第11話 - 生意気な草娘

ゴードンさんに貰った鞄をかけて

アイサおばさんに貰った鞄をくくりつけて


今朝の食事を済ませると今日も冒険者ギルドへ飛び出していく


「いってきまーす!」


ゴードンとアイサが送り出した

依頼を受けるのはどちらかがついていくのが条件だったが、ギルドの協力もあり一人でも行かせるようになった


毎日毎日飽きもせず薬草をむしる少女は今や冒険者ギルドでも有名な草娘

クレアは今日も冒険者ギルドへ顔を出す


「こんにちはー!薬草取りに参りました~」


「お、今日も来たなお嬢ちゃん」

「元気いいねぇ今度俺にも薬草とっておくれよ」


すっかり顔を覚えられ、冒険者ギルドの名も知らぬ人たちに声をかけられるまでになった

挨拶をしてくれる人たちに軽く会釈をすると、今日も薬草の依頼はないかと依頼掲示板を覗き込む


ここ数日ずぅっと朝から晩まで10級の依頼を一日に複数こなすものなのでさすがに依頼が減っている

今朝は2枚しか張り出されていなかった、ショックを受けるクレア


「うぅ…ニャーゴ卿。我々はもうすぐ食いっぱぐれてしまうぞ」


ナ~ゴ

(あんだけやってりゃ依頼も減るわ)


最近はどこで覚えたのか貴族の真似事がマイブームらしい

ひとつでもできるものはないか、と読んでみる

ネズミ退治とキラーバイトスネーク退治、どちらも薬草採集ではない


「う~ん、今日は薬草ないのかぁ…キラーバイトスネークはあたし無理だし怖いし」


ニャッ

(俺はやれるけどな)


「ネズミ退治ってどんなんだろう?ニャーゴ猫だしできるんじゃないかなぁ」


ンナ~

(魔物になったからな、そこらへんの猫と一緒にしてもらっては困る)



クレアはニヤリと笑い、顎に手を当て偉そうにニャーゴへ語る


「お?やる気だねニャーゴ卿。ふっふっふ、この依頼を達成すれば後世まで私が責任を持って語り継いであげよう」


ニャッ

(ハイハイ、許可が下りればな)


奇跡的に掲示板の低い位置へあったので依頼にはクレアでも手が届く

さっそくメリッサに持っていくと怒られた


「おやおやおやおや~?クレア~?君は先日どんな約束をしたのか覚えているのかね~?」

「え、ええ。もちろんですとも。ホホホ」


クレアは目をそらしてタジタジだ、ギルがタイミングよく奥から現れた


「お、草娘。今日も薬草取りか?精が出るな」

「ちょっと!マスター聞いてくださいよ」


メリッサが依頼を見せて事情を説明すると、ギルは怖い顔で睨みつけてきた


「ほほ~ぅ、クレア。俺が許可したのは薬草集めだけだったはずだぞ?」

「いや、あの。顔怖い」


もうクレアは目も開けていない

クレアは勇気を振り絞って反論した


「で、でも薬草はちゃんと取れてるでしょ!スライムだってやっつけられる。10級冒険者としてちゃんと依頼はできるもん!」


ギルは立ち上がると腕を組んだ


「まぁ~、そうなんだよなぁ。二又なんてこの辺にはいない魔物だし、スライムくらいなら余裕で倒すし。まぁできるっちゃできるだろう」

「そう思うでしょ?ねぇギルおじさん。あたしの顔に免じて!!」


ギルは口元が緩みながらも一喝した


「ハッ!そういうのは偉くなってから言え」

「うぐぐぐ、オ、オホン!私を誰だと思っているのだねギル伯爵。リスホルンの草娘と言えば誰だね?ん?」


ニャ~

(有名と偉いは違うんだよなぁ)


ギルは口を押えて笑いを堪え始めた

様子を聞いていた冒険者たちもクレアを応援しはじめる


「ハッハッハ、マスターやらせてやれよ~」

「お嬢ちゃんもっと言えー!」

「ギルドの報酬増やせよ~」


ギルは一喝した


「うるせーぞ半人前ども!報酬は適切だろーが!」


ヤジを飛ばす冒険者たちはサッと真面目な仕事の話をしているフリをし始めた


ギルはクレアとニャーゴをまじまじと見る


「条件がある」

「なに?」

「ゴードンさんとアイサさんの両方がいいって言ったらまた来い、そしたら許可してやる」

「ほんと?わかった!ちょっと行ってくるね」


クレアがギルドを出ていく姿を見届けたギルはつぶやいた


「やれやれ、ゴードンさんアイサさん、ちゃんと止めてくれよ…」

「生意気なくせに憎めないんですよね~」


メリッサもため息をつきながら遠い目をしている



クレアは家に戻るとゴードンとアイサに相談した

ゴードンとアイサは早速来たかと言わんばかりの顔でため息をつく


「あんたのその行動力ならすぐそうなると思ったよぉ~」

「それにしても早いなぁ、まだきて10日も経ってないのに」

「あんた、それで依頼はどこでやるんだい?」


クレアは答えた


「街の中のお屋敷だよ!地下の倉庫にネズミがいるんだって。ニャーゴがいてくれたらすぐにやっつけてくれると思うの」


ゴードンとアイサはうつむきながらしばらく考えた


「うーん…」

「ねぇ!ゴードンさん。お願い!」

「はぁ…」

「アイサおばさん!危ないとこはニャーゴに任せるから!」


ニャッ

(おい待てそれはなんか違うだろ)


ゴードンは諦めたように話し出した

「わかったよ、ただし、一人冒険者の仲間を探しておいで。大人のね」

「そうねぇ、それなら、まぁ…」


クレアは明るい顔で返事をするとすさまじい勢いで家を出る


「ありがとう!行ってくる!」



バン!


勢いよく冒険者ギルドの扉を開け、キメ顔でクレアは登場した

ギルが呆れた顔で立っている


「おいおい、ゴードンさんとアイサさんも止めらんねーのかぁ…」

「ずいぶん早かったね。嘘ついたらゆるさないよ~?」


メリッサはクレアを睨みながら注意する


「ちゃんと話してきたよ!大人の冒険者を一人連れていくならいいんだって」

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