第16話 - リスホルン森林

リスホルン森林


リスホルン森林前は街の西にある森だ

街道沿いに1時間ほど歩くとたどり着く


森は鬱蒼としており、背の高い木が多い、一本一本の間隔はそれなりに広いが高いところにある木の枝は横に大きく広がり日光を遮断する、薄暗く、禍々しい植物が多く自生している


今回はここでジャイアントスパイダーとグライダースネークの討伐が目標だ

それほど珍しい魔物ではないが活動する時間が違う


ジャイアントスパイダーは昼を中心に巣を張り、木の上で獲物を待つ

かなり大きく牛ほどはあるだろう

見つけるのは簡単だが高いところで巣を張るので討伐には少し工夫がいる

毒はないが強靭な糸を駆使して獲物を拘束し、高いところに釣るしてしまう

そうなると脱出できたとしても落ちて死んでしまう、一度捕まるとかなり脱出が難しい魔物だ


グライダースネークはその名の通り滑空する蛇

細長く、大きく開けた口は大人でも一口で飲み込んでしまえる

夜間に行動し、独特の器官で獲物の位置を正確に把握する

木の枝などに擬態しており、通りかかる獲物に上空から飛び掛かる

即効性の麻痺毒を持っており、噛まれるとあっという間に身動きが取れなくなる


同時に両方を相手をすることはないだろうが両方とも隠れるのがうまく

活動する時間がそれぞれ違うため休憩などをうまく行う必要がある


7級冒険者ともなると街から遠い場所に出かけることもある

魔物が近くにいる状況でも安全を確保して旅ができる実力を試されるわけだ


そしてこの森にはほかの魔物も当然いる、目的を達成するために目標へうまく接近する事も大事という事だ


ニャーゴ

(クレア、今は昼だ。どうやって進む?)


「そうね、まずは道を作りながら進もう。安全に休憩できる場所を探すんだ。道中敵に会ったら無理せず引く。地の利は相手にあることを常に意識して安全なルートを開拓するんだ」


ナ~ン

(正しい判断だと思うよ)


「ふっふ~。もうあの頃の草娘とは違うのだよニャーゴ君」


ニャニャ

(ハハ、頼もしいね。それじゃ進もうか)


しばらく前からクレアの教育のために先頭を歩く訓練をしている

今回もクレアが先頭だ、聴覚や嗅覚が人間よりも鋭い俺が後ろを警戒したほうがよいだろうという事でこの試みが始まった


意識を割く方向が絞られるだけでもかなり疲労軽減の効果がある

クレアは視覚を中心に前方に集中することができ、俺は聴覚と嗅覚を使って後方を見る

そろそろ試験に集中しよう


昼間なのでジャイアントスパイダーを見つけたいところだ

追跡のコツはいきなり本体を探そうとせず、痕跡を探すところから

フンを見つけられれば足跡と同じくらいの情報を持つ、形や鮮度で判断できるのだ


注意深くクレアが進んでいく、ナイフで植物を切ったり木に傷をつけて目印をつけながら

しばらく進んでいると小動物の骨が見つかった


これも重要な情報だ


「骨は散乱しておらず、まとまって一か所に落ちている」

「骨の状態は渇いており、近くに皮や肉なども落ちていない、丸飲みされたと予想される」

「近くに這いずった後はない、肉食の鳥類だね」


ナ~

(俺もそう思う)


「そして鳥類の足跡も近くにはない、木の上から消化できなかった骨を吐いたんだろう」

「という事は食事をしてから暫く経過した後だ、吐く場所は落ち着いている場所で行う。つまり巣が近い」


ンナーゴ

(そうだね、そしてここの鳥は蜘蛛の餌だ、という事は)


「ジャイアントスパイダーも近い」


ニャニャ、ナ~ゴォ

(その通り、さすがに鳥の巣の近くにはいないだろうからもう少し周りを見てみよう)


思いのほか早く目標に近い痕跡が見つかった

クレアは周辺を見渡すといくつか木漏れ日があることに気づく


「3か所くらい木漏れ日がある、きっと鳥たちがそこから帰ってくるはず、そのどれかにジャイアントスパイダーは巣を張ってるんじゃないかな」


ニャ~

(ひとつずつ見て回ろう)


「うん」


一か所ずつ丁寧に見て回っていると、木の枝に隠れて細い糸が見える


「ニャーゴ、あったよ!ジャイアントスパイダーの巣だ。でも姿は見えない」


ニャーゴ

(見えるところにはいないだろうね、ちょっと様子を見てみるよ)


俺は木を駆け上がり、爪をひっかけて登る

ゆっくりと、刺激しないように


かなり高いところまで登ってきた、糸が近くで見える

よくよく匂いを嗅ぐと糸独特の匂いがする、匂いが強い方向にいるだろう


左右をキョロキョロするも見当たらない、匂いもそれほど強い場所はない

ここは捨てた巣なのかな?ジャイアントスパイダーは巣を片付ける習性がある


糸を残したまま移動しないはずだ、もしくは他の何者かにやられたか

俺はいったん戻ろうと思い、クレアを確認した


!?!?


(クレア!後ろにいる!)


ジャイアントスパイダーは既に糸で降りており、クレアの後ろにいた

クレアはずっと俺を見ていたので気づかなかったんだろう


クレアは慌てて後ろを見ると自分よりも遥かに大きい蜘蛛が見ていた


「うわっ!やば」


ジャイアントスパイダーは距離を取ろうとするクレアを見て地面に降り、素早く飛び掛かる


(やらせるか!)


俺はジャイアントスパイダーにスキルを使う


”邪眼”


ニャーゴの目が紫色に怪しく光る

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