第18話 - オーヴィオ

オーヴィオ


俺とクレアはオーヴィオにたどり着いた

街道沿いに歩いていればこのあたりの魔物は混沌の猫には襲い掛かってこないみたいだ

ひたすら喋りまくるクレアに疲弊しながらやっと到着した


街の中を一通り見て回り、宿を決めて荷物を下ろすと早速冒険者ギルドへ向かった


オーヴィオ冒険者ギルド


受付のアリアにこの街の事を聞いた


「オーヴィオは初めてですか?」

「うん、あたしはクレア、7級の魔獣士。こっちはニャーゴ。この街の事を教えて」

「それではオーヴィオの依頼がどのようなものかお伝えします」


オーヴィオは近くにあるダンジョンで取れる素材で繁栄した街で、依頼に関しても商人達から必要な素材を取ってくる内容のものがほとんどだ

ダンジョンは二つあり、洞窟型の初心者、ソロ向けダンジョン。森林型のパーティ向けダンジョンがある

ダンジョンは1級魔術士以上でなければ破壊することができず、定期的に荒らさなければ魔物が溢れ、近隣を襲うか、ダンジョン内での争う魔物同士が変異を重ね、深く、強くなっていく、手に負えなくなった場所は国の軍隊が動くこともあるとか


オーヴィオ洞窟のダンジョンはあらゆる初心者に愛用され、武装した商人集団すら入っていくことがあるため体験するための場所としてもはや観光名所になりつつある

また、冒険者を目指す駆け出しの修行の場でもある


オーヴィオの森林ダンジョンはそこそこ広く、魔物、植物が多彩で質もいい。そのため依頼も多くなる


「クレア様はダンジョンのご経験はありますか?」

「や、まだない」

「それなら、等級ごとに別れた掲示板が二種類、洞窟用と森林用がございます。まずは洞窟型でダンジョンを体験されるのはいかがでしょうか」

「ふんふん、丁寧にありがとう!」



洞窟ダンジョンの掲示板


「うーん…あ、これにしよう」


ニャーゴ

(何にしたんだ?)


「洞窟狼 “ケイブウルフ” の変異種討伐、洞窟狼なら8級だし、変異してもそんなに強くないでしょ」


ナ~ォ~

(6級くらいかな?腕試しにはよさそうじゃん)


「よし、決めた、アリアさ~ん、これやりまーす!」

「洞窟狼の変異種ですね。洞窟ダンジョンの2Fであれば極稀に、3Fであれば3つも巣をめぐる頃には1回は会えると思います。お気をつけて。」


クレアはアリアに依頼受注処理をしてもらい、洞窟へ向かった



オーヴィオ洞窟ダンジョン


洞窟の入り口には商団が出店を開いており、依頼外の素材などを狙って不要素材の買い取りやキャンプ道具、魔物用の罠や小道具などが並んでいる


「へ~商魂たくましいねぇ」


ナ~

(それだけここが安全かつ人が多いんだろう)


「それだけ人がいれば3Fくらいまでならすぐ行けるかも」


3Fというワードに反応した商人が声をかけてくる


「お、お嬢ちゃん若いのに3Fに挑むのかい?3Fからは群れが多くなる!この匂い玉を使えば逃げると時に重宝するよ!ポーションは足りてるかい?毒抜きはあるかい?ここは………」

「ちょ、ちょっと待って!まだこのダンジョン行ったことないから様子を見に行きたいんだ、必要になったら買いに来るよ!」


クレアは逃げるように洞窟へ入っていった


「はー、一度にあんなに喋れるってすごいねー何言ってるかわかんないよ」


ンニャニャ

(一つ買ったら次も買わされそうだね)


「ほんとだよ。さ、気を取り直して慎重に進もう!初ダンジョン!」


洞窟とはいってもそれなりに広く、人が4人くらいは並べる横幅がある

しばらく進むと少し大きめの空間に出た、天上には岩のつららが並び、壁は湿っている。


「ここはちょっと広いね、あちこちにスライムが溶けた跡がある」


ニャ~ゴ

(人が多いからか、ここは素通りして2Fまでいけそうだね)



2F


「何事もなく来れちゃった、途中の魔物はほとんどいなかったね」


ナ~

(何人かとすれ違っただけだったね)


「みんなニャーゴに驚いてたね」


ニャーゴォ

(魔獣士は珍しいのかもね)


いくつかの分岐を経て大きな部屋にたどり着くと洞窟のコケを食べる豚のような魔物が2匹ほどいた


「む、苔イノシシかな?」


苔イノシシはその名の通り苔を食べるイノシシだ、草食だし小型だが怒るとひたすら突進を繰り返す魔獣だ


「刺激しなきゃ無害だし、通り過ぎちゃおう」


ナ~

(肉はうまいんだけどね~)



3F


「簡単に来れちゃったね、目が合うだけで襲ってくるようなのがいなかった」


俺はクンクンと空気の匂いを嗅ぐ

腐敗臭と血の匂いがする


ニャーゴーォ

(ここから肉食が出るね、血の匂いがする)


「お!やっと冒険らしくなってきたね。張り切っていこう!」


洞窟は3Fまで来ると通路は2Fまでの広い空間と同じくらいの広さが続く

分岐はいくつもあり、巨大な空洞が迷路のように入り組んでいる印象だった


クレアは慎重に痕跡を探しながら進む

しばらく歩いて岩の裂け目を通ろうとしたとき、洞窟狼とバッタリ鉢合わせた


グルルルル


洞窟狼は顔を合わせるや否やクレアに噛みつこうとする

クレアは驚いて身を引き、尻もちをついた


「あいたたた」


ザザザザザ


6匹はいるだろうか、裂け目から一気に狼たちが出てきて俺たちの前後を囲んだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る