第6話 - サバイバル

「ちょ、イタッ!やめて!飲みます!のーみーまーすー!」


クレアは恐る恐る口をスライムに近づけた


ペロッ


「うぇ~スライム舐めちゃったぁ~…すっぱいぃ…」


俺は尻尾を勢いよく振って威嚇した


「わかったよー!飲む!飲むから尻尾やめて!」


クレアは諦めてスライムを啜る、微妙な顔をしながら半分くらいは飲んだ


「はぁ、気持ち悪い…でも、ありがとう。元気出た」


ニャ~ゴロゴロゴロ

(よーし、これで一安心、撫でていいぞ?褒めてもいいんだぞ?)


俺はクレアの手に頭をこすり付けると、クレアは少し口元が緩み、撫でてくれた



あれから三日くらいはサバイバル生活をしている

運よく川を見つけ、川を中心に周りで木の実を取ったり魚を焼いたりして凌いでる


いつまでもこんな生活続けられない、なんとか人の街にクレアを連れて行かなきゃ

でも街の場所はわからない、近くにある街道もいつまで歩けばいいのか、ほんとにこの先に街があるのかもわからない


クレアはたった三日でかなりやつれた、偏った食事による栄養失調だ

俺が冒険家だったころは生き残る強い意志を持ってなんでも食べた


クソ不味くても気合で飲み込んだ

だが帰るところがなくなったクレアは自暴自棄になりつつある


かろうじてまだ元気よく動いているが、夜になるとボーっとすることが増えた

焚火を見て、口を開けたままボケっとする

あぶなっかしくてハラハラする


それに野営道具がないのもまずい、せめてナイフがあれば加工ができる

水は必須なので川から離れられない、だけどこの川には近くに雨風を凌げる場所がない


食料調達の関係で森が近くにある必要もある、ここはかなり立地が悪い

今でこそ魔物を口にせず済んでいるが、やはり未調理の魔物は人間には合わなかった

ジャイアント・ボアなどの役畜魔獣は調理すればうまい

だが未調理は人間には危険だ、やむなくスライムを飲ませたがクレアは耐性の低い子供だ。その後盛大にお腹壊した


今日で4日目のサバイバル


早朝、クレアはまだ寝ている

アプルの実を食べさせてあげたい

野生のアプルはあまり見かけないので貴重だ、どこかに自生していないものか


まだ日は登り始めたばかりだが、俺はアプルの実を探して走り始める

拠点付近の森はもう調べつくした、探すなら少し遠出をしなきゃいけない


川の上流に向かってひたすら走った

小高い丘を3つほど超えて川沿いに上流へ2時間ほど走ると森が見えた


(やった!森だ!アプルの実よ、実っていてくれ)


日は完全に登り、早くしなければクレアが起きる

俺がいなくなってると知ったら探して移動するかもしれない

そうなる前に帰りたい


勢いよく森に飛び込んでアプルの木の実を探した

しばらく走っているとアプルの木があった!いくつか実をつけている

川の側に自生している低木に赤い実をつけるその姿はいつもよりも美しく見える


(やった!これでクレアが少しは元気を出してくれるかな)


アプルの木に近づき、実をもぎ取ろうとすると、視線を感じる

どこからだろうと左右を見渡すも、何もない

上から何かが降ってきた


(しまった!)


蜘蛛の糸だ、糸にからめとられてしまった


レッドハイドスパイダーだ

赤い木の実など目立つ色をした植物の近くに巣を張り、近づく者を糸でからめとる

赤い植物を見て死角となる方向へ巣を構え、気配を殺してじっと待つ森の狩人

単体で行動するが、人の子供ほどの大きさで牙にマヒ性の毒をもつ


糸でぐるぐる巻きにした後牙を突き立て、マヒした体からゆっくりと体液を吸い取る

大人でも捕まると逃げることは不可能で巻き取られてしまうとあとは死を待つばかりとなる


レッドハイドスパイダーは強引に糸を引き寄せると巣に俺を叩きつける

そして自慢の糸であっという間に繭にされてしまった


(やばい!クレアが待ってるんだ!死ぬわけにはいかない!!)


レッドハイドスパイダーは俺を繭にした後、抵抗を諦めるまで、じっと観察している

慎重な魔物で、獲物が疲れて動かなくなってからマヒ毒を流し込む


とにかく、抵抗を続けなきゃ、噛まれてしまう

俺は足や手を必死に動かし続けた


5分ほど抵抗をつづけただろうか、疲れてきた、ちょっと休もう

ほんの少し、5秒ほど抵抗を止めた。するとレッドハイドスパイダーが近寄ってくるのがわかる、俺は焦ってまた抵抗を始めた、レッドハイドスパイダーはゆっくりと離れていく


(クソッ!クソッ!クレアが待ってるんだ!!)


俺は火の魔術を使った、尻尾の先に火が灯る、バチバチと糸は焼けていく

案の定俺自身にも火が燃え移った。


(このままレッドハイドスパイダーも燃やしてやる!)


破れた繭を足がかりに一息にレッドハイドスパイダーへ飛び移る

足に噛みつき、体をこすり付けて燃え移るのを待った


レッドハイドスパイダーは錯乱して飛び回る、30秒ほど経っただろうか

レッドハイドスパイダーにも火は燃え移り、地面に降りてあちこちの木にぶつかる


俺は飛び降り、錯乱しているレッドハイドスパイダーの頭に噛みつく

足をレッドハイドスパイダーの胴に押し付け、思い切り引っ張ると

レッドハイドスパイダーの首は取れ、絶命した


こっちもかなりまずい、無酸素状態が続いている

近くの川に勢いよく飛び込んで消化すると、陸へ上がった


ちょっと疲れた、少しだけ休もう

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る