第22話 - 森林ダンジョンの罠
ニャーゴは木の枝で水をやり過ごす
(クソッ、クレアが流された。早く見つけなきゃ)
グリーンゼラチンたちは水の魔術で勢いよく水柱を放水してくる
ニャーゴは水柱を躱し、グリーンゼラチンを睨みつける
”邪眼”
グリーンゼラチンたちには効かず、何事もなかったようにニャーゴへ飛び掛かってきた
(くっめんどくさい…)
ニャーゴは躱した
(飛び掛かってくるとき薄く体を伸ばしてくるな。核が狙えるかもしれない)
しばらく戦闘を続け、機会を待つ
するとグリーンゼラチンが飛び掛かってきた
(ここだ!)
ニャーゴは尻尾を蛇に変形し、尻尾の先から闇魔術を使う
”影槍” (シャドウスピア)
尾蛇から伸びた黒い槍は勢いよくグリーンゼラチンに突き刺さり、核を貫くとグリーンゼラチンは溶けていく
残りも同じ手順で素早く片付け、クレアの匂いを辿るため地面を嗅いだ
(ダメだ、匂いが流されてる)
周りよくよく観察する、クレアが流された方向へ向かうと水の通り道があることに気づく
(この跡、頻繁にここで水が流れてる…グリーンゼラチン達のところに水源はなかったぞ)
水の跡をたどり、崖にたどり着くと下からクレアの叫び声が聞こえてきた
「や!や!!」
俺は鼓動が早くなるのを感じた
(あの男。グリーンゼラチンを利用して同じような事を何度もしているな)
俺は崖下の池へ向かって飛び降りた
バシャーーン!!
大きな水しぶきが周りに広がる、池から飛び出し周りを見渡すと洞窟の中で、アントムがクレアに覆いかぶさっている
俺は激しい殺意に支配された
シャァァァ
”邪眼”
アントムは硬直し、クレアはわき腹を抱えながら洞窟から這って出てきた
(こいつ、クレアを攻撃したな)
全身の毛がざわざわと逆立っていくのがわかる、俺はさらにアントムに攻撃を仕掛けた
”呪眼”
赤くぼんやりと光る目で睨むとアントムはガタガタと震えながら目や口から血を吹き始める
「ニャーゴ、あたしは大丈夫だから…」
クレアの声は聞こえるが怒りが収まらない
”氷槍”(アイススピア)
氷の槍を浮かべるとクレアが叫び始める
「や!ニャーゴダメ!そんなことしたら捕まっちゃう!一緒にいられなくなる!」
俺はブルブルと震えながら怒りを抑え、魔術を解いた
するとクレアは急いでアントムのところへ行き、応急処置を施す
「やりすぎだよニャーゴ」
ニャ~ゴ
(なんでそいつを助けるんだ、魔物に食われたことにすればいいだろ)
「ダメ!アリアさんも言ってたじゃない、ギルドから疑われちゃう」
ナ~
(まぁ、そうだけど。俺はそいつを許さないからな)
俺が冒険者だった頃、こういうやつは結構いた
頻繁にメンバーが入れ替わるパーティーはギルドから目を付けられ、降格処分などされる対象になる。ギルド自体は素行の悪さなどは知っているが、好んで危険が付きまとう依頼を行う人は多くないため注意は促すが放置しているのが実情だ。殺人や他の冒険者などを陥れるやつがいる場合さすがに街の守衛などに引き渡し、牢へ入れる事になるが、冒険者なんてだいたい訳アリが多いので前科を恐れないやつも多く、この手の問題はあちこちで起きている
ニャーゴォ
(処置はしていいけどちゃんとギルドに説明して牢に入れなよ)
「うん、あたしだって悔しい」
…
アントムの処置を終え、手足を縛る、洞窟の近くにマルコも倒れていた
かろうじて息はあるが池に着水できなかったようだ
二人をクレアが縛っている間、俺はグリーンゼラチンの所へ戻り、納品予定の素材を獲得。アントムとマルコを乗せて帰った
冒険者ギルド
クレアがギルドへ帰り、アリアへ事の顛末を報告する
街の守衛が呼ばれ、二人は牢へ運ばれていく、ニャーゴがわからないようにアントムへ呪眼を使って運ばれる最中にまた血を吐いていた
アリアがクレアへ大きく頭を下げて謝る
「クレアさん、ごめんなさい。こんなに質が悪かったなんて…」
「や、仕方ないよ…口封じを徹底してたみたいだし…情報収集を怠ったあたしも悪いよ」
アリアは申し訳なさそうに話す
「もしまだこの街で依頼を受けてくださるなら、評判のよいパーティを紹介させてください。”鉄塊”というパーティで重装備の盾士がいるパーティです。依頼達成数こそそう多くありませんが、必ず全員が帰ってくるため安心です。募集はしていないんですがギルドからお願いしておきます」
「う…うん」
「本当にごめんなさい、今日はお疲れだと思うので明日お話だけでも聞いてください。事情もこちらから説明しておきます」
クレアは少しうつむいて考えたあと、返事をした
「……わかった、明日朝また来るよ」
「ありがとうございます。ゆっくりおやすみください」
クレアは依頼の達成報酬を受け取り、素材を街で換金すると宿へ戻った
帰るなりベッドへ飛び込むクレア
「はぁ~、ひどい目にあった」
ナ~
(今回は特に酷い例じゃないかな、あいつも一生牢から出られないと思う)
「…騎士様と冒険できると思ったのに…」
(あんまり懲りてないな)
「ねぇ、ニャーゴ!騎士様ってね、全身を銀の鎧で包まれてて、剣と盾を持って戦う人なんだよ?馬にも乗れてさ、忠義を尽くした主に一生を捧げて仕えるんだって!女の子ならこんな素敵な男性に憧れると思わない?明日紹介してくれるって言うパーティにいるかなぁ」
(騎士は国からお金貰ってるんでギルドの依頼はしません)
俺は呆れながら横たわった
(いつまでもウジウジされるよりマシか…)
そのあとも寝るまで延々と話し続けるクレアに尻尾で返事をしながら寝た
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