第7話 - 移動
10分ほど休んで起き上がると、アプルの実を尻尾に挟んでまた走り始めた
ここからまた2時間走らなきゃいけない、待ってろクレア!
…
フラフラになりながら拠点へ帰ってくるとクレアはいなかった
俺はアプルの実を落とし、絶望した
拠点が特に荒らされたような形跡はない、きっと俺を探してどこかに行ったのだろう
(無事でいてくれ!クレア)
街道に出て鳴く
ニャーゴ!
森の中に入って鳴く
ニャーゴ!ニャーゴ!!
背の高い草むらの中で鳴く
ニャーーーーゴ!
必死に鳴きながらクレアを探した
(俺の体力も限界だ…フラフラしてきた。クレア返事をしてくれ)
1時間ほど走り回っただろうか…
少し休もうと腰を下ろすと、物音がする
近くの岩陰の方だ、魔物か?クレアか?
背を低くし、耳を立てピクピクさせる
「えっ…ひっく…」
人の鳴き声だ!
ニャーゴ!!
(クレア!!)
残った力を振り絞って岩陰へ走る
ニャーーゴ!!
(クレアだろ?返事をして!)
すると声は止み、クレアが出てきた
「うあぁぁぁんばかぁぁぁぁ!!!」
クレアは俺を見るなり走ってくると、ボロボロになった俺を抱き上げて泣いた
「いなくなっちゃったかと思った…もう逃げちゃだめだよ!走って追いかけるっていったじゃん!!」
クレアは俺を力強く抱きしめる。不安だった様子が手に取るように伝わってくる
ンナ~
(ごめん)
ひとしきり泣いた後、クレアに抱えられて拠点へ戻った
自分で自分を焼いたせいで毛がクルックルだったが拠点に帰るなり疲れきった俺をクレアは全力で洗った
ちょっと休んだ後にしてほしい
アプルの実を食べたクレアはそこそこ元気を取り戻してくれた
ものすごーく感謝してた、ニャーゴ頑張った
まだ日は高く、お昼くらいだったが、俺はクレアの膝で寝た
…
5日目、今日はクレアと二人でのんびりと寝過ごした朝を迎える
日は高く、正午になろうかというところ。川でクレアは水浴びをし、焚火で髪を乾かしている
ふと、俺が物音に気付いた。クレアには聞こえていないようだ
耳を立て、注意深く音を拾う
ブルッ ブルルッ
馬のいななきだ、誰か街道を通ってる
ちょっと見に行ってみよう、街まで行くかもしれない
ナ~ゴ
(クレア、ここで待ってて)
俺は街道へ走り出した
「え?ちょっと!!逃げちゃダメだよ!?コラー!」
俺は尻尾をブンブン縦に振って待ってろとジェスチャーした
まったく伝わってなかったが急いで街道へ向かうと、遠くに馬車が見えた
護衛が一人、御者が一人、天幕を張った馬車が近づいてくる
商人だ!彼らなら絶対街へ行くはず。できればクレアを乗せてほしい
クレアが息を切らしながら追いついてきた
「ちょっと!どこいくの?」
ニャ~ゴ~
(商人がいるんだ、乗せてってもらおう)
クレアは俺を抱きかかえると焚火へ戻ろうとする
「逃げたら追っかけるって言ったじゃない!ダメだよ」
ニャ~ゴォゴゴゴ
(商人がいるんだって!乗せてもらうの!!)
俺はクレアの腕から飛び降り、馬車へ向かった
クレアもようやく馬車に気づいた
「馬車?」
クレアは少し呆けたあと、ハッとして声を上げた
「馬車?馬車だよね!ニャーゴ!街に行くのかな?」
(商人だからね、向かってるはず。早く行こう)
俺は先頭を切って馬車に向かう
続いてクレアも後を追ってくる
ふと思ったけど俺は魔物だった、不用意に近づくと護衛を警戒させてしまう
少しスピードを落とし、クレアを先に行かせた
ドドッ ドドドドッ
走るクレアに向かって魔獣が向かっていく
(ワイルドウルフだ!)
ワイルドウルフは大型の狼でクレアと同じくらいの大きさはある
肉食でもちろん人も食べる、クレアくらいなら首に噛みついて走りながらこの場を去るくらいはできるだろう
街や街道の近くは冒険者が多いため強い魔物はあまりいないが、こういった素早い魔物は人間には追いつけないためまぁまぁ生き残る
馬車もワイルドウルフに気づいている、護衛がクレアに大声で語り掛けているが声が小さくあまり聞こえていない
(まずい、あいつに首を噛まれたらひとたまりもない)
俺は全速力でクレアの元に走った
ワイルドウルフが今にもクレアに飛び掛かろうとしたとき、俺は追いついた
ワイルドウルフともみ合いになり、ゴロゴロと街道を転がる
クレアが俺に気づき、走りこんできた
「ニャーゴをいじめるな!!!」
(バカ!なんで来るの!!)
バウッガルルルルッ ニャニャニャ シャァァアァ!!
しばらくもみ合っているとクレアがたどり着く、するとワイルドウルフを思い切り蹴りつけた
ガッ
俺とワイルドウルフはもみ合いを解き、ワイルドウルフと相対し、威嚇する
クレアは俺を抱き上げてワイルドウルフに背を向け、馬車へ走り出す
(バッ!待て!獣を相手に背中を見せちゃいけない!!)
俺はクレアの腕をすり抜けて肩に上った
ワイルドウルフは案の定、飛び掛かって来ていた
俺は尻尾に火を灯して飛び掛かる
尻尾をワイルドウルフの大きく空いた口に放り込み、視界をふさぐように頭へ飛び乗った
ジュッという音と共に驚いたワイルドウルフが声をあげた
キャウンッ
もみ合いになろうとしたが、お互い距離を取り、また威嚇を始める
お互いの距離を保ちつつ、ぐるりと半回転もしたところで、護衛が槍を投げ込んできた
ワイルドウルフに当たりはしなかったものの、ワイルドウルフは怖気づき、逃げていった
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