第20話 - 樹の洞
俺はうつむいた
(傲慢…)
「人の罪だよ、人である限りこの罪から逃れることはできない」
(俺も昔はそうだった?)
「間違いなく、気づいていないだけさ」
(…)
「さぁ、君が選ぶことのできる道を示そう、今回は3つの道がある」
それぞれの姿が頭の中に流れ込んでくる
・奈落猫
黒き蛇の尾を持ち、漆黒の毛、強い闇魔術、そこそこの水魔術が使える
敵を弱体化させる魔術、スキルも多く使えるようになる
体は大きく、直立すれば人間の大人ほどはある
・沼底から覗く猫
黒い緑色の長い毛をもつ、強い水魔術と毒が使えるようなる
体は中型で直立すれば人間の子供より少し大きいくらいだ
・金毛大猫
金色の毛と長いたてがみをもつ、体は非常に大きく、直立すれば人間の大人をも超える
特筆するべきは力の強さ、竜以外の魔物ならほとんどの魔物に有効打を与えられるだろう
黒い毛が好きだから金毛大猫は除外、その他は闇属性の派生という感じだ
順当に行くなら奈落猫だろう、弱体化スキルが増えるのは嬉しい、クレアも強化魔術が使えるからある程度無茶できるようになるだろう
(奈落猫)
バステトは俺に抱き着くと、頭と顎を撫でまわす
「なーん。どんどん大きくなってしまうね、膝に乗ってた頃が懐かしいなぁ」
(そういえば、バステトを呼ぶとどうなるんだ?)
「ん?日に一度、一日続く祝福を授けてあげるよ。赤い実は供物さ、お喋りしたいときに呼んでもいいんだよ」
(暇なの?)
バステトは立ち上がり、腰に手を当て、そっぽを向いて不機嫌な態度を示した
「なーん。失礼だな!女神はそういうもんなの」
(ハハ、なるだけ呼ぶようにするよ)
「なーん。優しいね、名残惜しいがお別れの時間だ、側においで、一緒に座ろう」
バステトは木に向かいあぐらをかく、俺は側に寝転んだ
「なーん。彼の者は今より奈落猫として生きる、我が御名の祝福を授かるだろう」
大きな木から目が眩むほどの光が溢れ、目の前が真っ白になった
…
目が覚めるとオーヴィルの宿の部屋だ
クレアは寝ている、もうすぐ夜が明けるくらいの時間だ
いつも通り体の確認をしよう
かなり体は大きくなった、横たわるクレアよりも大きい
尻尾はいつもと変わらない、蛇になるんじゃなかったか?
フリフリ振ってみると、尾の先が割け、蛇の目と牙が生えた
ある程度伸び縮みするようだ、これなら首元の鞄に自分でモノが入れられる
体毛は黒い、腕や足も太くなり一層力強くなった気がする
いろいろ試しているとクレアが目を覚ました
「ニャーゴ、また形が変わったね」
ニャ~ゴ~
(うん、また強くなった)
「ふふ、明日もよろしくね」
そういうとクレアはあくびをしてまた眠りについた
俺も明日に備えて今は休もう
…
翌朝
朝食を済ませて冒険者ギルドへ向かう
冒険者ギルドへ着くとクレアはアリアに話しかけた
「アリアさ~ん、樹の洞の人達って今いるかな?」
「はい、奥のテーブルに座っている二人組が樹の洞の方たちです」
アリアは元気よく駆け、樹の洞のメンバーに声をかけた
「こんにちは!アリアさんから聞いてメンバーを探してるって聞いてきました」
樹の洞のリーダーらしき男が立ち上がり、声をかける
「お?参加希望者かい?ちょうど森林ダンジョンに向かうところだったんだ一緒に行こう」
男は30歳くらいの小汚い無精ひげを生やしており、舐めまわすようにクレアを見る
「お~、こんなに可愛いお嬢さんが冒険者とは。俺たちにもツキが回ってきたなぁ」
もう一人いた男も立ち上がり、挨拶をした
「や、やぁ、僕はマルコ、この人はリーダーのアントム。よ、よろしく」
アントム 弓士 30歳 ♂ 5級
マルコ 剣士 29歳 ♂ 7級
「あたしはクレア、7級の魔獣士です。この子はニャーゴ、よろしくお願いします」
クレアは笑顔を保っているがちょっとだけ後ずさりした
「(騎士様にはほど遠いな~、だいぶ老けてるし…そううまくいかないか…)」
アントムがクレアの手を掴み、腰に手をまわしてテーブルへ案内する。顔が近く、息がかかるほどに
「ささ、これから依頼の説明をするから一緒に座って」
「え、あ、はい…(ちょっと近い、気持ち悪いな)」
クレアは不安そうな目で俺を見た
俺はクレアの側に行くと、クレアはそっと俺の体に手を置いた
アントムが依頼の内容を説明した
森林ダンジョンは4つのエリアに分かれており
入り口の森林エリア、湧き水エリア、キノコエリア、大木エリアがある
その中の湧き水エリアに行くのが今回の依頼だ
湧き水エリアにいる大型のスライム “グリーンゼラチン” の討伐
体液を二つのフラスコに回収し、納品すると依頼達成となる
中級の解毒ポーションに使う材料だ
報酬以外のモンスターは素材を換金後、山分けとなる
魔石は今までだと全部ニャーゴが食べていたが道具屋でも買えるので換金後いくつかめぼしいものを買う事にした
アントムはクレアに話す
「お嬢ちゃんは森林ダンジョンは初めてか?」
「はい、そうです」
「オーケー、今回討伐するグリーンゼラチンは毒を持ってる、解毒薬を忘れるなよ。あと体が大きいから槍や矢でないと核に攻撃が届かない、あとは魔術だな。戦う時は俺を守るようにしてほしい」
「了解」
「マルコも一緒に戦ってくれるから安心してくれ。じゃあ準備ができたら行こう」
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