第10話 - 初めての依頼

冒険者ギルドへ戻り、メリッサに登録をしてもらう

冒険者にはランクがあり、一番下が10等級、上は1等級まで

さらに国家に認められれば、国家魔獣士など、職業に冠がつく


クレアはもちろん10級魔獣士

それなりに実力のある冒険者なら7級などから始められるそうだがクレアは未成年

成人する15歳までは昇級も認められない


等級ごとに受けられる依頼に制限があるため10等級だとほとんどが採集や家事手伝いなどだ。単価も安い


それでも初めての冒険者という称号にクレアははしゃいでいた


説明を終えたメリッサが話しかける


「以上、簡単な冒険者ギルドの解説でした。入り口付近にある掲示板から依頼を選んで私のところに持ってきてね。そしたら依頼開始だよ。あ、あとこれがクレアの身分証」


そういうと銅のカードを渡された。クレアの名前と街の名前が掘ってある


「それを見せれば門番さんは通してくれるよ。早速依頼を選んでおいで」


ナ~ゴ

(ようやく終わったか。クレアは何受けるんだろうな)


クレアが驚いてこちらを見た


「ニャーゴ!?今のニャーゴの声??」


ンニャン

(そうか、会話できるようになったんだな)


「わぁ!本当に会話できるの?嬉しい!!」


俺は妬ましそうにクレアをジトリと睨みつけた


ンナゴロゴロゴロ

(ほんとうにな。今までどれだけ勘違いに悩まされたか)


「あ、アハハ…私の言葉はわかってたんだ…」


ニャーゴ

(魔女の家にいる頃から聞こえてたよ)


クレアは赤面した


「ウッソ!そんなに前から聞こえてたの!!や~…はずかしぃ…」


一見すると猫と喋る痛い少女だ

俺の声は周りに聞こえていないらしく、視線が痛い


ナ~ゴ~

(早く依頼選びなよ、日が暮れちゃうぞ)


「あ、そうだった。一緒に見に行こ」



予想していたことだが、クレアは掲示板に貼り付けてある依頼に手が届かなかった


「う、うぅん。えい!」


飛びついてもダメだった


「うぇぇ…ニャーゴ。大きな問題が発覚した…」


ンナ~

(最初から分かってた問題だろ)


「うぅぅ」


ニャーゴ

(ボードの前に立って、肩貸して)


クレアはボードの前に立つと、直立した

俺はクレアの肩へ上り、頭の上へ上ると、伸びをするように体を伸ばし、依頼に爪をひっかけてとった


「おぉぉぉ!やるじゃないか。相棒」


ニャ~ゴ~

(はしゃぎすぎ、さっさと受けてこい)


「え、エヘヘ…いってきやす…」


クレアがメリッサに依頼を渡すと、微笑ましそうに依頼の処理をしていた

依頼の内容はこうだ


=============


街周辺の草むらに生えている低級ポーションの材料

”三つ葉の白花の葉” 採集だ、数は100枚

達成時の報酬は銅貨10枚


=============


クレアは大腕を振ってギルドを出ると街の外へ出た


正午くらいの日の高さだ、風が気持ちよく熱くも寒くもない

季節は夏に差し掛かったばかりで森には緑が溢れている


早速街の外の外壁沿いを歩いて依頼の品を探して回る


街の側は平和なもので、クレアは採集、俺はその辺のスライムを倒して遊んでいると依頼が終わる


他に危ない生物などはほとんど見当たらず、手入れが行き届いている街だった

最初の依頼の品を集め終わるとクレアのポケットはパンパンだった

日は暮れはじめ、夕焼けが見える


ナ~ゴ

(お金たまったら鞄欲しいね)


「あ~そうだね、冒険者って言ったら鞄だよね~」


鞄には普通のもの、サイズ通りにアイテムが入る

超高級な魔力付与がされたアイテムだと中の空間が歪んでおり、見た目以上にモノが入る


見た目も豪華で高い魔石で装飾されており、冒険者憧れの品だ

俺も人間時代はもってたんだけどな~、魔力鞄。今はあの竜の腹の中だろう、さすがに取り戻せない。残念


街に戻り、依頼の品をメリッサに納品すると銅貨10枚を貰った

当面は装備を充実させなければいけないのでしばらく返済はしなくていいとの事だった

ギル、イケメンやな。いかついけど


家に戻るとゴードンとアイサがご飯の準備をしてくれていた

ご飯を食べながらゴードンが話しかける


「クレア、初の仕事はどうだった?」

「楽しかったよ!三つ葉の白花の葉を100枚も集めたの。報酬も貰えたんだ!」


アイサが微笑みながら話しかける


「まぁまぁ、そんな笑顔ここに来てから初めて見るわ。よかったわね~」


ゴードンとアイサはとても嬉しそうにクレアの話を聞いていた


「クレア、今日はね、初仕事のお祝いがあるんだ」

「え?なになにー?」

「ちょっと小さいけど、鞄だよ」

「わー!ゴードンさんありがとう!お金貯まったら買おうと思っていたの。嬉しい!」


鞄は少し大きめだったが肩からかけてクレアの腰までかかる形をしており、革は柔らかく猫が2匹くらいは収まりそうなサイズだった


アイサが続く


「あたしからもあるのよ」

「ええー!そんなに貰っちゃっていいの?」

「ふふ、私からはこれ、ニャーゴちゃんの鞄」


小さな鞄だったが首輪のようになっており、四角い箱型の革鞄、上部は留め金などなく

顎で抑える感じだ


クレアははしゃぎながら俺のところへ駆け寄るとさっそく鞄を首に巻いた

なかなか悪くない付け心地だ


クレアは俺を抱くと、テーブルに座りお礼を言った


「ゴードンさん、アイサおばさん。今日は本当にありがとう。宝物にする!」

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