を見て考えている
「うーん」
オーガスが尋ねる
「何悩んでるの?魔力武具とか欲しいって言ってたじゃん。受けなよ」
「いやしかし、かなり危険が伴うようになるんだぞ?」
「俺は構わないよ」
ベアトリスが続く
「私もいいわよ」
クレアも続く
「冒険なら大歓迎!」
ヴィクトーは苦笑いした
「ハハ、気にしすぎだったか。受けよう」
アリアは微笑みながら開始手続きに移った
「では試験開始の手続きをしておきますね。キノコエリアからは環境が非常に厳しくなります。胞子の対策を行ってください、また赤屋根茸は大きな傘から毒性の胞子を大量にバラまくためこちらの対策も合わせて行ってください。成功をお祈りします」
オーガスが胸を張って答える
「僕の出番だね!旅士が冒険に必須と言われる理由を見せてあげる」
ヴィクトーがオーガスの肩を叩く
「頼りにしてるぞ!」
「任せて!出発は明日でいい?準備をするよ」
「わかった、じゃあ皆明日の朝ギルドに集合だ」
「「「はーい」」」
翌日、冒険者ギルド
全員がギルドに集まると森林ダンジョンへ向かった
湧き水エリアまでは難なく進み、戦闘をいくつか戦闘を重ねながらキノコエリアへたどり着く
キノコエリアは巨木に囲まれたエリアで大小様々なキノコが並んでいた
派手な色合いのキノコや足場に使えそうなほど丈夫なキノコ、巨大な樹木に匹敵するほど高く、大きな傘を持つキノコ
さまざまなキノコが群生しており、キノコの森と言っても過言ではなかった
オーガスがマスクを取り出すと全員に配った
「ここからこれをつけてね、胞子を吸い込むのを防いでくれる。ここの胞子を吸い込むと息苦しさを感じるようになって体力を奪われやすい、毒性の強い胞子も防いでくれるよ」
オーガスはニャーゴにもマスクをつけた
「はい、これはニャーゴの分。サイズはあってるかな?」
ニャ~~
(ちょっと息苦しくなるねコレ)
「気に入ったかい?よーしよし」
(懐かしいなこの勘違い)
クレアは気づかれないようクスクス笑っていた
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