第12話 - 屋敷のネズミ

ギルは腕を組んで考え、話した


「うーん、なるほどなぁ。10級の依頼を受けてくれる大人がいればまぁいいか」


クレアは明るい顔をしてギルドの中を見渡した

みんな顔を伏せてしまう、そっと近づいても顔を背けられた


俺はクレアの前に立ち、話しかけた


ナ~

(10級の依頼じゃ採算が合わないんだよ、いい加減あきらめな)

「あ、そういう事かぁ…じゃあ、お金を前金で払えばいいって事?」

ナァ~ン

(そうだけどそうじゃないだろ!諦めさせるために難しくしてあんの)


一人の冒険者が席を立ち、クレアに声をかける


「やぁ、お嬢ちゃんその依頼事を教えてくれないか」


男は非常に大きく、でかい、髭を生やした顔で大きな盾を背負っていた

大人の体二人分は有ろう盾、普通の大人の1.5倍はあろう体で膝をつき、クレアにやさしく話した


「お嬢ちゃん、俺はバルトゥス。俺でよければ手伝うぞ、依頼料はいらん。今回は特別サービスだ」


ニャーン!!

(バルトゥス!生きてたのか。ティベレ、ティシール!)


俺は我を忘れて話しかけてしまった

クレアは俺の声を聞くと確かめるように質問する


「ありがとうおじさん、仲間のお名前はティベレとティシールっていうの?」

「え?あ、そうだ。知ってるのか?」


(あ、いかん。クレアが警戒される)


ナ~ン

(クレア、その人たちはインモータリティだ。みんな1級の冒険者だぞ)


クレアは俺を見て話した


「そうなんだ。みんな1級の冒険者、インモータリティ?」


バルトゥスは俺を見る


「なるほど、博識な猫だな。お嬢ちゃんは魔獣士かい?」

「そう!私はクレア、この子はニャーゴ」

「そうか。これから俺たちはパーティだ。よろしく頼む」


クレアは少し警戒した様子でバルトゥスに話しかける


「あの、ごめんなさい。おじさんはどうして手伝ってくれるの?」

「あぁ、君みたいな小さな子が護衛を雇って街の人の依頼を手伝うんだろう?ちょっと意地悪な条件がついてるみたいだからな、手伝ってあげたくなったのさ」

「そうなんだ。おじさんいい人なんだね、ニャーゴはどう思う?」


ナ~

(バルトゥスが来るのに断るやつは普通はいないな、竜に挑める男だ)


「竜!?そんなに凄い人なの?」


クレアはバルトゥスをまじまじと見た


「お髭がつよそう」

「ハハ、手入れは結構難しくてね。髭も手強いぞ」


バルトゥスは俺をじっと見つめる


「君は、どこかで会ったことあったかなぁ?」


バルトゥスはクレアを見る


「ニャーゴとはいつから一緒にいるんだい?」

「1年前くらいからだよ」

「そうか(ヨルンがいなくなった時期だ)」

「友人に似てると思ったけど違うだろうな、じゃクレア依頼受けておいで」


バルトゥスは仲間の方を見て声をかける


「そういうわけだ、ティベレ、ティシール。ちょっと行ってくる」

「日が傾く前に移動するからな~それまでに帰れよ」


ティベレが返事をし、ティシールが手を振る



依頼主の館へ向かう途中、バルトゥスと話した


「クレア、ニャーゴとは話せるのかい?」

「うん!従魔の契約をしたら喋れるようになったよ」

「そうなんだ、ヨルンていう男の事を知らないかな?」

「ヨルン?ううん、知らない」

「じゃあ、ニャーゴなら知ってるかな?」

「ニャーゴ、しってる?」


ナ~

(知ってる)


「ニャーゴ知ってるって」

「そうか、竜と戦ってる時にその男が最後にしたことを知ってるかな?」


ニャ~ゴ

(閃光爆弾を投げた)


「閃光爆弾?を投げたって」


バルトゥスは鼻で笑った


「まさかな…竜に食われると新しい命を得る事があるらしい。もしかするとお嬢ちゃんはものすごい冒険者と一緒に旅しているかもね」

「えー?バルトゥスさんはすごい人でしょ?1級なんでしょ?」

「うん?あぁそうだね。そうだった(噂が本当なら、ヨルンは食われたんだな…)」


クレアはバルトゥスの顔をみて驚いた


「お、おじさんどうしたの?どこか痛いの?」


バルトゥスは涙を流していた


「あ、ああこれは…大丈夫だ。昔一緒にいた仲間がはぐれちゃってね。思い出したんだ。(一年前に生まれたばかりの猫が俺たちの噂を知っているはずがない、まして戦った内容まで…ヨルン、みんな探したんだぞ…)」

「そ、そっか…ごめんね。」

「いやいや、大丈夫だよ。急にごめんね、屋敷へ行こう。(どういうわけか今はお嬢ちゃんの騎士をしてるのか…お嬢ちゃんはヨルンであることを知らないようだ。何か理由があるのかもな…話したいことは山ほどあるんだぞヨルン!)


俺は背中にバルトゥスの視線を感じて悪寒がした


(バルトゥス怒ってそうだな…バラさなきゃよかった…)


屋敷へ着くと執事が地下へ案内してくれた

地下へ通じる扉の前へ着くとバルトゥスが盾を構え、準備をする


「よし、クレア、俺は準備オーケーだ。そっちは大丈夫か?」

「私は大丈夫!ニャーゴいける?」


ナ~

(待って、ちょっと様子を見てくる)


俺は中に入って聞き耳を立てた

ガサガサ ヂゥー ゴソゴソ


中はレンガ造りで湿り気があるがネズミのフンの匂いが充満している

そこかしこから匂う。足音の数もすさまじい

おそらく100匹近いネズミの魔獣だろう、これだけの数がいるならボスがいる可能性もある


(誰だこれを10級で出したバカは!クソッさすがに量がヤバイ。バルトゥスは耐えられるがクレアは無理だ)


俺は扉の前に戻るとクレアに話した


ニャーゴ

(クレア、これは無理だ。破棄しよう)

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