第8話 - 旅の道連れ
あぶなかった、まさかクレアが走りこんでくるとは
なんのために俺が足止めしたかわからない
クレアは腰を抜かしていたが、四つん這いで素早く寄ってくる
「ニャーゴ!大丈夫?怪我してない??」
ナ~オ~
(あちこち引っかかれた程度だよ)
クレアは俺の体をあちこち見て、ほっとしたように力強く俺を抱きしめた
(くるしぃ)
「ニャーゴが守ってくれたのね!ありがとう!でも体が小さいんだから無理しちゃダメだよ」
護衛と商人が近寄ってきた
護衛がクレアに話しかける
「お嬢ちゃん、危なかったな!こんなところで何してるんだ」
クレアは振り返り、護衛にお礼を言うと、護衛と御者はギョッとした顔でクレアを見た
商人はクレアに怯えた顔で話しかける
「お、お嬢ちゃん、それは魔物じゃないか!離れなさい!!」
護衛は御者を守るようにクレアとの間に立つ
「お嬢ちゃんは魔獣士なのか?その魔物を放してくれないか」
クレアは少し怯えたように後ずさり、声を張った
「ニャーゴはお友達だもん!今も守ってくれたんだから!!」
クレアは涙目でぎゅっと俺を抱きしめ、後ずさる
商人が護衛へ話しかける
「あのお嬢ちゃん大丈夫なのか?」
「わかりませんが、確かにさっきワイルドウルフから少女を助けたように見えました」
「それは、そうだが…魔物だぞ」
「魔獣士は魔物と心を通わせ、使役します。あの歳で魔獣士とは信じがたいですが…」
商人は少し考えたあと、クレアに話しかけた
「お嬢ちゃん、その子は抱いたままでいい。ワシらは街まで行くんだが、乗ってくか?」
「え?いいの?」
「護衛と一緒に乗って、その子を抱いたままでいてくれれば。それでいいなら荷台に乗るといい」
「ほんとに?ありがとうございます!!」
クレアは深々とお礼をした
その様子を見た商人と護衛はほっとしたように顔を見合わせ、微笑んだ
それから俺たちと護衛は荷台に乗り込んだ
俺はずっとクレアの膝の上で毛づくろいをしながら話しを聞いていた
護衛はクレアに話しかける
「お嬢ちゃんはその子といつから一緒にいるんだい?」
「1年くらい前からかなぁ?お爺ちゃんがよくいくお友達のおうちにいつもいる子なの」
「一年も一緒にいるのか…お父さんは魔獣士だったのかい?」
「ううん、畑を耕してた」
護衛は黙り込む、商人が護衛に話しかけた
「なぁ、もしかして途中で通ったゴブリンがいた村...」
「…(たしかに、こんなところに少女が一人いるのはおかしい)…」
護衛はハッとクレアの顔を見た
クレアは涙を浮かべ、うつむく
「ご、ごめん。悪気はなかったんだ」
「ううん、いいの。今はニャーゴがいるから…」
それから護衛は喋らなくなった
静かな空に、ゴトゴトと木製の車輪の音が響く旅が続く
馬車は止まり、街に着いたようだ。商人が誰かと話している
門番らしき人間が馬車の後ろから天幕を開け、中を確認すると声を上げた
「荷物に嘘はないようだな!通っていいぞ!」
門を通ると人の声がいくつも聞こえてくる
割と活気があるのだろうか、しばらく揺られ続けると、馬車は止まり商人が声をかけてきた
「ついたぞ~、護衛ご苦労さん」
そういうと商人は護衛にお金を渡し、別れた
商人は天幕を開けると哀れみに満ちた顔でクレアを見る
「お嬢ちゃん、つらかったかい?今日はうちに泊まっていくといい。風呂に入ってさっぱりするんだ。妻にスープを用意させるよ、暖かいごはんをお食べ」
クレアはみるみる顔をくしゃくしゃに歪め、涙を流した
(可哀想なクレア、今日はおじさんに甘えよう)
家に着くと商人はゴードンと名乗った、奥さんはアイサ
ゴードンは小太りの額が広いおじさんで気のよさそうな雰囲気がある
アイサもすこしぽっちゃりしていたが気立てがよさそうな雰囲気だ
アイサはクレアを招き入れるとすぐに世話を焼き始めた
「まぁまぁ、こんなに小さい子が…魔物に襲われたんだって?ひどいやつがいるもんだね!ここは安全だから、もう安心おし。今スープの準備をするから、お風呂入っておいで」
そういうとアイサは俺を見て声をかけた
「あら、お友達も汚れちゃってるね。よーし、おばさんが一緒に洗ったげる」
ニャッ!
(え!?いや俺はいい!!)
ジタバタと逃げようとしたが今日はクレアの力が強い、逃げれる気がしない
(まだ不安なのかな?仕方ない、一緒にいてあげるか)
お風呂ではアイサが鼻歌を歌いながらワシワシと泡を立てて俺を洗う
「さ、お友達は終わったよ!次はお嬢ちゃんの番だ。あんた名前はなんていうんだい?」
「クレア」
「そう~かい!クレア。気が済むまでここに居なよ。あたしたちは子供がいないんだ、あたしたちを親だと思ってくれてもいい、うちの旦那は気は弱いけどあんたたちを守ってくれるはずだよ。」
クレアはぽろぽろと涙をこぼす
それを見たアイサの方が今にも泣きだしそうだった、ぎゅっとクレアを包み込み哀れんでいた
三日ほどたって、ゴードンとアイサにかなり慣れてきた
クレアはいろいろ喋るようになり、今朝も朝食を一緒にとった
「ゴードンさん、アイサおばさん、お願いがあるの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます