第5話 - 冒険
クレアは目を覚ますと、同時に俺も目を覚ました
まだ正午くらいだ
今のうちに今日のご飯をとっておきたい
するとクレアが俺の尻尾に気づいた
「あれ?ニャ~ゴ尻尾が増えたの?」
ニャ~ゴ
(そう、魔物になっちゃった)
「ねぇねぇ、尻尾ってふたつとも別々に動かせるの?」
ンナッ
(腹減った、食べ物取りに行きたい)
「へぇ~できるの!?やってみせてよ」
(腹減ったって言ってるでしょ、やんないよ)
俺は尻尾を振った
「え~できないじゃん、うそつき~」
(も~やだこれ意訳で話し進めないで)
俺はがっくりと肩を落とした
…
しばらく戯れたあと、クレアは急に立ち上がると自分の顔を両手ではたいた
「よし、ご飯取りに行こ!お腹空いた!あたし冒険に出るのが夢だったんだ!」
前から活発な子だったので納得した
切り替えが早いのはいい事だ、これでまたべそべそし始めたら置いてくとこだった
クレアは街道沿いにあてどもなく歩き始める
俺はクレアについてった
「はぁ~、でもさ~ご飯どうやって食べよう?道に落ちてないかなぁ」
(落ちてるわけねーだろ、落ちてても食うな)
「草とか食べれるのかなぁ…」
急に道の脇に生えている草の所へ駆け寄り、モシャモシャと食べ始めるクレア
シャーッ!
(やめろって!お腹壊すぞ!)
クレアは不満そうに俺を睨みつける
「何怒ってんの~?猫ならネズミくらい捕って来てよね」
(おまえ…言ったな?ここで待ってろよ!?俺は狩れるんだよ、狩れないのお前だから)
俺は付近の森へ走った
「が~んばって~」
道のど真ん中で座り込むクレア
何様か!まぁ泣き出したりどっか行かれるよりマシだが
俺は森の中で大きめの赤い木の実とキラーバイトスネークを取って戻った
尻尾がふたつになったことでそれほど大きくなければ間に挟んで持ち運べるようになった
元の場所に戻るとクレアは大の字になって寝ていた
(イラッ)
働かざる者食うべからずという言葉を思い知るがいい
俺は気持ちよさそうに昼寝しているクレアの顔に向かって木の実を落とす
「イタッ!なにすんの!あ、アプルの実が落ちてる~」
(落ちてたわけじゃないでしょ、俺がとってきてあげたの)
クレアは木の実にかじりついて美味しそうに食べ始めた
「わ~おいしー!おやつによく食べてたなぁ」
(お礼くらいいいなさいよ!)
俺は不満そうにキラーバイトスネークの頭を食いちぎった
「う~わグロ~、ちょっとここで食べないでよぉ」
(ハイハイもう慣れてきた、誰だお前に教育したやつは)
そういえば火の魔術が使えるようになったんだ、キラーバイトスネークの身を焼いてみよう
俺は尻尾の先に火を灯し、残った尻尾で身を掴むと、口で反対側の身をくわえた
一直線になるように引っ張って身をあぶる
だんだんとうまそうな匂いが漂ってきた
ほどよく焼けたころ、ゴリゴリと食べ始める
焼く前ほど不味くはなくなったかな、気が滅入るほど不味いというわけではなくなった
一部始終を見ていたクレアは駆け寄ってきた
「ニャーゴすごい!火の魔術も使えるようになったの?」
(もぐもぐ…まぁね…もぐもぐ)
「ねぇねぇ、あたしも食べてみていい?」
ナ~~~~ゴ
(も~、木の実あげたでしょ…しょうがないなぁ)
「えへへ、ちょっとだけ…」
クレアは尻尾の先っぽをちょっとだけかじると、みるみる青ざめて吐いた
「むりぃ…なにこれニャーゴこんなん食べれるの…」
(人の食事奪い取った挙句吐いた上に悪態つくのはやめたほうがいいと思います)
クレアは獲物を俺に返すと、がっくりと肩を落として話した
「はー…一緒にはご飯食べられそうにないねぇ…」
(あ、そういう事?可愛いとこもあるな)
…
食事が終わり、また街道を歩き始めた
「喉乾いた~、お水ほしい~」
(たしかに、川があればいいんだけど)
…
それから結構歩いた、もう日が落ちてきている。クレアの口数が少ない
顔を見ると汗ひとつかいていない
唇は渇いておりカサカサになっている
(脱水症状だ)
まずい、俺は蛇の血を飲んだけどクレアは果実の水分しか取れていない
急いで川を探さなきゃ
俺は聞き耳を立てながらクレアから離れないようにあちこち探した
水の音はなく、クレアがフラフラし始める
(まずいな、どうしよう)
急にチャプチャプと音が聞こえる、小さな水の音だ、けど近い
(近くにスライムがいる!)
背を低くし、聞き耳を立てる
ゆっくりと草むらの中を移動するスライムの位置を特定した
(いた!)
俺は急いでスライムのところへ走った
スライムをサッカーボールのように蹴りまくりクレアの側へ運ぶ
ニャ~ゴ~!
(クレア止まって!)
こっちを見たクレアはギョッとした顔をして走り出した
「ニャーゴそれスライム!!!魔物!!生きたまま持ってこないで!!」
(ここで倒したら水の位置わからなくなるでしょ!止まりなさい!!)
「や~だ!ニャーゴこっちこないで!!」
10分ほど追いかけっこしたあと、クレアがまた派手に転んだ
スライムドリブルは結構疲れた、俺も息が上がる
クレアの目の前でスライムにトドメを刺すと、スライムはゆっくりと溶ける
「え~?何、狩り自慢?」
(猫にはそういう習性ある、あるけど違うの)
俺は溶けていくスライムをぺろぺろと舐め、水分を補給した
クレアはその様子をじっと見ているが動かない
俺は尻尾でクレアの顔を何度も叩いてはスライムを舐め、叩いては舐めた
「え、飲めるの?スライム」
(そう!!!気づいてくれた!!!)
「うぇ~…やだぁ…こんなのニャーゴしか飲まんやろ~」
(うるせぇぇぇ!わがまま言うな!)
力いっぱいクレアの顔を尻尾で叩いた
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